城に入れないから図書館へ

ジャスミンR

story 1

大人にも子供にも仕事がある。
勉強や、社会の仕事。
僕は社会の仕事がよく分からない。 
好きな時に休める、羨ましい暮らし、なのだろうか
しかし、人間関係、覚える事が難しそうで
大人になりたくない。
子供も制限が多すぎて嫌だ。
嗚呼ああ覚えることも無く、
僕の好きな人とずーっといることができ、
そして、衣食住に困らない。夢の世界があればいいのに……
「じゃあ、その世界に連れて行ってあげよう」
あれ、これってなんか異世界に飛ぶヤツ?
やめろよ、そんな理想の世界に連れていかれたら、
訳の分からない事を押し付けるんだろ?
そんなの僕はやらないよ、それより、お前誰?
「それはこっちにこれば分かる。訳の分からないこと?そんなの押し付けないよ。さぁ、どうする?」
理想の世界に行けるのなら、
何もしなくていいなら、行くよ。
ってかお前誰?
「さぁ!君の理想の世界へ!」
え、今から?おい待てっ────


『…空…だ』
目を覚ますと、青い空が広がっていた。
寝転がっているらしいが、
草原のように柔らかくない。人口の物の気がする。
『ベンチ?』
そうか、ベンチで寝てたんだ。
え?ベンチ?
『ここが…異世界?』
そう解釈するしかなかった。
「やっと起きたね。いつまで寝ているんだい」
コイツは…あ、最初に声掛けていた人か。
『お前誰?』
「僕は、ライ」
『ライ、ここは僕の理想の世界?』
「そうさ、何もしなくていい。この世界を案内しよう」
『ありがとう』
周りを見渡すと、レンガ造りの洋風な世界だった。
石造りの道はヨーロッパ風。コツリコツリと音を立ててみたかったんだ。そんなことはどうでもいいか。
「ここは、公園だよ」
『そんなの、見ればわかる』
芝生に噴水、なにか特別なものがある訳でもなく、平凡な公園だった。
「ここには、よく風船売りのお姉さんが来てね、とても可愛いんだよ」
『どれくらい?』
異性には少し興味がある。
というか、彼女がいる。リア充なんだよ。
浮気?そうだな、2、3回はしてみたいな。
まだ、未遂だからいいだろ?
「君の彼女、セレナよりも可愛い」
へぇ、セレナよりも……!?
『なんで、ライがセレナのことを知ってるんだ!?』
「そんなに驚くことないだろ?僕は君なんだから」
『は?』
「君は、榎本 蛍介えのもと けいすけ高校2年生の美術部。最近ではクラスの仲間と帰るのが日課で、彼女と距離を置いてしまっている。理由は勉強が忙しくなってしまい、話す時間が減ったため。日々の生活に不満を持ち、この世界に来ることを望んだ。違う?」
ぜ、全部あってる……
『……本当に、僕なのか?』
「そう、君の理想とする僕だよ」
『……』
僕の理想の世界なんだ……
本物だ…
『あれ?』
「どうしたの?」
僕の視界に入った大きな城。
檻のような門があり、不気味さを漂わせる。
立派な城なのに、誰も近くに寄せ付けない。
「ココヘオイデ……」
『誰…?』
「ココハタノシイワ」
「オチャモアルワ」
城の中から声がする。 
いつの間にか、一歩、また一歩と城に近づく。
何故か、入りたくなったのだ。
「蛍介!」
ライの声で我に返った。
「ジャマシナイデホシイワ」
「この人はこの国を作った人だ。城の中に入れてはいけない。僕の客だよ」
「ザンネン」
『………アイツらは?』
「あまり気にしないでいいよ。ここはこの国の城だよ、けど入ってはいけないよ」
『どうして?』
「……王様が怖いからだよ」
『そうか』
ライが何かを隠したように見えたけど、
何も言わないことにした。
「ここに蛍介を案内したかったんだよ」
『ここって?』
西洋な外見で大きな建物。博物館か何かか?
「ここは図書館。でも、普通の図書館じゃあ無いんだよ」
『なにか特別な仕掛けでもあるのか?』
「いいや、ここは……とにかく中に入ろう」
中には───
本棚しかなかった・・・・・・・・
本がないのだ。
本のない図書館なんて、図書館と呼べないだろ!
『本無いだろ』
「こんにちは、本をお探しですか?」
奥から、長いエプロンドレスの女性がやってきた。
どこかで見たことあるな……あ!
『セレナ!?』
「どちら様ですか?私はセレナではありませんよ?」
『いやいや、そっくりそのまま!瓜二つ!セレナだろ!?』
「申し訳ございませんがセレナという人物を私は知りません。私はクレナと申します」
『クレナ?そんな人知らない、ライどうなっているんだよ』
「彼女はこの図書館の司書、クレナ。セレナの妹をイメージしてみた」
なるほど、だから、似てるのか。
『……クレナさん?ここに本は無いのか?』
「クレナでいいです。ありますよ、こちらへどうぞ」
ついて行くと、そこには分厚い本がずらりと並んでいた。さっきとは真逆だ。
「この本は、全て貴方の記憶です」
『記憶?』
「試しに、これを読んでみてください」
赤い背表紙の本をめくると、

初めて彼女が出来た。無垢な彼女はしどろもどろしていたが、あまりにも可愛くて、笑ってしまった。そしたら彼女はムスッとして怒って──

『…………』
「どうしたんだよ?」
『そうだ、セレナは最初は可愛かったのに…』
「ここには、貴方の今までの記憶、思い出が詰まっています。どうなっているか知りたい時にはここを訪れてください。いつでも、待っています」
『ありがとう』
セレナとよりを戻したい。そう思っている自分とそのまま別れてしまいたい自分。どちらを信じればいいのか、分からなくなっていた。
そして、突然ライが声を張った。
「さぁ、改めて歓迎しよう!ようこそ!理想の世界ネバーランドへ!」











それから数日後、ある問題に僕は衝突した。 
セレナにばったり出会ったのだ。 
クレナでは無い。セレナと主張する女性が現れた。
僕の理想の世界。ずーっと居続けよう。
現実の世界に戻りたくないな……

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