冒険者の日常
決意の瞳
そして誰もが言葉を失った。とんでもない衝撃により広場の一部は陥没、ギルドもボロボロ、少なくともネロが地面を離れてからまだ10分しか経っていない。
「……何が、起こってるんじゃ」
「空が白く光って、黒く染って稲妻が走って、次には物凄い衝撃音の連続……あなたは人間ですか……」
高ランク冒険者も状況を全く理解出来ていなかった、いや出来なかった。混乱が広場に蔓延する。
「おい、今落ちてきたの、まさか……ネロじゃないよな」
「そ、そんな……お兄ちゃん……」
あたりが静まる。誰もがその言葉の意味を悟った。その言葉の通りならそれが示すことを。
「と、とりあえず確認じゃ」
カサエラーの言葉で一同は何か、の落下地点へと足を進めた。
 そうしてそこでまた言葉を失った。
そこには巨大なクレーターと漆黒の翼を纏ったネロ、その傍らの巨大なドラゴンだったものだけが残っていた。
「お、お兄ちゃん……」
アイシャはネロに向かって走り出した。
「危ないっ!!」
  ユニが慌ててアイシャを引き寄せる。瞬間それまでアイシャがいた場所は地面もろとも深く抉られた。
「まずいぞ、自我を失いかけておる。このままではネロは闇に呑み込まれるぞ」
全員の顔から血の気が引く。
「冗談でもそんなこと言わでください。そんなの魔王よりも恐ろしい」
 「じゃったらどうにかしてネロに自我を思い出させるしかないの」
「でもどうやって? 私たちじゃ凌ぐのが精一杯よ」
都市最強の冒険者と対等に渡り合える者はいない。故に最強なのだ。だからこうなってしまうと恐ろしい。誰も抵抗ができない。
「クソッ、これじゃ本末転倒だ、ネロ戻ってきてくれ」
冒険者が次々と声を上げる。
しかし返ってきたのは冷淡で残酷なまでの攻撃の数々。斬撃が飛び、血が飛び、腕が飛び、一瞬にしてそこには地獄絵図が広がる。
「お兄ちゃん……あの、援護してください。私が説得します」
「なっ……そ、そんなこと、そんな危ないこと……」
「これしかないです、ダメだったら諦めるしかありませんが、お願いします」
その目には未だ希望という強い力が滾っていた。
「つまり、お主はネロを止められるというのだな」
わずかな沈黙の後、アイシャは力強く頷いた。
「よかろう、力を貸してやる」
軽く笑って、そう言った。
「ちょ、カサエラー、どういうこと?」
ユニは反射的に反対した。
いくらなんでも危険すぎる、まさしく無謀というものだ。
「少しは信頼してやれ、彼女は妹じゃぞ、それが仮にだとしてもそこには確かな絆があるというものじゃ」
やってみなければわからんじゃろ、カサエラーの態度はそう語っていた。何もせずに諦めるのか、と皆を挑発していた。
「……わ、わかった。私も援護するわ、でもくれぐれも死なないこと」
ユニは渋々了承した。
「頑張ります、私ができることを全力で……」
少女は決意する。
彼を救うために、彼に恩返しをするために、彼の気持ちを知るために、必ず彼を助けると。
「……何が、起こってるんじゃ」
「空が白く光って、黒く染って稲妻が走って、次には物凄い衝撃音の連続……あなたは人間ですか……」
高ランク冒険者も状況を全く理解出来ていなかった、いや出来なかった。混乱が広場に蔓延する。
「おい、今落ちてきたの、まさか……ネロじゃないよな」
「そ、そんな……お兄ちゃん……」
あたりが静まる。誰もがその言葉の意味を悟った。その言葉の通りならそれが示すことを。
「と、とりあえず確認じゃ」
カサエラーの言葉で一同は何か、の落下地点へと足を進めた。
 そうしてそこでまた言葉を失った。
そこには巨大なクレーターと漆黒の翼を纏ったネロ、その傍らの巨大なドラゴンだったものだけが残っていた。
「お、お兄ちゃん……」
アイシャはネロに向かって走り出した。
「危ないっ!!」
  ユニが慌ててアイシャを引き寄せる。瞬間それまでアイシャがいた場所は地面もろとも深く抉られた。
「まずいぞ、自我を失いかけておる。このままではネロは闇に呑み込まれるぞ」
全員の顔から血の気が引く。
「冗談でもそんなこと言わでください。そんなの魔王よりも恐ろしい」
 「じゃったらどうにかしてネロに自我を思い出させるしかないの」
「でもどうやって? 私たちじゃ凌ぐのが精一杯よ」
都市最強の冒険者と対等に渡り合える者はいない。故に最強なのだ。だからこうなってしまうと恐ろしい。誰も抵抗ができない。
「クソッ、これじゃ本末転倒だ、ネロ戻ってきてくれ」
冒険者が次々と声を上げる。
しかし返ってきたのは冷淡で残酷なまでの攻撃の数々。斬撃が飛び、血が飛び、腕が飛び、一瞬にしてそこには地獄絵図が広がる。
「お兄ちゃん……あの、援護してください。私が説得します」
「なっ……そ、そんなこと、そんな危ないこと……」
「これしかないです、ダメだったら諦めるしかありませんが、お願いします」
その目には未だ希望という強い力が滾っていた。
「つまり、お主はネロを止められるというのだな」
わずかな沈黙の後、アイシャは力強く頷いた。
「よかろう、力を貸してやる」
軽く笑って、そう言った。
「ちょ、カサエラー、どういうこと?」
ユニは反射的に反対した。
いくらなんでも危険すぎる、まさしく無謀というものだ。
「少しは信頼してやれ、彼女は妹じゃぞ、それが仮にだとしてもそこには確かな絆があるというものじゃ」
やってみなければわからんじゃろ、カサエラーの態度はそう語っていた。何もせずに諦めるのか、と皆を挑発していた。
「……わ、わかった。私も援護するわ、でもくれぐれも死なないこと」
ユニは渋々了承した。
「頑張ります、私ができることを全力で……」
少女は決意する。
彼を救うために、彼に恩返しをするために、彼の気持ちを知るために、必ず彼を助けると。
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