僕の前世が魔物でしかも不死鳥だった件
プロローグ
物心がついた頃。
自分の存在が普通ではないのだということにようやく気付いた。
いや、気付いたというより、思い出したという方が正しいかもしれない。
夢の中、大空を自由に羽ばたき、いくつもの大陸、山脈を悠々と越えて、僕は遥かな高みから、その地上を眺めていた。
そう、確かにそれは僕自身の目で見てきた景色だ。
あの山脈の形も、時折見える街の様子も、何もかもが見覚えがあって、そこに存在している自分をより確かなものに感じていた。
ただの夢じゃない。
これは、僕の記憶だ。
百年、千年、いやもっと。
移り変わっていく世界の様子を、僕は変わらぬ姿で見守り続けていた。
長い時間だった。
世界が変わり続けても、僕は変わらない。死ぬことのないこの永遠の肉体は、世界にすら取り残されたように、どこまでもひとりぼっちだった。
でもそれでいい。
僕は自由に、この空を舞うことさえ出来れば、例え一人でも構わない。
この永遠に続く空だけはいつも、僕と一緒にいてくれる。
そして、それは今この瞬間も変わることなく。
変わってしまったこの景色を、僕は高みから見続ける。
バサリ、と僕は燃えるような黄金の翼を一度羽ばたかせ、夜の真っ暗な世界を飛んで行く。美しい満月をこんなに近くで見れるのも、僕だけの特権だ。
さて、あと二時間もすれば、夜も明けていくだろう。
そろそろ戻ろうか。
今の僕が住まう、家へ。
くるり、と身を翻し、街の方へ戻っていく。
揺らめく黄金の炎を纏った身体は空を切り、音速を越えたスピードで目的の場所に一瞬でたどり着いた。
僕は翼をたたみながら、黄金の炎の塊となって住宅街に建つ一つの家のベランダに降り立つ。
黄金の炎が消えれば、僕の姿はこの世界に住む、ごく平凡な男子小学生に戻る。
ベランダの窓を開けて自分の部屋に入ると、もはや見慣れた机やらベッドやら本棚やらが置かれた、手狭な一室があった。
ここが今の、僕の寝床。
この世界に住む平凡な小学生である、羽川夕月の家だ。
いったい何故、僕はこの世界にいるのか。
何があって、不死であるはずの僕がこの世界に転生したのか。
僕はこの世界で、何処に向かおうとしているのだろうか。
自分の存在が普通ではないのだということにようやく気付いた。
いや、気付いたというより、思い出したという方が正しいかもしれない。
夢の中、大空を自由に羽ばたき、いくつもの大陸、山脈を悠々と越えて、僕は遥かな高みから、その地上を眺めていた。
そう、確かにそれは僕自身の目で見てきた景色だ。
あの山脈の形も、時折見える街の様子も、何もかもが見覚えがあって、そこに存在している自分をより確かなものに感じていた。
ただの夢じゃない。
これは、僕の記憶だ。
百年、千年、いやもっと。
移り変わっていく世界の様子を、僕は変わらぬ姿で見守り続けていた。
長い時間だった。
世界が変わり続けても、僕は変わらない。死ぬことのないこの永遠の肉体は、世界にすら取り残されたように、どこまでもひとりぼっちだった。
でもそれでいい。
僕は自由に、この空を舞うことさえ出来れば、例え一人でも構わない。
この永遠に続く空だけはいつも、僕と一緒にいてくれる。
そして、それは今この瞬間も変わることなく。
変わってしまったこの景色を、僕は高みから見続ける。
バサリ、と僕は燃えるような黄金の翼を一度羽ばたかせ、夜の真っ暗な世界を飛んで行く。美しい満月をこんなに近くで見れるのも、僕だけの特権だ。
さて、あと二時間もすれば、夜も明けていくだろう。
そろそろ戻ろうか。
今の僕が住まう、家へ。
くるり、と身を翻し、街の方へ戻っていく。
揺らめく黄金の炎を纏った身体は空を切り、音速を越えたスピードで目的の場所に一瞬でたどり着いた。
僕は翼をたたみながら、黄金の炎の塊となって住宅街に建つ一つの家のベランダに降り立つ。
黄金の炎が消えれば、僕の姿はこの世界に住む、ごく平凡な男子小学生に戻る。
ベランダの窓を開けて自分の部屋に入ると、もはや見慣れた机やらベッドやら本棚やらが置かれた、手狭な一室があった。
ここが今の、僕の寝床。
この世界に住む平凡な小学生である、羽川夕月の家だ。
いったい何故、僕はこの世界にいるのか。
何があって、不死であるはずの僕がこの世界に転生したのか。
僕はこの世界で、何処に向かおうとしているのだろうか。
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