神様サイトから始まった異世界英雄譚

月野 はじめ

第2話 無理ゲーの中にこそ面白さがある

  目を覚ますとだんだん、視界が開けてきた。最初こそぼんやりとした世界が広がっていたが、はっきり見えるようになった。

  辺りを見渡し情報を整理する。
 見たところここは、無限にも続いてるかのような道にポツンと、二つの椅子が並べられてるばしょだ。
  そして今俺は一つの椅子に腰掛けておりその前方に腰掛けているのが……

「やあ、目が覚めたようだね亜人(アクト)君」

  それは何とも幼い顔つきの男の子だった。腰くらいまで伸びる、美しい黄金の色の髪に、優しい瞳、白い布一枚で下の方を隠しただけの粗末な服装だ。

「僕の紹介をしようか……僕の名はルーナ地球を支配している神なり!」

  右人差し指を天に向かってあげながら彼は自分が神だと言う。

「お前が、神だとぉ!何言ってだんよ!どっからどう見ても幼稚園児じゃねぇか!」

  思わず俺は神だと名乗る幼稚園児の発言に吹いた後、本音を撒き散らす。

「これだから、人間は困るんだなぁ……よし、じゃあその証拠をここで見せてあげるよ」

  彼はやれやれとした表情で、両の掌を地面に向ける。

  俺はこの年で厨二病とはいささか、可愛いそうだなと思い憐れみの目で彼の両手に注目する。
  すると彼は何も無いところからだんだんと、光の粒が集まってきて、それが合体する頃には一人の人間が出来上がっていた。

  そして彼は、右の掌を俺に向ける。俺はその掌に吸い寄せられ、先程出来上がったばかりの人体に俺が入れられたのだ。

  何が起きているのか全くわからない。


  そして俺はここに来て再び目を覚ます。

「おいおい、待てよ……」

「亜人(アクト)君、君(きみ)の今の顔最高だよ……全く何が起きたかわからないって顔してるね」

  彼の言われた通り俺は、先程何が起きたのか分からなかった。

「説明してあげようか?」

「ああ、頼む……」

「その前に何か言うことがあるんじゃないかい?」

  こいつ、いちいち面倒くせーと思いながらも

「先程した、失礼な発言におわび申し上げまーす」

  謝罪の意が全く無い、この謝罪に彼はムッとした顔になったがすぐ表情を戻し

「まあ……いいだろう……では、仕切り直して」

  彼は、コホンと咳払いした後また言葉を続ける。

「まずね、さっきの君の状態は……君の本体、魂だけの存在だったんだ」

「まてまて……何言ってんだよ俺は目が見えていたし声も出せた。そんなの人間の身体がなきゃできないだろ」

  もし魂だけであるなら、物理的に声が出ないのは当たり前である。なのに、なぜなんだ……
  ただ、心当たりが一つ芽生えた。それを彼が確信にさせる発言をする。

「もう、それはうすうす気がついているのではないかい?」

「……お前が神だからか……」

  彼はうっすらと微笑み、右親指を立て正解の意を示す。
  要するに彼は、俺が魂だけであるのに目が見えていたのも、会話できたことも、自分が神であるからそんなことするくらい容易いことであると。

  何て現実離れした答えなんだよ……

「じゃあそろそろ、本題に入ろうか……まず君、鈴原 亜人(アクト)君は、なぜここに来たのかい?」

  俺は彼の発言にここに来た理由と経緯を思い出した。

「なぜって、あの広告に書いてあった通りだよ」

  その広告通りとは、『人生に飽きた人募集』と書いてあったあの広告だ。おそらく彼ならこの言葉の真意を掴んでくれるだろう。

「じゃあ君は地球の生活に飽きて、僕のところに来たとそういうことだね……話を進めていくけどいいかい?」

  俺はああ、と肯定の意を示し彼に話を進めるよう促す。

「まず、僕がこうやって人を集めてる理由なんだが……募集していると言っても別に人不足で困っているわけではない。ただ、君のような地球での生活に飽きた人に対し、もっと面白い場所へ案内させることさ」

