火属性魔法しか使えないけど世界最強を目指す

一宮 カエデ

火属性魔法が使えるようになった。

俺はごくごく普通の農民の出身、三人兄弟の次男坊だ。
この世界【ワーリア】は産まれて十二歳になると魔法が自然と使えるようになる。
六つ歳が離れている兄が魔法を使えるようになったのを見て俺は魔法に物凄い憧れを抱いた。

それから五年…………

「よう、サートラ! 今日も気合が入っているな!」

兄のゴースと朝のトレーニングをする。
これは俺の日課である。

「に、兄さん。 ちょ、ちょっと待って!」

俺の兄、ゴースは一七歳にして既に帝都の兵に入ることが決定している。 ここら辺じゃ兄さんにかなう人は一人もいない。
こんなことを思っている俺も兄さんの足元にも及ばない。

「兄さん! 魔法使ってよ!」

「お? いいぞ!」

そう言って兄さんは右手を太陽に向ける。
兄さんの右手からは頭台の大きさの炎が現れる。

「に、兄さん凄い!」

「お前は全然飽きないんだな…………」

そりゃそうだ僕は兄さんの魔法に魅せられた人なのだから。

「お兄ちゃんがすごいからね! お父さんとは大違い」

「お、お前…………父上の悪口は─────」

「おーい二人ともー、昼御飯だよー!」

俺たちを大きな声で呼ぶのは妹の『フォーラ』だ。
俺より2つ歳が離れている可愛い妹だ。

「はーい、今行くよ!」

俺はフォーラに負けない位の大きな声で返事を返す。



ご飯を食べ終わった後は兄さんと父さんと一緒に畑仕事や薪割りをする。
鍬や鉈は剣と同じく真っ直ぐ下ろすことが大事だ。
今も兄さんが薪割りをしているが、綺麗な線を描きながら抵抗なく木を二つに分けている。

「流石! 帝都の魔法剣士になる人は一味違うな!」

俺の父さんは嬉しそうにそう言った。

「薪割りなら父上の方が上だよ」

「息子がそんな風に思ってくれて嬉しいよ」

父さんは兄さんに言われて満更じゃない顔をしていた。

俺もいつしか兄さん見たいに剣を扱えるようになりたい。 俺もいつしかそう思うようになっていた。

兄さんはもうすぐ魔法学校に戻ってしまうから、それまでに何とかして剣を教えてもらいたい。




そんなことこともあり、俺は遂に12歳になった。
俺が12歳になった朝、まず分かることは一つ。
俺の体を正体不明の何かがずっと廻っている感覚だ。
兄さんがちょっと不快に感じたといっていたが俺はそれが嬉しかった。

「おーい、にーにおはよう!」

フォーラは朝から俺のベットに潜る習慣がついている。
昔っからのことなので今はもう気にしていない。 

「おめでとう、にーに」

妹は何におめでとうを言っているのかはわからない。
ただ俺は「ありがとう」と短く返事をして自分の部屋を出た。

「サートラ、魔法適正を調べにいくから準備しとけよ」

父さんがおはようも言わずに俺に話しかけてくる。
フォーラや兄さんはもちろん父さん、母さんも俺が魔法が好きだということは知っている。
父さんも俺が早くどんな属性が使えるのかを知りたいと思って朝早くから準備しているんだろう

「わかった、ありがとう父さん」

俺は母さんが作った朝ごはんを食べて、直ぐにフォーラを部屋から追い出し、外出用の服に着替えた。

「よし……」

父さんに準備ができたと報告した後、二人で適正魔法を調べに行った。
適正魔法の鑑定は冒険者ギルドでできる。
六年前、俺は兄さんの鑑定に付き添っていた。
結果、俺の兄は世界で数えるほどしかいない全属性適正マジックマスターだということが分かった。
魔法の属性は大まかに4つ。
火属性、水属性、風属性、土属性だ。
これに特別な人だと、光属性、闇属性。
更には無属性や時空魔法が使える。
これを全て使える人を全属性適正マジックマスターという。

俺の兄さんがマジックマスターと言うだけあって、ギルドに入ると俺に目線が集まる。

「久しぶり、サートラ君。 こっちにおいで、早速鑑定しようか」

ギルドの職員が俺を鑑定室へ案内してくれる。

「お久しぶりです。 カルヴァーさん」

「こちらこそお久しぶりです。 ゴースの時もお世話になりました」

「こちらこそマジックマスターがこのギルドから出るとは思いませんでした」

そんなことを父さんとギルド職員が話しているといつのまにかに俺達は鑑定室に着いた。

「さぁサートラ君、ここに手を置いてくれるかい?」

「分かりました」

そう言いながら俺は水晶玉の様な魔法器具に手を乗せる。

「こっこれは!?」

ギルドの職員が驚愕の声を上げる。

「す、凄い!」

父さんも声を上げる。

「単属性なんて初めて見た……」

俺の目の前には紅蓮の炎だけが写っていた。

もう一度言う。 この世界の優劣は全て魔法の適正属性の多さがものを言う。
そんな中で俺は────

「君の属性は……」

ギルド職員は気まずそうな顔で続けていった。

「火属性……だけだ…………」

俺は一瞬目の前が真っ暗になり、兄さんとの差がどんどん離れていくような気がした。

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