冒険者の日常

アカツキ

違和感の正体

「お兄ちゃん、最初からこのスキルで洞窟の捜索をすればよかったんじゃないですか?」
「そう言われるとぐうの音もでないんだけど、そもそもこれはアイシャのレベル上げのためだからな」
 そう言えばという感じだけれどもこれはアイシャのレベル上げのためのものなのだ。
「……まぁそれでいいです。それはともかくお兄ちゃんはどう考えているんですか?」
 最近は使用回数が増えたおかげなのかこのスキルを使っても自我が保てるようになってきてる。いい事なのか悪い事かは分かり兼ねるけれど……でも少なくともパーティーを組んでいる身としてはその方がいいだろう。
「正直なところ分からない……世界有数の国に攻めたところで勝算なんてないだろうし、何かの陽動にしても穴だらけ、一体何が目的なんだかさっぱりだよ」
 思うところがないといえば嘘になる、けれどその思うところが確かとは言えないから嫌なんだ。だから胸に突っかかるのだ。
「とにかく、今はアンティラに戻らないと、もう少し我慢してくれアイシャ」
 首に回された腕に力がこもるのを確認してさらに速度をあげる。

 ***

「おい、ネロはどこにいるんだ。俺たちじゃどうにも出来ないぞ」
 そこは冒険者が集うギルドの前にある広場。
 アンティラが攻撃を受けてから既に小一時間が経っている。そしてその間にその間だけで何人もの冒険者が命を落とした。
「今さっき思念伝達テレパシーで連絡を取りました。すぐに戻ってきてもらえるはずですから」
「そうは言っても、明らか人数が足りないんだ」
「……ふむ、仕方がないの。儂が協力しようぞ、これでも冒険者の端くれだからのう」
 それは双翼者デュアルウィンガーと呼ばれる冒険者だった。この都市ではネロの次に高レベルで最年長の冒険者でも有名だ。
「……双翼者カサエラー」
 広場がシーンと静まりかえる。この都市で1、2をを争う冒険者が出てきたのだ、そうなるのも当然といえば当然だった。
「先を越されましたか、何をやるにも気に食わない爺さんですね」
「なっ、双翼者に向かってなんて口を……」
 不自然なところで途切れた男の声。一同の注目はその声がした方へと注目する。
「ゆ、ユニオンキャット!?」
「何度も言ってるんですけど私達はユニオンキャッツです、脳の中身変えた方がいいかもしれませんね」
 一陣の風が吹いた。
「ぎゃー、すいませんでした。頭が割れる、割れてしまいます」
 一瞬で男との距離を詰め男の頭をギリギリと握っている。何を隠そうこの都市最強のパーティーがそこにはいた。
「お、来たかのう。陰湿猫ども、来るのが遅かったからてっきり逃げ帰ってにゃーにゃー泣いてるかと思ったぞい」
 明らかにからかいだった。それでいて鼓舞のようでもあった。
「これだからこの爺さんは好きになれないのです。あなたこそ体の方は大丈夫なんですか。戦闘中にぎっくり腰なんかになられたら困るんですよ」
 売り言葉に買い言葉、挑発には挑発を鼓舞には鼓舞を。
「カッカッカ、言うではないか。これでもまだまだ現役じゃ、元気は生憎有り余ってるんじゃ」
「そうですか、その元気が空回りじゃないことに期待しますね」
「え、えっと……それではきょ、協力をお願いいたします」
 突然現れたこの都市の先鋭に緊張が隠せないギルド職員がそこにはいた。いや、その様子は冒険者にたいしてだけではなかった。
「うむ、分かっておるがネロのやつはどこをほっつき歩いてるんじゃ?」
「本当ですよ。彼はこの都市最強なんでしょ、こんな大事な時に何をしてるんですか」
「……随分な言い草だけど、少し前からあなたがたの後ろにいましたよ」
「なっ、いつの間に……」 
 そんな驚かれた顔をされてもな。
「いや、だから少し前からだって」
「おぉ、ネロ。遅かったではないか」
 全く、少しいなかったからって随分な事だ。言うてあんたらも途中からきたじゃないか。どの口がそんなことを言うんだか。
「久しぶりです。師匠」
「やめえやめえ、今じゃお主の方がレベルが高いんじゃ、儂は師匠ではなくなっとるわ」
 この場には不釣り合いな高らかな笑い声が広場に響き渡った。

「冒険者の日常」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く