「その面白い場所ってどんなところなんだ?」

「それは君が行ってからのお楽しみにしておいた方がいいし、僕はまだ喋っているから間に口を挟まないでほしいかな」

  こいつ面倒さいなあ……と思いながらも俺は、はいはいと彼に返す。

「そしてその面白い場所で僕がしてほしい事はただ一つ。惑星レグルスの統一だ」

「はあ?どういう意味だよ?」

  俺は全く意味がわからなかった。まずなぜこんなことを神が頼むか。神ならばそんなこと自分でやればいいだろうに。

 あと、レグルスってなんなんだよ……

「疑問に思うことは、多々あるかもしれない。でもね僕がこの国いや星を統一してほしいというのも、ここは、最近争いが絶えなくなってね。僕は、下界に降りようと思ってもそれを許してくれない」

「いやいや、待て……争いが絶えない国の何が面白い場所なんだよ。そしてどこに、俺にメリットがあるんだ?」

  俺はちょっと強めな声音で返してから、彼の反応をまつ。

「面白いところは……君は人生に飽きたと言っていたね。ここの星を統一することはとても難しいんだ。地球人の最近の言葉で言うなら無理ゲーって言うのがふさわしいかな?」

  俺は彼の発言に、手を組み、言葉の真意を読み取ろうと必死に考えた。そして一つの結論に至り……

「なるほどな、その無理ゲーだからこそ出来た時の達成感と、俺みたいなやつが人生に飽きないようにしてくれるための世界がメリットであると言いたいのか?」

「その通りさ。君は頭がキレるようだから助かるよ」

  彼の表情に笑みが漏れ、俺は彼の言葉の真意を読んだことに対して、やってやったぞとばかりにドヤ顔をする。

「ここまで来たなら僕が言いたいことはもうないから、君の質問を受け付けようか」

  彼は一仕事終えたとばかりに、さっきまで整っていた姿勢が急に崩れ、己の身体を椅子に任せる。

「質問はいいや、あっちの世界で楽しみたいし、強いてあるとすれば、そこには何人くらいの人数が挑戦したんだ?」

  もともとにここに来た理由も面白そうだと思ったからだし、この神に聞いたら一つ楽しみを打ち消すみたいになってしまうので、質問するのはやめたが……

 一つたった一つ、どれくらいの人数が行って、どれくらいの人数がこれを成し遂げられたのかが気になった。

「ざっと、100人は行ったかな?その中の30人くらいはあっちの世界で死んでいるし、だれもこの星の統一を成し遂げた者はいないよ」

「おお、それくらい難しくなきゃ無理ゲーって言わねえよな。だんだん楽しみになって来たぜ」

  俺は彼の発言に興奮を覚えた。

  だれも成し遂げられていない本当の無理ゲーに心が揺れる。

「じゃあそろそろ幕引きと行こうか。もう聞きたいことはなさそうだし、ここで引き止めている時間がもったいないよね。ここにゲートを作るからこの先をくぐったら惑星レグルスへ到着さ」

  と彼は俺と彼の中間地点になるところに右手を差し出し黒いグニャグニャしたような物を作る。ブラックホールみたいな形をしており、今にも引き込まれそうになりながらも、俺は懸命に立ち尽くす。

  そして俺は鳴り止まない心臓に手を当て、一呼吸し、いざそのゲートへ飛び込む。

「面白いものを見せてくれよ、亜人(アクト)君」

  俺は、そんな彼の発言を最後にゲートの中へ吸い込まれる。

「うわ、やべえ」

  色んなところから、引っ張られるような感覚に陥り身体がグチャグチャになろうとしているのを必死に絶える。こんなにも重力を身体感じたのは、はじめてだ。
  かなり身体への負担は大きいが、これもはじめての体験なので実におもしろい。

  そして、数メートル先に光の粒が見えて来た。俺はそれに安堵し、息を大きく吸い込んだ。

「絶対に成功さしてやる」

  その宣言とともに、新たな世界への入り口に立った俺はそこを潜り抜ける。
 
 

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