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冒険者の日常

アカツキ

新たなる試練 2

「サリーさん、なんでここに?」
 僕達に声をかけたのは、僕の下宿する宿の主でもある人だった。
「何簡単よ、依頼をしに来たのよ」
 確かにそうだよな。冒険者じゃない人がここに来るのはそれくらいしかない。
「サリーさん、突然で悪いんですがこの子を引き取ってあげてください」
 
 それは、10年前と同じ事だった。
 僕も両親がいなく、保護者と呼べる人がいなく、冒険者になれないと聞いた時、それは相当へこんだものだ。行くあてもないので食堂の席に座って時間を潰していた時だ。
「あんた、そんなに若いのに冒険者になりたいのかい?」
 冷やかしにでも来たのだろうか。でも、なんと言われても僕は冒険者になるしかないのだ。経歴なんかが必要なく、なおかつ簡単に稼げるこの仕事しかないのだ。
「……僕は冒険者になるしかないんです」
 その女性はため息をひとつ付きこう提案したのだ。
「あんたの保護者代理人になってあげる、代わりに私の宿に下宿しなさい」
 突然の提案に驚きが隠せなかった。これ以上ないほどの好条件だった。保護者の代理人を得られると同時に自分の住める場所まで得られるというのだ。少々上手くできすぎていると思わなかった訳では無い。でも目の前の女性が何かを企んでいる訳では無いのは僕ですら分かった。
「お願いします」
「はいね、でもいいね今日からあんたは私の子だ。絶対に死ぬんじゃないよ」
 
 そう、念を押されて僕は冒険者になったのだ。だから今の僕の親はサリーさんということになるし、サーニャちゃんは僕の妹ということになる。
「これまた突然だね、その子もネロちゃんと一緒なの?」
「はい、なので保護者の承認が必要なんです」
 僕が、と一瞬考えたのだが、年齢的に僕が彼女の親になることは出来ない。正確には法律でそう定められているのだ。男女が結婚できるのは20歳以上。つまり元から僕には親になる権利が現段階では無いのだ。
「いいけど、1つ条件があるわ。ネロ、彼女とパーティーを組みなさい。それが出来ないなら私も彼女の保護者になることはできない」
 それは衝撃だった。僕は、彼女とパーティーを組みたくはなかった。別に彼女のことが嫌いな訳では無いし、助けてあげたいのは確かだ。でも、それでも僕は誰かとパーティーを組むことは出来ない。
 リーナとルーシェ、ヤオラに向ける顔がない……いや、これが本当の理由じゃない、そう思わない訳では無いがそれはただの建前だ。
 本当は僕は怖いのだ。また大切だと思ったものを失ってしまうのが。
 だから僕はこの3年間パーティーを組まなかった、組めなかった。恐怖と戦うことを恐れ逃げていた。今でも怖い。やっぱり僕は強くなんかない、結局誰かに背中を押されなければ自分で歩き出すことなんてできない。そして背中を押してくれる人は僕が死なせてしまった。
「私とパーティーを組むのは嫌?」
 彼女の顔は目には不安が色濃く出ていた。僕がここで逃げれば、僕は一瞬だけでも楽になれるだろう。でも、そうしたら彼女はどうする。彼女は冒険者にはなれない。彼女の夢を僕が僕自身の勝手な自己満足で潰してしまうことになるのだ。
 そんなのダメだ。でも、僕はここで彼女とパーティーを組んでしまうとリーナ達のことをどうでもよかったと思われてしまいそうで嫌なのだ。僕はリーナ達に何も償えていない。
「ネロちゃん、リーナちゃんはあなたに苦しんで欲しくないからあなたを逃がしたんじゃないのかしら?」
「なんで、僕なんですか。僕じゃなくてもよかった……」
「きっとあなたにだけは生きてもしかったのよ」
「ここで僕がパーティーを組んだら彼女に彼女達に対する罪滅ぼしになるんでしょうか、彼女たちから逃げて忘れようとしているのではなくて……」
「ネロ、お前はもっと真っ直ぐな子だっじゃないか、いつからそんなにひねくれたんだい。言いたくはなかったけど、あんたはとっくにリーナちゃん達の真意に気づいているのだろ。彼女の気持ちに向き合いな」
 しっかりと芯の通った声でそう告げる。彼女達が僕を地上へ送ったのは、彼女達でそうしようと決めていたから、多分万が一に備えてそういうふうな対策を考えていたのだろう。
「それなら迷うことは無いんじゃないのかい?」

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