僕の前世が魔物でしかも不死鳥だった件
不死鳥と猫
僕の始めての友人との出会いは、五年生の時に遡る。
あのデカブツの一件以来、僕の周りからの認識は完全に触らぬ神状態になった。
…………………何か前世と変わってないな。
というのも、生来の金髪もあって小学生だというのに所謂不良的な扱いで、ただでさえ誰もいなかった周囲がますます風通しのいいものになっているのだ。
まあ、本読むのに集中できれば、僕は何でも良いのだけど。
そのまま一年は特に変わったこともなく、五年に上がる際のクラス替えでようやく同級生の彼女の存在を知った。
赤城優希姫。
黒髪黒眼。長い髪の毛先を後ろで束ねた綺麗な容姿の女子生徒。
いつもクラスの中心にいて、活発そうな笑顔を浮かべている。
あのデカブツとは違った意味で目立っていて、何かとよく視界に入ってきた。
人気者、というやつだろうか。
僕がよく読んでいる物語小説の主人公のような娘だ。
あの娘が主人公なら僕は名前も出ないクラスメイトかな。あ、違うか、僕はあくまでも読者にしかならなそうだ。
なんて客観的な感想を浮かべていると、人の中にいたその彼女と目があった。
視線くらいすぐに外れるだろうと思っていたが、他のクラスメイトと違い怯えるでも逸らすでもなく、にこりと笑みを向けてきた。
近頃は小説だけでなく現実の人間にも面白さを見るようになっていた僕は、人間観察をすることも増えていた。
いろんなことを本から学んでいくうちに、人間というものに自然と興味が出てきたのだ。
こんな面白さを与えてくれる物を生む、人間という生き物に。
とはいえ、僕は自分で言うのもなんだが、クラス替えをしたこの教室でもすでにかなり浮いている。というか先も述べた通り、風通しがよすぎるくらいに敬遠されている。
嫌われている、というより、完全に畏怖の対象らしい。よって、誰かと目が合うことはないし、合ったとしても怖がって一瞬で逸らされる。
正直、笑みを返してきたやつは始めてだ。
僕の記憶上、あの娘とは話したこともなかったはずだが。
今までクラスが違ったから、僕のこともよく知らないだけかな。怖がらないのは。
まあだからと言って、仲良くしようとは思わないけど。僕から話しかけることはないし、向こうもわざわざこんな悪目立ちしてるような奴と喋ろうとは思わないだろうな。
放課後。
学校の図書室にある本はあらかた読んでしまったので、僕は学校帰りに町の図書館の方へ足を向けていた。
割りと田舎なこの町は、町のど真ん中に建つ城以外は特に特出するもののない地域だった。
ど田舎とまではいかない田舎であるため車が無ければほとんど何処にも行けない。ちなみにバスターミナルはあるがバスが出るのは一時間に一回だ。
だから町の住民、というか県に住む大半の大人は車を持っている。故に田舎だというのに、外を歩けば排気ガスや車の走行する音が多くて、あまり静かとはいえない地域だ。
まあ、夜は逆に開いてる店がコンビニくらいで、恐ろしいほど静かなのだが。
それはさておき町の図書館だが、学校から徒歩で十五分ほどの距離にある。
町の中心。城のすぐ近くだ。
四月の半ば、城の近くに盛大に咲いた桜を眺めながら、僕はその道を歩く。
綺麗な景色だ。城に続く歩道の通りに何十本と植えられた桜の木。たまに吹く弱い風に乗って、花びらがあちこちに舞う。
毎年春になると必ず花見にくる人々で賑わうここは、平日の夕暮れ前にも関わらず多くの歩行者が流れていた。
そうやって夜になれば、ライトアップされた城と共に桜の花も色鮮やかな輝きを撒き散らし、昼間とは違った美しさを見せてくれるだろう。
毎年の春に、夜の空中からそれを見るのが僕の楽しみな恒例行事の一つだ。
まあそれにしても、
「桜祭も終わったのに、相変わらずここは人が多いな…………」
学校帰りの中学生や高校生、近所に住んでるらしい老人たちだけでなく、普通に大人も多い。果たして仕事をしてるのだろうか、とかいうと平日休みの人とか夜勤の人とか変則勤務してる人とかその他モロモロに失礼なので心の中にしまっておく。
