冒険者の日常

アカツキ

やらなくてはいけないこと

「さて、武器と装備が揃ったところでやらなければいけないことが出てきます。アイシャ、なんでしょう?」
「……………………食事?」
 しばらく空いた静寂の時間。その後になんかすごい根本となる部分を突いた回答が返ってきた。でもそれって人間が生きてく上でやらなくてはいけないことであって今やるべき事ではないんだよな。
 それにさっきお昼を食べたでしょ……ね?
「うん、確かに大事だ。でもそうじゃなくて…………レベル上げだよレベル上げ」
 この都市で冒険者を生業もしていく中で一番大事なのはレベルだ。レベルによって受けられるクエストが変わってくるから、高ければ高いほどいいのだ。
 ちなみに冒険者にはレベルに応じたランクというものがある。1番上をSとしてS、A、B、C、D、E、Fの7段階がある。レベル1〜5がF、6~10がE、11~15がD、16~20がC、あとは10ずつ上がっていく、41以上はSランクになる。
「でも、そんなに簡単に上がらないでしょ?」
 そう、そう簡単に上がるなら苦労はしないしこの都市で僕だけがレベル52なんてことは無い。少なくともあと数人はいるはずだ。この都市で僕を抜いたとして1番レベルが高いのが双翼者デュアルウィンガーの二つ名を持つカサエラー。彼はレベル42の人間ヒューマンでこの都市で僕と並んで特別視されている冒険者だ。
 僕の倍あろうかという年齢にも関わらずダンジョンを縦横無尽に走り回り、目の前の敵を切り刻んでいた光景は今でもはっきりと思い出せる。過去には僕のパーティーと合同で何度か遠征に行ったりした仲だ。
 その次に高いのは猫獣人キャットピープルの3人組。全員がレベル38で、ユニオンキャッツというパーティーを組んでいる。そのパーティーが今、この都市で1番強いのだと思う。
「うん、普通ならね」
 そう、本当は苦労と経験によって少しずつ上げていってナンボのもの、それがレベルであってステータスだ。
「そう普通なら、まぁ常に例外って存在するものなんだよね。僕が持つスキルの効果で成長量を増加させられるんだ」
 そうして思うのがこのスキルは万能過ぎる、ということだ。それこそフルに使えばモンスターなど大して苦労せず殲滅せんめつさせることができるはずだ。なんと言ってもパーティーに丸ごと様々な付与バフを授けられるし、パーティーメンバーの経験値までも増加させるのだから。一応説明しておくと本来のスキルの効果は原則として1つ、多くても2つだ。そして1人の人に発現するスキルは最大3つ。
 このスキルはこの原則を根本から覆すものだ。
 まずこのスキル.『漆黒の夜空』がもたらす効果は大まかにして3つ、経験値の増加、自分及びそのパーティに対する付与、そして魔術攻撃の吸収及び無効化。そこから更にいくつかスキルが派生している。事実上1人が持てるスキル数を優に超すのだ。
「ま、それはさておき。草原に行こうか」
「ダンジョンに行くんじゃないんですか?」
「えーっと、ダンジョンはレベル11以上にならないと入れないんだよ……」
 これはギルドが設定した絶対不変のルールだ。実際ダンジョンのモンスターは強い。草原のモンスターと比較してもそれは歴然としている。
「ダンジョンのモンスターは強いんだ、1階層にいるモンスターでも草原のモンスターの何倍も強い」
 それこそレベル1で入ってしまえばまず生きては帰って来れないだろう。それくらいに強いのだ。
「だから草原でレベルを上げるのさ」
 正直な話僕がいれば大丈夫な気がするけど、ギルドの決め事を破ると面倒くさい。でも、アイシャがダンジョンに入れるのもそんなに先の話じゃないな。走って行く彼女の背中を見ながらそんなことを考えるのだった。

「冒険者の日常」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く