《ハーレム》か《富と名声》か。あの日、超一流の英雄王志願者パーティーを抜けた俺の判断は間違っていなかったと信じたい。
12 旅立ち
ジロウと戯れて心を癒された俺達は、ターニャの家を出る事にした。
あまり長居するのも悪いからね。
身支度を整えてドアを開け、一歩外に出て、くるりと踵を返して振り返る。
ターニャの右肩にはジロウが乗っていて、もっと遊んでくれと言わんばかりに鼻を鳴らしていた。
「本当にもう行くのかにゃ? もっとゆっくりしていってくれても全然いいんにゃよ?」
「うん。本当はそうしたいんだけど、いつまでもお世話になる訳にはいかないからさ」
「ターニャ、本当にありがとうございました。とても楽しかったです」
そう言ってアイラは、ジロウのノドを撫でる。
「そうか……寂しいにゃ。じゃあ、またいつか近くを通りかかったら寄ってくれにゃ。にゃはは」
ターニャはそう言って、耳を力無く垂らしながら寂しそうに笑う。
「…………」
「…………」
沈黙を破るようにターニャが更に口を開く。
「……こ……これから! これからみんなはどうするにゃ? まだ旅を続けるのかにゃ?」
「うん、そうだね……。まあ、旅を続ける意味も目的もないと言えばないんだけどね……」
「確かにそうですね。私達は旅の目的を失った訳ですから」
「…………」
「アイラ……」
アイラとチキはともかく、俺は自分からパーティーを抜けた身なので目的を失ったのは自業自得だ。
だから、#目的を失った__・__#と自ら言うのはアイラとチキに対して非常に申し訳ない気持ちになる。
俺とは違い、二人は少なからず傷付いているのだから。
「ターニャは……ターニャはどう……するの?」
ここで今までずっと沈黙を守ってきたチキが遂に口を開いた。でも、その声はなぜか震えていて今にも消え入りそうなほど小さな声だった。
「んにゃ? ターニャは……。う~んと、ターニャはーーーーまあ、今まで通りここでたまに帰ってくるジロウの帰りを待ちながらひっそりと暮らすにゃ。にゃはは……」
肩の上のジロウはターニャの耳の中に鼻を突っ込んで、鼻息を漏らしている。
ターニャは少しくすぐったいのか、耳をピクピクとさせてジロウの侵入を拒もうとするが、ターニャの妨害も虚しくあっけなく突破される。
「…………」
「…………」
どうしても無言になってしまう俺達の間では、ジロウのぷしゅん、ぷしゅん、という鼻息だけが響き渡る。
その時、チキが俺の左の袖をぐいぐい引っ張っている事に気付いて、慌てて頭を撫でる。
が、しかし。俺の読みは外れたようでチキは小さな頭をブンブンと降って今にも涙が溢れそうな目で俺を見上げる。
また、俺の右肩にはアイラの両手が置かれ『カミュ』と小声で囁かれた。
気が付くとジロウはターニャの肩の上で首と尻尾を限りなくピンッと伸ばしていて、何かを伝えようとしているらしかった。
何だ。何なんだ皆。
何が言いたいんだ。
こういう時の俺はどうも読みが甘いらしく、考えても考えても答えに辿り着けないでいた。
解らない。もういっその事、言葉にしてくれればいいのに……。
皆の言いたい事は解らないけど、というか。解らないから、もう俺の喋りたい事を喋ろうと思う。
俺はゆっくりと口を開き素直に、真っ直ぐに、自分の想いを伝える事にした。
あまり長居するのも悪いからね。
身支度を整えてドアを開け、一歩外に出て、くるりと踵を返して振り返る。
ターニャの右肩にはジロウが乗っていて、もっと遊んでくれと言わんばかりに鼻を鳴らしていた。
「本当にもう行くのかにゃ? もっとゆっくりしていってくれても全然いいんにゃよ?」
「うん。本当はそうしたいんだけど、いつまでもお世話になる訳にはいかないからさ」
「ターニャ、本当にありがとうございました。とても楽しかったです」
そう言ってアイラは、ジロウのノドを撫でる。
「そうか……寂しいにゃ。じゃあ、またいつか近くを通りかかったら寄ってくれにゃ。にゃはは」
ターニャはそう言って、耳を力無く垂らしながら寂しそうに笑う。
「…………」
「…………」
沈黙を破るようにターニャが更に口を開く。
「……こ……これから! これからみんなはどうするにゃ? まだ旅を続けるのかにゃ?」
「うん、そうだね……。まあ、旅を続ける意味も目的もないと言えばないんだけどね……」
「確かにそうですね。私達は旅の目的を失った訳ですから」
「…………」
「アイラ……」
アイラとチキはともかく、俺は自分からパーティーを抜けた身なので目的を失ったのは自業自得だ。
だから、#目的を失った__・__#と自ら言うのはアイラとチキに対して非常に申し訳ない気持ちになる。
俺とは違い、二人は少なからず傷付いているのだから。
「ターニャは……ターニャはどう……するの?」
ここで今までずっと沈黙を守ってきたチキが遂に口を開いた。でも、その声はなぜか震えていて今にも消え入りそうなほど小さな声だった。
「んにゃ? ターニャは……。う~んと、ターニャはーーーーまあ、今まで通りここでたまに帰ってくるジロウの帰りを待ちながらひっそりと暮らすにゃ。にゃはは……」
肩の上のジロウはターニャの耳の中に鼻を突っ込んで、鼻息を漏らしている。
ターニャは少しくすぐったいのか、耳をピクピクとさせてジロウの侵入を拒もうとするが、ターニャの妨害も虚しくあっけなく突破される。
「…………」
「…………」
どうしても無言になってしまう俺達の間では、ジロウのぷしゅん、ぷしゅん、という鼻息だけが響き渡る。
その時、チキが俺の左の袖をぐいぐい引っ張っている事に気付いて、慌てて頭を撫でる。
が、しかし。俺の読みは外れたようでチキは小さな頭をブンブンと降って今にも涙が溢れそうな目で俺を見上げる。
また、俺の右肩にはアイラの両手が置かれ『カミュ』と小声で囁かれた。
気が付くとジロウはターニャの肩の上で首と尻尾を限りなくピンッと伸ばしていて、何かを伝えようとしているらしかった。
何だ。何なんだ皆。
何が言いたいんだ。
こういう時の俺はどうも読みが甘いらしく、考えても考えても答えに辿り着けないでいた。
解らない。もういっその事、言葉にしてくれればいいのに……。
皆の言いたい事は解らないけど、というか。解らないから、もう俺の喋りたい事を喋ろうと思う。
俺はゆっくりと口を開き素直に、真っ直ぐに、自分の想いを伝える事にした。
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