まあ今日の僕の目的は花見じゃないし、さっさと素通りして図書館に行くとしよう。
人が多いとはいえ、所詮は田舎。街を歩けば人に当たる都会と違って、避けるまでもなく人波を抜けていく。
「あれ? 羽川くん?」
そんな声とすれ違ったが、たぶん気のせいだろう。街中で僕に声掛けてくる人間なんてこの世界にいる訳ないし。
街の図書館とはいえ、いうほど大きなところじゃない。
十台ほど止まれる駐車場とこじんまりした駐輪場にポツポツとある車両を見るに、今日もあまり人がいる様子はないな。
夏休みなら学生たちが多く出入りするんだが、平日だとこんなもんだろう。
「おや、夕月か。また本を借りに来たのか?」
出入口に差し掛かったところで初老の男性の声に呼び止められた。
ああ、この爺さんまたいるのか。
「ああ、爺さんは何してんだ? こんな図書館の出入口で?」
「今日は日和が良かったのでなぁ。散歩がてらここまで花見をしに来ていた。今は休憩中だ」
「そうかい………あんまり出入口をうろちょろして、他の利用者の邪魔はするなよ」
「それくらいは心得てるつもりだ。ところで、この前にくれた煮干しはなかなかに旨いものだった」
「給食で出た残りだけどな」
「良ければまた持ってきてはくれないだろうか?」
「まあ、機会があったらな」
「楽しみにしている。呼び止めてすまなかったな。私はそろそろおいとましよう」
そういうと爺さんは寝そべっていた身体を起こし、一つ伸びをして図書館の出入口の屋根づたいに歩いていった。
歳の割りに元気の良い猫だな。
僕は人間には話しかけられないが、猫には話しかけられる。元が不死鳥とはいえ、他の動物言葉も理解できるとは思わなかったな。前世では魔物以外に会ったことなかったし。
爺さん、もといどら猫の後ろ姿は身軽に飛び回っていて、とても年寄りとは思えない足取りで去っていく。
屋根の上で日向ぼっこか。野良猫は自由で良いもんだな。まあ、昔の僕も似たようなもんだったけど。
取りあえず、ようやく図書館に入れそうだ。さっさと借りるもの借りて、家に帰って読むとしよう。
あのデカブツの一件以来、僕の周りからの認識は完全に触らぬ神状態になった。
…………………何か前世と変わってないな。
というのも、生来の金髪もあって小学生だというのに所謂不良的な扱いで、ただでさえ誰もいなかった周囲がますます風通しのいいものになっているのだ。
まあ、本読むのに集中できれば、僕は何でも良いのだけど。
そのまま一年は特に変わったこともなく、五年に上がる際のクラス替えでようやく同級生の彼女の存在を知った。
赤城優希姫。
黒髪黒眼。長い髪の毛先を後ろで束ねた綺麗な容姿の女子生徒。
いつもクラスの中心にいて、活発そうな笑顔を浮かべている。
あのデカブツとは違った意味で目立っていて、何かとよく視界に入ってきた。
人気者、というやつだろうか。
僕がよく読んでいる物語小説の主人公のような娘だ。
あの娘が主人公なら僕は名前も出ないクラスメイトかな。あ、違うか、僕はあくまでも読者にしかならなそうだ。
なんて客観的な感想を浮かべていると、人の中にいたその彼女と目があった。
視線くらいすぐに外れるだろうと思っていたが、他のクラスメイトと違い怯えるでも逸らすでもなく、にこりと笑みを向けてきた。
近頃は小説だけでなく現実の人間にも面白さを見るようになっていた僕は、人間観察をすることも増えていた。
いろんなことを本から学んでいくうちに、人間というものに自然と興味が出てきたのだ。
こんな面白さを与えてくれる物を生む、人間という生き物に。
とはいえ、僕は自分で言うのもなんだが、クラス替えをしたこの教室でもすでにかなり浮いている。というか先も述べた通り、風通しがよすぎるくらいに敬遠されている。
嫌われている、というより、完全に畏怖の対象らしい。よって、誰かと目が合うことはないし、合ったとしても怖がって一瞬で逸らされる。
正直、笑みを返してきたやつは始めてだ。
僕の記憶上、あの娘とは話したこともなかったはずだが。
今までクラスが違ったから、僕のこともよく知らないだけかな。怖がらないのは。
