儚い雪に埋もれる想い

雪莉

小説に感情を委ねる

彼女に抱いた感情は、まぎれもなく現実だったから。





だから私は、小説に全てをぶつけた。






元々、文章を書くのを趣味にしていた私は、楽というだけだった。


これほど便利なものをあるなんて知らなかった。





しかし、今までの明るい文章、小説は書けなくなっていた。





暗く、全てを投げ捨ててしまいたくなるような内容しか、書けなくなった。









その小説を批判する者もいた。が、私は聞く耳を持たず、淡々と描き続けた。



それは機械のように、一日一日、ほぼ休むことなく動き続ける。




それが、人間でたとえると呼吸と同じなるのは、一瞬に過ぎなかった。



しかし、いつかは機械も停止する。それと比例するように、私も小説を書く手が止まった。



それもそうだ。






この年齢まで書いた本たちは約五十冊あまり。






気持ちとしては、半世紀分の文字を書いた気分だ。



だが、一度ついた出版社の火は消えることを知らない。






そして、火の粉を飛ばし続けながら燃え続ける。



自分で言うのもなんだが、私がデビューしてから社の売り上げは徐々に上がり、赤字をひっくり返したのだ。







そこで私がやめてしまったら、





危険なのだろう。






だから、私一人がどうこうして消せるわけがない。


変化のへの字も出てこないと思う。






いうならば、大火事の中、バケツの中の水だけでせっせと火を消すようなものだ。







その火が、私の中……。

心の中まで燃え移らないように、なんとかしなければならない。











信じてよいのだろうか。




 伽耶を。その身をゆだねて良いのだろうか。


 



 あの泣き虫だった彼に、頼ってよいのだろうか。




不安に駆られながらも、伽耶を見る。



視線が届いたのか、伽耶と目を合わせた。




 その瞳の中には、私の姿がくっきりと映っていた。
 



 







 あの時のように。

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