異世界生活物語

花屋の息子

魔風穴と少年と魔石

「いつもだと力だけ見せてもらうだけだからぁ~、いつもの事って思ってるかもしれないわねぇ~、一度戻ってから魔風穴に向かいましょ~、食事もしたいでしょ~」
昼に着いてジュース飲んでいたら転移魔法かけさせられて、午前中だけで濃密過ぎるスケジュールだよ、これで昼飯抜きって言われたら、いくら自分のことって言っても泣いちゃうよ。
「お腹空きました」
「それじゃ戻るわよぉ~」
さっき来たときもそうだったが、曾祖母は転移魔法を普通の魔法のように使っている、魔力量が半端じゃないのかそれともイメージ力か、これだけポンポンと使える魔法が普及していないところを見ると、両方なのかもしれないが、どちらにせよ次来る時までには修得したい、前世に比べれば体は使うようになっているし動く事も苦ではないが、それでも長距離を歩きたいかと言われたらそんな事は無いのだ、それに何か持って行く帰ると言った時には、重いものを持ったままのここまでの距離は、苦行でしかない事だろう。
異世界版夏休みの宿題は、転移魔法と定めたり~。
そんな事を思っていると景色が一変した、元いた部屋で談笑する祖母たちは、もはや馴れたものなのだろう、お帰りなどと言って驚きもしないのだ。
「食事の準備できているわよ」
戻ってくればお腹が空いているだろうからと、大叔母と祖母とで準備してくれていたようだ、祖母の味付けなので味の方は心配が要らない。
いつだったか近所のおばさんの作った物を食べたが、不味くは無いがけして褒められない、そういった味付けといったものを食べさせられて、ゲンナリした事があるのだ、コショウなどは無いので普段の料理で使われるのは、ハーブモドキと塩それから刺激のある種だ、種は確かホウランとか言ったと思う、香りの無い山椒の実といったところだ。
このハーブモドキ家庭によってどころか、個人で配合が違う物だから、中にはとんでもない配合の人などもいるわけで、そういった家庭の旦那さんが祖母に泣きついているのを見かけた事があるほどだ、日本にいた時も何にでも七味をかける人が居た位だから、どんなに世界が変ろうとも、この手の人が存在するのは、神的力が働いているとしか思えなく、そんな所に使う力があるのなら他に使えと言ってやりたくなるのだ。
食事の最中に曾祖母が発したのが皆を驚かせた、普段ならこの後談笑をする流れだそうだが、俺を魔風穴に連れて行くと告げると、一様に危険ではないかと曾祖母に告げていた。
「誰も一人で行かせる訳じゃないわぁ~、私がそばにいるのだから問題無いでしょぉ~」
某ゲームの瞬間移動呪文の様にそう簡単に使えないのが、本来の転移系魔法なのだろう、もっと言えばライターで苦労している人が、どこで○ドアを製作するとでも言える中、それが出来る人が護衛につく修行など、たぶんきっとおそらく安全だと思う・・・。
ひとしきり不安な声が上がったが、俺としてはじんわり魔力アップなんてそもそも遠慮したい、ノンリスクではなくとも、その他の方法で上げる事が出来るのならそちらを選ぶ、この世界に生きる人はもっと貪欲に、魔力を求めてもいいのでは?などと思うほど魔力的執着が少ない、生活魔法くらいしか使わないのが一般的なところからもそれは伺える、蟻の時も素材を気にしないのであれば、魔法使いでの範囲殲滅攻撃などの手段が取れたと思う、そう言った使い方をしてこなかったしこれからも使うことは無いのだろう、俺って特異点が出なければ。
「ばあちゃん僕行って来るよ」
「そう、お義母さんエドワードをお願いします」
まあ魔風穴のある場所から考えたら妥当な反応だろうな、小さい子をライオンの檻の中に連れて行くと言われて、はいそうですかとはならないのだから。
食事を終えて一休みをする、未だ皆の顔は心配の表情だが、曽祖父に関しては長年連れ添ってきた事も会って、こいつなら大丈夫だろうといった余裕の表情だ、事実かどうかは置いておいて東の森を焼いた人と、森と運命を一緒にしかけた人、うんなかなかシュールな結束力が生まれそうな夫婦だな。
「そろそろ行くわよぉ~」
「はい大丈夫です、ばあちゃん行ってくるね」
結構能天気な挨拶だ、心配するなと言う方が無理だろうけど、まあ心配しないでよ。
「気を付けるんだよ」
「うん」
そう言うと景色が一変する、何度やっても転移魔法ってスゲ~って感心できる、目に映るは南の森に比べると黒さを増した森だった、山の麓と言っていたが山などは一切見える事は無い、そこには木と地面に口をあけた穴が映るのみだ。
「その穴が魔風穴なの?」
「そうよぉ~、魔素が流れ出しているわぁ~、と言っても解らないでしょ~、この石を入り口に置いて御覧なさぃ~」
手渡してきたのはキラキラ石だった、これが何だというのだ、言われるがまま穴のそばに置いた、俺が驚いたのはすぐだった、キラキラ石とはいっても宝石のように輝く訳ではない、砂に混じった石英よろしく、少し透明で濁った色をした、普通の石から見たらキラキラしているだけの石が、濁りが取れて半透明な色に変っていったのだ。
「まだ置いておけば~、もっと透明になるのよぉ~、収魔石って言うのぉ~、魔素を貯める石ねぇ~」
子供たちのおもちゃが意外にとんでもない物だったのか?



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品