無い無い尽くしの異世界生活

花屋の息子

こちらの結婚は難儀な事だ

 多分5時くらいになっただろう、人と大八車が揃ったので出発する、流石に俺の足では邪魔になるので、父が轢く大八車にちょこんと乗って積荷の斧を押さえるて行く事に、俺を含めてのお荷物な訳だ。
 土引きの道は荷車に乗るとデコボコが衝撃となり尻を打ちつけ、乗り心地は最悪で常に突き上げタイプの地震に襲われているようだ。
 2キロほどの道のりを行くとこの町を囲う柵に着いた。外との出入り用に設けられた門は、古い時代劇で見る関所の方が立派に見えるレベル、柵の外はわずかに伐採がされているが、それも200メートル無いくらいで、その先は森森森、木が密集しているといった話ではなく、なぜここが安全な森なのか理解が出来ないほどに薄暗い密林が広がっているのだ。


「エド、ここから先はどこに、魔物がいるか解らないから気を抜くな、これを見ろ切り株の新芽は魔物が近い印だ。森は魔物が出す魔力で伸びると言われているからな、生えてきている芽も、前の伐採に入った地区が刈ったはずだがもう伸びている」


 父の忠告が何時もの優しい口調から厳しい者に変わって、和んだ気持ちをどこかえ吹き飛ばしてしまった。
 地球なら切り株から生えた新芽は、切り倒した森の木の世代交代のためと大事にするが、この町が東を除いて森に囲まれているのは、この世界では森林破壊など起こり得ないからだ、切り株を見た時に衝撃を受ける、木を切ったら何十年も元に戻らない地球と違い、この世界では魔力での成長が存在するので、年輪が見ると前世の記憶では見た事の無い幅で、年輪が広く刻まれていたのだ。
 地球なら成長の良い木でも1cm幅で、一般的な木であれば良くとも5mm程度だろう、それが直径40cmの木に5本しか刻まれていない、脅威的なでは無く真実脅威そのもの、これを放置すれば町など簡単に飲み込まれる事だろう。


「エド、鉈はもう持てるな、皆が木を切って居る間、この辺りの芽を落としておいてくれ」


 普段は作業の中ごろから芽を落とすらしいが、伐採作業に参加しない俺が居る今回は、ウロチョロさせない為にもちょうど良いと、芽欠き作業を仰せつかった?
 早速大人達は、斧を打ち付け木の伐採に入る、成長が早い割にしっかりしている木は、簡単には切れず難儀している、まあチェーンソーじゃないし仕方ないのかな?
 肉体強化系の魔法を常時使えれば難は無いのだが、それをやるといざと言う時に戦う体力が無くなる、効率世界を知っていると、もどかしくて仕方が無い。
 俺の方は鉈の使い方に関しては、山間部育ちの前世の記憶で問題無いが、そもそもの体力の問題でへばりそうだよ。
 それでも昼になる頃までには、百を超える切り株を処理して大人達に褒められたよ、代償に手足にはマメが出来たけどね。


「坊主、良く泣き事も言わないで頑張ったな、エラいぞ、それに比べてコイツらの情けね~事、疲れただなんだ言ってね~で、しっかりやれバカたれが」


 初心者組がおっちゃんAに、ボロクソに怒られながらの昼休憩となる、確かに作業中ちょいちょい後から「疲れた休憩」なんて聞こえてきたのだから、まだまだ一人前と認められるには時間がかかりそうだ。
 大人たちは寡黙に伐採しているから、カーン、疲れた、カーン、と変なリズムで耳に入ってきたのは面白かったのだが、それが許して貰えるのは俺だけなのだろう。


「ウェイン、坊主の手を見てやれ」


 おっちゃんBに呼ばれた兄ちゃん、ウチの三軒向こうに住むウェイン君、コツコツ形の面倒見が良いお兄ちゃん的な、非常に頼りがいのある男である。


「あ~あ、手も足もこんなにして、エドワード頑張るのは良いけど頑張り過ぎるなよ、初めての奴らがおっちゃん達全員に怒られちゃうからな」
「へ~い、ってか結構痛いから早めに回復宜しくです」
「まあいいや、あいつらも何時までも大人に頼ってばかり居られないから、少しは良い薬になるだろ?」
「なるのかな?」


 そんな事を言った俺を笑いながら、俺の手に回復魔法をかけてくれる。青年達には自活精神の強制植えつけとしか思えないが、甘ったれて居られるのは精々一桁辺りまでで、おおむね15歳程度で結婚する事を考えれば、向こうで説教されているヘタレの兄ちゃん達も、いい加減その自覚を持たなくてはいけない年ではあるのだ。
 ちなみにウェインは、ウチの父が娘婿にと狙っている男で、ウチの場合は二代に渡って似た歳で結婚しているが、五つくらい男の方が上と言うのが多いらしい、その時は嫁の歳が一気に若くなる。


「いや~、やっぱり次男で嫁が決まってる男は働きが違うもんな」
「まだ先の話だよ、畑もまだ一枚目だしな、あと五年くらいはかかるよ」


 取りあえず茶化したが、小学生の半ば辺りでもう将来の事を考えなければならないのも、中学生辺りで結婚するのも、何だか複雑な感じだ。前世でパラサイトしているおっさんおばはんよりはまだましかな。
 俺の手足のマメが良く成ったところで昼食にをとる、午後の大人達は交代で各自の家まで丸太を運搬をする。
 俺は引き続き新芽刈になるのだが、魔物の影響を受ける森から離れた町拠りの切り株は森に近い所と比べると伸びが悪いので、皆にくっついて作業していた午前中よりも、午後の方が楽に作業を進められそうだ。
 昼食は、カイ麦の分厚いクッキー?と肉の燻製に、ヒトアを丸かじり、まあ外に持ち歩く弁当何てこんなもんさ、贅沢は言えないよ。
 でもね思ったよ、から揚げ弁当が食べたいって、良いじゃないか俺は転生者だもの。

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