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俺は今日から潔癖吸血鬼

倉本あまね

4滴目:富士山と姫の川

「こ、ここは?」


俺が目覚めた場所は廃校のような場所だった。

いや、俺達というべきだろうか。


「…ッ!おい!梨彩ッ!」


隣では梨彩が倒れていた。俺は梨彩を揺すって起こした。


「ん…兄…さん?ってここどこ!?」


梨彩が起きてとりあえず冷静さを取り戻すと周りにも俺たちと同じ人たちがいることに気づいた。


「俺たちの他にいっぱい…」


まだ倒れていたりこの状況によってパニック状態になっている人とそれぞれだった。

もっとよく観察してみると皆男女1組のペアでこの場所に移動させられた感じだ。



「おぅ、ちょっといいか?」


「うわっ!」


俺と梨彩の間からひょこっと出てきたのは背が高くガタイがいい大男だった。
しかし、すこし伸びた顎ヒゲが大雑把さを丸出しにしている。

「びっりした…俺たちになにかようですか?」


「ガハハハハ!すまんすまん!」大男は笑い出したと思うと急に


真面目な顔をして俺の顔を直視してきた。


「俺の顔になにか付いてますか?」


「ちょっとお前、こっちに来い。痛いことはしねぇ。」

ぐいっと俺のパーカーの袖を引っ張って引き寄せられた。

見た目通り力が強い。

そして引き寄せると同時に耳元で呟いた。


「お前…吸血鬼か?」


「ッ!」


そうだ。パニックになって口を隠すのを忘れていた。

梨彩は運良く気付いていなかったらしい。

俺はばつの悪い顔で男を見上げた。


「ん!?」


「ガハハハハ!やっとお前も気づいたかぁ!」


俺の驚き方に男がまた笑い出した。吸血鬼だ。

この男も牙が生えている。


「他の奴らを見てても皆牙が生えてやがる。しかも男だけにな。」


「男だけ…」


「あぁ、一応俺は姫には内緒にしてんだが、お前んとこの嬢ちゃんはそれ、知ってんのか?」


「いや、気づいてはいない…っていうかなんで俺たちに話をかけたんですか?他にもいっぱいいるのに…」


「それは………直感だ!」


「ちょ、直感…」


「あー!だいちゃんいたぁー!なーにやってんの!」
男と話しているとキレイな女性が走ってきた。女性にしては背が高く薄いピンクのグラーデーションが似合ったロングパーマにパッチリとした目、いや、顔全体が美しい女性だ。

「あ、姫!すまん!男同士の話ってやつだァ!」


「だいちゃん…この子は?」


「あぁ!今俺の直感で話をかけた《相棒になる男》だ!」


「相棒になる…男?」(もうこの人、わけわかんねぇ)




俺はもう混乱を通り越して呆れてきた。

そうしてるうちに梨彩もやっと追いついてきたらしい。


「あっ!兄さん!あれ?この人たちは?」


「梨彩…そう言えば名前聞いてませんでしたね。俺は小咲悠真。そしてこっちが妹の梨彩です。」


俺は梨彩のことも紹介して会釈させた。


「俺は富士大介(ふじだいすけ)!んで、こっちが姫川愛理沙(ひめかわありさ)!よろしく!」


「悠真くん、梨彩ちゃん、よろしくね?」


2人は握手を求めてきた。


「あ…」


俺は固まってしまった。握手がしたくないわけではない。

できないのだ。そこですかさず梨彩がフォローに入ってくれた。


「すみません!失礼を、兄さんはちょっとした潔癖症なもので…」


俺の代わりに梨彩が2人と握手した。


「ガハハハハ!そうだったのか!面白くていいじゃねぇか!」


「悠真くん、かわいい…」


大輔と愛理沙はそんな俺のことも受け入れてくれたみたいで安心した。



「レディィィス ァンド ジェントルメェェェェェン!!!」

俺達がいたのは廃校の校庭。

校舎の屋上からマイクを通した雑音が入り混じったような声が聞こえた。
屋上には緑色の襟足が整っている髪になにを考えているか読み取らせないような不気味な目をしていた。それに紫なんてふざけた色のスーツも着ていた。

