異世界の民族問題に現世界のならず者が参加します

ノベルバユーザー239614

ならず者三人目

男「話がいがありそうな男だ。」

鎖につながれた男はレイモンの顔を見てニヤリと笑った。

レイモン「名前は?」

紅葉「ヘイズルを名乗っている。」

レイモン「ヘイズル?聞かん名前やな。あんたどこの出身や?」

ヘイズル「オスマン帝国。」

レイモン「知らんな、そんな国。」

紅葉「もしかすると世界線が違うのかも。」

レイモン「は?」
         
ヘイズル「は?」

二人とも何を言っているのか分からないという反応だった。

レイモン「何言うてんねん、世界はひとつやろ。」

ヘイズル「そうだ、我々は同じ時の中で等しく時間を感じているはずだ。」

紅葉「この世界には過去に色々な人間が流れ着いたと聞いている。流れ着いた人間は元いた世界で偉業を成し遂げたり、なにかしでかした人間が多かったけど互いを知る人間は少なかった。」

レイモン「そいつらがアホなだけちゃうんか?」

紅葉「いや、過去にこの『巴谷』に大陸を始めて横断した人間が8人いた、この世界に大陸が8個もあるとは考えられない。」

ヘイズル「要するにその8人は互いに違う世界戦の大陸を横断したと言うわけか。」

紅葉「そうなる、こちらの世界の大陸は2つ。」

レイモン「なんやて?俺のとこは大戦争でそんな大きい陸地は3個しか無くなったぞ。ほかは全部沈んでもうたわ。」

ヘイズル「なるほどな、どうやらこの小僧の居た世界と私の仕えたオスマン帝国は違う世界のようだ。」

ここでやっとレイモンが理解した。

ヘイズル「で?私をいつまで勾留している気だ?私のような一介の剣士をここに留めておいて得なことも無かろう。」

紅葉は鼻をスンスンさせてヘイズルの匂いを嗅いだ。

紅葉「やはり、お前からはお世辞にもこの世の匂いと思えない匂いがする。」

ヘイズル「ほう?それは焼けた肉の匂いか?それとも切りつけられた女子供の匂いか?」

レイモン「俺はなんも匂わんけどな。」

相変わらずぶっきらぼうなことを言うとレイモンはその場に座り込んだ。

レイモン「で?姉ちゃんはなんで俺をここに連れてきたんや?こんなオッサンひとりのために呼んだんちゃうやろ?」

紅葉「……何故そう思う。」

レイモン「だってほら、お前はこいつの通訳のつもりで俺を呼んだんやろ?でも今現在こいつと会話できとるやないか。」

レイモンの言葉を聞いて紅葉の耳が一瞬ピクっとした。

レイモン「反応したな?ホンマ隠すの下手やな。どんな魂胆か知らんけど姉ちゃんの反応見てたら何となく深刻ってことはわかるわ。」

紅葉「……分かった、ついてきて。」

紅葉はレイモンを更に奥の部屋へと招いた。
何度も何度も同じような感じの部屋を通り抜け、そして一番奥と思われる部屋に着いた。

レイモン「姉ちゃん…ここにも誰か捕まえとるんか?」

紅葉「ここは我々人狼族のおさの御部屋だ。現在は族長が戦争で戦死なされたため、族長の妻である銀杏いちょう様が我々を導いてくださっている。」

レイモン「俺とそのお偉いさんを合わそうっていうんやな?」

紅葉「そうだ。」

紅葉はその部屋のドアをノックしてから開けた。

紅葉「失礼します。」

銀杏「例の人物を連れてきたのか?」

紅葉「確証はありませんが、彼こそ奴らに対抗できるかと。」

レイモン「おい、あれが狼の姉ちゃんのかしらか?めっちゃ若いぞ?」

銀杏の姿はまるで10代後半、よく言っても20代前半位だった。
そもそも人狼族の屋敷にはそれくらいの姿の者しかいなかった。

銀杏「貴方が驚かれるのも無理はない、我々は元々普通の狼ですが、100年を超えると我々は妖怪としての力を持てるようになりこの若い人間の姿になれるのです。」

レイモン「じゃあこの狼の姉ちゃんも100歳なんか?」

銀杏「ええ、そういうことになります。」

レイモン「こんなンが100歳か、俺はてっきり17、18くらいの餓鬼や思っとったで。それで、なんで俺をここに呼んだかそろそろ教えてくれへんか?」

銀杏「そうでしたね、本題に入りましょう。ここ最近、この巴谷に異世界からの漂流者が多く流れ着くようになりました。」

レイモン「まあそこは狼の姉ちゃんから聞いたから大丈夫や。」

銀杏「それなら話が早い、実はこの巴谷では人間、妖怪、魔物による争いが起きているのです。」

レイモンはその話を聞かされてからこれまでの雰囲気がなくなった。

銀杏「我々は妖怪として戦っています。元々力を持つ妖怪としては人狼、天狗、ぬらりひょんなどがいるのですが…」

レイモン「そこはどうでもええ、あんたさっき『魔物』言うたな?」

これまでにないほどレイモンの目つきは悪くなっていた。
しかしレイモンの口元はこれまでにないほど笑っていた。

レイモン「あんたら良かったな。人間はともかく対魔物のエキスパートがここにおるやないか。」

紅葉「何を言っている。ここの魔物はたかが宗教家では退治することはできないぞ。奴らには十字架は聞かない。」

レイモン「十字架効かんのはどこの魔物も一緒や。俺は魔物シバキあげるのに十字架は使わん。御札も使わんしお経も読まん。」

レイモンは自分の巨大な十字架を地面に置いて中身を取り出した。

レイモン「魔物は退治するもんやなくて殺すもんや。」

その一瞬の異様な空気に屋敷中の人狼達が集まってきた。

「銀杏様、大丈夫ですか!?」

「銀杏様、お怪我は?」

銀杏「私は大丈夫です。それよりも我々はこの戦いで生き延びられるかもしれません。」

銀杏の目の前に立っているレイモンは最早これまでの軽い男ではなくなっていた。

ただ化け物を廃滅することを楽しみにしている狂人だった。

レイモン「魔物殺せるんやったらあんたらに協力するけどな、アイツも解放してやってくれや。」

紅葉「あいつって、あのヘイズルか?」

レイモン「せや、あの男、くぐってきた修羅場が違うと言うかなんと言うか、何となく分かるんや。だって手枷つけられて捕まっとんのに緊張も焦りもあれへんかったやろ?あいつは多分あんたらの力になると思うで。」













ヘイズル「ふふふっ、あの小僧、この私を解放する気か?面白い男だ。」

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