まあだからと言って、仲良くしようとは思わないけど。僕から話しかけることはないし、向こうもわざわざこんな悪目立ちしてるような奴と喋ろうとは思わないだろうな。
放課後。
学校の図書室にある本はあらかた読んでしまったので、僕は学校帰りに町の図書館の方へ足を向けていた。
割りと田舎なこの町は、町のど真ん中に建つ城以外は特に特出するもののない地域だった。
ど田舎とまではいかない田舎であるため車が無ければほとんど何処にも行けない。ちなみにバスターミナルはあるがバスが出るのは一時間に一回だ。
だから町の住民、というか県に住む大半の大人は車を持っている。故に田舎だというのに、外を歩けば排気ガスや車の走行する音が多くて、あまり静かとはいえない地域だ。
まあ、夜は逆に開いてる店がコンビニくらいで、恐ろしいほど静かなのだが。
それはさておき町の図書館だが、学校から徒歩で十五分ほどの距離にある。
町の中心。城のすぐ近くだ。
四月の半ば、城の近くに盛大に咲いた桜を眺めながら、僕はその道を歩く。
綺麗な景色だ。城に続く歩道の通りに何十本と植えられた桜の木。たまに吹く弱い風に乗って、花びらがあちこちに舞う。
毎年春になると必ず花見にくる人々で賑わうここは、平日の夕暮れ前にも関わらず多くの歩行者が流れていた。
そうやって夜になれば、ライトアップされた城と共に桜の花も色鮮やかな輝きを撒き散らし、昼間とは違った美しさを見せてくれるだろう。
毎年の春に、夜の空中からそれを見るのが僕の楽しみな恒例行事の一つだ。
まあそれにしても、
「桜祭も終わったのに、相変わらずここは人が多いな…………」
学校帰りの中学生や高校生、近所に住んでるらしい老人たちだけでなく、普通に大人も多い。果たして仕事をしてるのだろうか、とかいうと平日休みの人とか夜勤の人とか変則勤務してる人とかその他モロモロに失礼なので心の中にしまっておく。
まあ今日の僕の目的は花見じゃないし、さっさと素通りして図書館に行くとしよう。
人が多いとはいえ、所詮は田舎。街を歩けば人に当たる都会と違って、避けるまでもなく人波を抜けていく。
「あれ? 羽川くん?」
そんな声とすれ違ったが、たぶん気のせいだろう。街中で僕に声掛けてくる人間なんてこの世界にいる訳ないし。
街の図書館とはいえ、いうほど大きなところじゃない。
十台ほど止まれる駐車場とこじんまりした駐輪場にポツポツとある車両を見るに、今日もあまり人がいる様子はないな。
夏休みなら学生たちが多く出入りするんだが、平日だとこんなもんだろう。
「おや、夕月か。また本を借りに来たのか?」
出入口に差し掛かったところで初老の男性の声に呼び止められた。
ああ、この爺さんまたいるのか。
「ああ、爺さんは何してんだ? こんな図書館の出入口で?」
「今日は日和が良かったのでなぁ。散歩がてらここまで花見をしに来ていた。今は休憩中だ」
「そうかい………あんまり出入口をうろちょろして、他の利用者の邪魔はするなよ」
「それくらいは心得てるつもりだ。ところで、この前にくれた煮干しはなかなかに旨いものだった」
「給食で出た残りだけどな」
「良ければまた持ってきてはくれないだろうか?」
「まあ、機会があったらな」
「楽しみにしている。呼び止めてすまなかったな。私はそろそろおいとましよう」
そういうと爺さんは寝そべっていた身体を起こし、一つ伸びをして図書館の出入口の屋根づたいに歩いていった。
歳の割りに元気の良い猫だな。
僕は人間には話しかけられないが、猫には話しかけられる。元が不死鳥とはいえ、他の動物言葉も理解できるとは思わなかったな。前世では魔物以外に会ったことなかったし。
爺さん、もといどら猫の後ろ姿は身軽に飛び回っていて、とても年寄りとは思えない足取りで去っていく。
屋根の上で日向ぼっこか。野良猫は自由で良いもんだな。まあ、昔の僕も似たようなもんだったけど。
取りあえず、ようやく図書館に入れそうだ。さっさと借りるもの借りて、家に帰って読むとしよう。
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