異世界生活物語

花屋の息子

夏の味覚、魔法の基礎知識

 四年が経ってもクーラー無しでのこの暑さには慣れない、我慢できない訳ではないが暑いものは暑いので、クーラー依存症だった過去の記憶が悔やまれる。
 夏の初めに播いたカイハグも、青々と芽吹き畑だけが心に涼を届けてくれる。
 その暑さも弱まりを見せてきたころ、日本換算なら夏休みくらいだろうか、この所食卓に上る面白い食材があった。
 それが名前も面白いのだ、「バイネル王の実」と言う。
 四年目にして初めて見る果実で、美味の最上級しか形容できない大変美味しい果実なのだ。
 強い甘みに、程よい酸味、嫌らしくない香り、どれをとっても文句なしの一品、この国の初代国王バイネル王が、大好物だったことからバイネル王の実と言うらしい。
 地球にこんな芳香剤があったらこれだけで、一財産稼げるだろうな~。
 ちなみに俺は、芳香剤の臭いが大嫌いだ。
 こんな大仰な名前が付いている物が、なぜ庶民の俺の口に入っているのかと言うと、山に入れば普通になっている物だからだ、雑木林のドングリのように生っているものらしい、しかしここ四年ぱたっと実を付けない年が続いた、それが今年は大豊作になり毎日食べる事が出来るほどに、もう二度と不作にはならないでもらいたいものだ、と言うか年中食べたい、神様仏様俺に温室を温室を下さいお願いします(笑)。
 食べ物は飽きが来る時があると思っていたが、いくらでも食べられるし全く飽きる気配すらないとは、甘みに飢えていた事もあるのかもしれない。
 カイハグの種まきが終わった辺りから、俺は、魔法の練習を初めた、本来ならもう少し六歳頃からが、スタート時期だったようで、まだ早いと言われたが、ここで駄々を捏ねずして何時捏ねるの今でしょう、と言うことでヤダヤダ習いたい、とごねて習い始めたのだ。
 普段聞き分けの良い子をしていたために、余程教えて欲しいのだろうと、教えて貰えることになった。
 まずこの世界の魔法は、生活魔法と呼ばれるものの一部のようだ・・・ショボイなんて思わないぞ。
 ライターよりは強い火を生み出す着火の魔法、魔獣と戦うときなどにブーストを懸ける肉体強化の魔法、傷を治す回復魔法、明かりを付ける光魔法・・・母が使えるものは以上だった。
 期待していましたよ、めちゃくちゃすごいのとかは無理でももっと攻撃系とか補助系とかあるじゃないですか、それなのにそれなのに、いや気を取り直してせいいっぱいの笑顔で魔法を習うとするよ。
「・・・他にもあるみたいだけど、魔素も足りないからあまり使えないのよね」
 途中から母の話を上の空気味で聞いていたよ、反省反省、所々聞こえていた事を要約すると、「魔素」空気中の酸素のように魔法を発動させる元素みたいなモノ、物質かどうかも解らないからモノとしか言いようが無いんだけど、「魔力」体内にある魔法を発動させるモノ、「認識力」まあイメージとか想像力とかかな?この、三要素で魔法は発動するようだ。
 魔素は酸素とも二酸化炭素とも言えるモノで、魔法の発動後にも発生するモノのようだ、何だかな~別物じゃないんかい?とも、思ったが説明がそうなのだから、以後考察でいこう。
 じゃあ足りなくなる事なんか無いと言いたいが、今度は魔力の方が足りなくなって発動しない、それにもしかしたらリレー形式で大勢で発動させ続けたら、もっと大掛かりな事も出来るかもだけど生活にしか使っていないのだから、そんな発想が浮かばないのかもしれない。
 戦争の時とかは?と思う方も居るかもしれないが、人間どうしで争うなんて悠長な事ができるのは、魔物が居ない地球だからやってられる事だ、こっちの世界では食べられる魔獣の他に他の生命体を襲うことしかし無いただの害悪と呼べる、「魔物」も住んでいる父のような兵が必要なのも、他国との戦争に行くためや他国からの防衛のためじゃない、魔物に町が襲われた時に守るために居るの兵なのだ。
 現に毎月この町でも何人も犠牲になっている、流石に大挙して押し寄せてくる事は無いが、いきなり森から暴れイノシシよろしく突っ込んでくるのだ、逃げ遅れその犠牲となる者が出てしまう。
 自分の幸福だけを喜んではいけないのだけど、自宅がある地域は、強力な魔物の類は出てこないため、比較的安全なのだ、そのかわり土地が痩せているのだけれど。
 これも、魔素が関係しているのかもしれない、森に近い位置の方が、魔素の濃度が高い、強力な魔物が出るが土地が肥えた森側は、ハイリスクハイリターンな土地と言う事になるのかもしれない。
 さて、俺が最初に覚えるのは、光の魔法だ?
「じゃあママがやってみせるから、良く聞いて覚えるのよ!」
 そう言うと母が魔法を唱える。
「日の光、赤き炎、暗闇を照らせ」
 母の前に、30㎝くらいの白い光の輪の中に赤い光の揺らめきが現れた、手を伸ばすとほのかに暖かいそれは、1分しない程度で霧散するように消えてしまった。
「ママ、もっと~」
 以外なほど短い発動時間だったので、母に再度ねだってみた。
「エド、ちょっと休憩魔力が持たないわ」
 マジか!!!メチャクチャコスパ悪いぞ、どのくらい休憩するか知らないけど、1分使って10分休憩とかなら、ヤバすぎる。
「エド、あなたも魔法を使う時は、無理をしては駄目よ魔力が無くなったら動けなくなってしまうわ」
 確かに母や祖母が魔法で煮炊きをしていたためしがない、火の魔法が継続して使えるなら、薪など必要ないのだ。
「シーリス心配しなくても、体力の方が持たないよ」
 祖母に突っ込みを貰うが、そこじゃ無いだろう、コスパだよ、突っ込みをいれなきゃいけないのは。
 見た限り魔法はコストパフォーマンスが、ヒジョ~に悪い、体力と魔力の関係は解らないが、少し明るくしただけで魔力切れに、陥るなんて、使え~ね~よ。

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