冒険者の日常

アカツキ

困難と試練

 少しの談笑をはさみ話は本題へと移る。
「それで、アンティラの魔術結界を破るもの、一体何から攻撃を受けているんですか?」
 僕はギルド職員の女性に話かける。周りには外壁の破片と思われるものがチラホラ転がっている。ここまで破壊するとはそれなりの威力があるということ、そもそもアンティラ周辺には強力な魔術結界が貼られていて並大抵の攻撃は外壁にすら届かない。
「……ど、ドラゴンロード、です」
 途端、波を打ったように広場に静寂が訪れる。
「儂の聞き間違いじゃないならドラゴンロードと聞こえたのだが……」
 カサエラーがそう言い、ユニオンキャッツのリーダー、ユニも驚いて同調する。
「私にもそう聞こえましたよ」
「……それは本当なのか?」
 ドラゴンロード、一言で言うならそれは天災だ。そもそもドラゴンですら国家を1つ滅ぼせるような天災級モンスターだ。それこそ人間の力でどうこうなる限界に近い、それなりの高位ランク冒険者それこそAランククラスでやっとBやCでは太刀打ちができない。それがドラゴンだ。
 それで、ドラゴンロードというものはその天災を束ねているもの。ロードというのだしそれこそ君主や王などあるいは元締めと言ってもいいのかもしれないそういったものなのだ。ともかく天災と変わらないのだ。
「は、はい。外壁を攻撃したのは終焉の咆哮エンドオブクライ、ドラゴンロードの固有スキルだと思われます」
 混乱と動揺が広場に蔓延する。
「なんで今になってそんな奴がでできとるんじゃ……」
 かつて出現したドラゴンロードは王都を蹂躙じゅうりんして火の海へと変えた。その炎は三日三晩燃え尽きることなくこの地を焼いたと伝承されている。それくらいに規格外なのだ、人知を遥かに凌駕するその力の前に人間はあまりにも無力だ。
「最後にドラゴンロードが確認されたのはいつだっけ?」そんな冒険者の声が聞こえてくる。
 確か……
「約350年前と言われております。ただ、詳しいことは何も分かっていないのですが、それに魔術波紋も少し異なるのです……」
 答えにたどり着く前に答えられていた。流石はギルド職員といったところだ。
「ほとんど新種と言った感じですかね」
 ユニが言ったことは最もであろう。なんせ前回戦ったであろう冒険者はもう生きてはいないのだ。それこそ当時の文献や資料はあるのだろうけど、それでもそれはあくまで参考でしかない。そう言えば350年前のドラゴンロードは大賢者が倒したと文献には書かれていたはずだ。
「……あぁ、そうなると思う」
 僕のせいでリーナが死ななければ倒せたのだろうか?
 今更どうにもならないことと分かっていながらもしもへの期待と後悔と罪悪感が僕の中をぐるぐる回る。
「それでも、やるしかないじゃろ、儂らがこの街の最後の砦じゃ」
「そうですね、私たちにとってこの都市は失う訳には行かないのですから」
 流石はこの都市でトップを争う冒険者だ。僕とは違う。
「………………」
 そんな中気がつけば視線は僕のところへ集中していた。どうやら後は僕の確認だけのようだ。
「お兄ちゃん……」
 分かってる。そんな不安そうな目で見られなくても僕のしなくちゃいけないことくらい。
「そうだね、やるしかない。僕達がどうにかするしかない」 広場に冒険者達の覚悟の雄叫びが響いた。

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