復活魔王の国家建国!
魔王と過去と決意表明!
…はぁ。
全く嫌な夢を見たわ。
私の帝国が崩壊する夢なんて悪趣味にも程があるわね…。
そう言って目をあける。
「…あぁ……。」
閑散とした風景が目に入り、思わず声が出る。
先の夢と同じ風景に少し嫌気が刺す。
 
「お目覚めですか、テスカトリポカ様。」
デミゴールが言う。
「やっぱり…夢じゃないのね。」
私はそう言うと、目に映る視界に全てを理解し、同時に落胆する。
「何故こうなったのか教えてくれる?」
きっと、誰もが思うであろう単純な疑問を私は投げかけた。
「話せば長くなります。あれは確か……
                             850年前
「大変です!デミゴール様!!!敵軍です!!」
国の外壁の外から、ガシャン、ガシャン、と一定のリズムで鉄が当たる音が聞こえる。
「ちっ…。テスカトリポカ様が封印されているからといって…。またか…。」 
デミゴールが苛立ちながら言う。 
魔王が封印されていた当初、デミゴールは魔王代理を務めていた。
魔王が封印されて1200年と少したつ。
魔王がいなければ勝てると思ったのか近隣の国々がみな領土を欲してソーンブラに進軍していた。
ソーンブラ帝国がある周辺地域は地脈にも恵まれ、自然も豊かであるため欲しい国は後を絶たない。
「どこの国だ…!!!」
デミゴールが魔族の兵士に少し声を荒らげて言う。
「おそらく、東のルミナス王国かと…。」
デミゴールに押されがら、兵士が答える。
ルミナス王国…。
ソーンブラ帝国の東に位置する人間の国。
神を信仰する宗教国家で、魔族を忌み嫌う風習が今でも続く国だ。
「ルミナス王国…厄介な時に厄介なヤツらだ…。まったく、少しは空気を読んでくれというものだ。」
戦争にそんなもの関係ないとはわかりつつもデミゴールは口にした。
1200年間、10を超える国家からの防戦。
魔王封印当初は亜人の国や巨人族の国、獣人の国など、元々の身体能力が高いが、あまり知略のない国のみが攻めてきていた。
浅い知能だ。
大方、チャンスだと思い軽い気持ちで進軍してきたのだろう。
その頃は軍事力、統率力共にソーンブラの方が優勢であった。
しかし、封印から600年たった辺りだろうか。
次第にエルフの国や蜥蜴男の国等、知略、戦術というものを持つ国が攻めてきたのだ。
魔族の身体能力はエルフや蜥蜴男よりも秀でている。
しかし、先の戦争での消耗や魔王という指揮官不在による士気の低下……。
その辺からソーンブラは防戦を強いられていた。
しかしながら、まだ敗戦とは程遠く、拮抗した戦力を維持し続けていた。
「人族…まさかここまで苦しめられるとはな…。」
デミゴールがつぶやく。
ちょうどソーンブラ帝国崩壊から200年前…。
魔王封印から1000年程度経った頃だろうか。
人族が、魔族に対抗するための武器、聖具なるものを開発した。
その時からだろう、魔族と他国の均衡が崩れ始めたのだ。
本来、人族は知略には長けているものの、戦力ではあまりにも弱い種族であった。
だが、そこに聖具というものが生まれてしまったがために戦力のマイナスを補うほどの力を手に入れてしまったのだ。
「大変です、デミゴール様!!!」
先の兵士とは別の兵士が戦場から報告にやってきた。
「…ええい!今度はなんだ!!」
デミゴールはまた声を荒らげる。
消耗しているからか苛立ちを隠せなくなっていた。
「竜族です!!竜族が我が国上空を占拠しています!!!」
兵士が慌てて報告する。
「…なっ。…竜族…だと?!」
苛立っていたデミゴールの顔が青ざめていく。
無理もない。竜族は恐ろしく強い。
竜族の国は魔王がいた頃のソーンブラとおそらく互角だろう。
しかし…今は魔王もいない上に、人族まで攻めてきている。
「まったく…なんてタイミングの悪い…。いや、違うな…。」
タイミングの悪い時に…と言おうとして口を噤んだ。
頭の回る竜族のことだ、おそらく人族と交戦してることを知った上であえて来たのだろう。
竜の吐く火炎弾が城下を焼く。 
建物が崩れる轟音とパチパチという焼ける音が城の中にまで聞こえてくる。
自然豊かなソーンブラが崩れていくのを感じた。
「万事休す……か…。」
デミゴールが弱い声でつぶやく。
…が、その後に
「……いや、違うな…。…せめて魔王様の眠るこの城だけでも……!!」
そう言うとデミゴールは手を前にかざした。
かざした手の前には魔法陣が多重に浮き上がる。
「“静かなる静寂  嵐よ、吹き荒れ、散り、我が盾となって呼応せよ”……我が魔力など無くなっても良い…!ストームウォール!!!!」
詠唱後、城を囲むように竜巻の壁がどことなく現れた。 
ストームウォールは本来、人を1人取り囲む程度の範囲の防御魔法だ。
相当無理をしたのだろう。
竜族の攻撃は止むことはなかったが、竜巻の壁はそれを城には通さなかった。
「……っ。」
その時だった。
ばたんっ、とデミゴールはその場に倒れる。
……ということがあり、私が目を覚ました時にはもうこの城以外の建物は崩れ去っていた…、というわけでございます。」
デミゴールは長い話にふうっ、と息をつく。
「………そんなことがあったのね…。」
私は自分が眠っている間の話を聞き、無力さを悔いた。
王たる自分が国を守れなかった、それだけで理由は十分だった。
「さて、これからどうするおつもりですか、テスカトリポカ様。不躾ではございますが私はここを離れてどこか別の場所で暮らすのが良いかと進言します。」
デミゴールは遠慮しつつ提案した。
「…決めたわ。」
そう言うと続けて言った。
「……私はこの国を一から作り直すわ。あなたが守ってくれた……いえ、あなた達が守ってくれたこの城を中心に、もう一度帝国を立ちあげる。
もう誰にも負けない、誰も傷つかない幸せな国を…!!!!!」
二人しかいない帝国に、決意は響いた。
偶然か必然か…枯れ木が揺れ、やがてまた静寂が訪れた。
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