「やぁやぁみなさん、僕はドゥール!ご機嫌いかがかなぁ?」


「あの声ッ!」


その声はついさっきかかってきた非通知からの声だった。


「てめェ!こんなことしてどうなっかわかってんのかァァァ!」


1人の不良らしき男が屋上の男…ドゥールに向かって怒鳴りつけた。


「いやぁ、全然わからないなぁ。だって条件も満たさずに僕達に手出しをするとこうしちゃうからねぇ」


ドゥールはマイク越しに言うと怒鳴りつけた男に手のひらを向けた。そしてその手を徐々に握っていった。


バキバキバキッ

なにかが折れている。


「ごめんねぇ?普通これくらいじゃ殺さないけどぉ、みんなまぁ、初めてだし?説明ってことで、ねぇ?」


それは不良らしき男の骨だった。


「クソッ!イテぇ…」


男の体がどんどん変形していき見るも無残な死体となった。

ついさっきまで怒鳴っていた「生き物」が一瞬のうちにして血の溢れる「肉の塊」となったのだ。


「オェェェ!」


その光景に嗚咽する人もいた。

俺と大介は気分が悪くなっただけで済み、俺は梨彩の、大介は愛理沙の視界をとっさに遮っていた。


潔癖症の俺があの光景を見て耐えられたことには誇りに思った。


「やべぇな、ありゃ…」


「そっすね…シャレになんねぇ。」


気づくとさっきまで騒がしかった校庭が男の死によって静まり返っていた。

「フゥ。みなさんやっと静かにしてくれましたかぁ。みなさん混乱しているようなので、まずは、簡単に説明しましょうかぁ。」


ドゥールは緊張感がない話し方で続けた。


「今は男女同じ数、あ、でもさっき1人殺しちゃったから女性が1人多い感じでここに集まってます。ここに集められている男性はみんな牙がついているから今1度、確認してみてェ!」


「え…もしかして、だいちゃんにも?」


「兄さん?」


「ああ、黙っててすまん。」


愛理沙と梨彩の問いかけに俺と大介は同時に答えて牙を見せた。

2人とも黙り込んだ。


「だいちゃん…」


「姫…」


「かわいい…」


「へ?」


「なんか、ギャップがあるっていうか…うん、とにかくかわいいよ!」


姫川愛理沙。まさかの返答。


「兄さん…」


「梨彩、黙っててすまん。」


「かっこいい!」


「え?」


「兄さん!その牙すっごくかっこいいよ!」


小咲梨彩。まさかの返答。


「はいはぁーい!確認は済んだかなぁ?ではさっそく本題。簡単に言うとぉ、みなさんには戦ってもらうことになりまぁーす!」


ドゥールは続けて説明した。


「僕らの魔王様は今とっても暇で僕たち以外の人とお手合わせをしたいらしいんだぁ。」

(あんな奴らの頂点なんて倒せっこないし包丁はおろか銃でも勝てる気がしねぇ…)


「男性のみなさんにはパートナーである女性の血を吸っていただきまぁーす!」


「血を……吸う…」(やべぇ…俺は潔癖症だぞ。血を吸うなんて出来っこねぇ)


ドゥールは他にも


「パートナーの血を吸ってみるとぉ…あら不思議ィ!自分だけの能力を発動することができまぁす!」

だの。


「吸血によって得た能力…通称『DNA』を使って戦ってもらいまぁーす!」

だの。



「戦いに勝つことによって得られる魔王様と勝負する権利を使い、魔王様のお相手をしてくださぁーい!」

だの。


正直、戦うなんて出来ないという人が多かったが、ドゥールの次の一言でそれは大きく変わった。


「もしも、魔王様を倒したら、僕らの新しい魔王様としてなんでも願いを叶えて差し上げましょォォォ!」


その言葉に反応しない者などいなかった。


「では、簡単な説明も聞いていただいたところで、いったん帰りましょぉかぁー。あちらの扉を開けて閉めてと繰り返すとどんどんみなさんの所へ帰ることができまぁーす。」


ドゥールはさっきまでのテンションを少し下げて言った。俺は帰る前に大介と愛理沙に声をかけた。


「富士さん、姫川さん、とりあえず後でまた会えるように連絡先交換しましょう。」


「おう、そうだな!それと、さん付けなんて別にいいんだぞ!大ちゃんとかって呼んでくれても!なぁ、姫」


「そうだね。」


「いえ、とりあえず礼儀ってものもあるし、姫さんと…富士さんはそのまま『富士山』みたいに呼びますね」


俺たちは携帯番号を教え合い帰ることにした。


「あぁー!そうだったぁ!小咲、悠真くーん!小咲、悠真くーん!少し残ってくれないかなぁー?」


ドゥールがマイク越しの声で俺に話しかけてきた。


「まじかよ、おい…クソついてねぇ…」


そうして俺と梨彩はドゥールと対面した。



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