冒険者の日常
最高の仲間
  僕にとって初めてできた仲間が彼女らだった。
それは、もう夏の終わりだというのに残暑に悩まされていた日のギルドの食堂で起きた。
一人の少女が僕をパーティーに勧誘しにきたのだった。
「あの、私とパーティーを組みませんか?」
そう不安げに尋ねてきたリーナの顔は今でもしっかり覚えている。
その時の彼女は、冒険者になったばかり、とは言っても1、2ヶ月でたまたま一人でいた僕に話しかけたということだった。そして、この時からトライデントが結成された。ちなみにトライデントというパーティー名はリーナがつけたものだ。「絶対これにする」と言っていた、なんでかは分からないが。他にいい案があった訳でもないのでそのままトライデントというパーティー名に決定したわけだ。
後に、ルーシェとヤオラを含む四人のパーティーは程なくしてこの街最強へとなっていた。
***
一人の少年の慟哭がダンジョンの中を反響する。
僕は何もできなかった。何もすることなくして生き延びてしまった。僕の仲間は死んでしまった。
なんで? 
そんなの簡単だ、僕が弱いから。
 何が最高ランクの冒険者だ。自分のパーティー1つ守ることができないどころか僕が守られて……僕が最強だって? 聞いて呆れる。何もできてないじゃないか、何でのうのうと生きてるんだ。
たった1人のためにあいつらは、僕の大事な仲間は死んでいったのか。
「ふざけるなぁあ」
ダンジョンの床を殴りつける。殴った拳からは血が滲む。それでも何度も何度も床を殴りつける。
なんで、なんでなんでなんでなんで、僕は何をしてるんだよ。もっとできることがあっただろ。もっとできただろ……僕は決して最強なんかじゃない。むしろあのパーティーの中で一番弱かったのかもしれない。もっと僕に力を振るえる勇気があれば……
程なくしてネロは意識を失った。
***
「……僕は、僕は……」
時々見る夢は決まって3年前のことだ。今でも鮮明に思い出せるあの時の気持ち、3年経っても僕はあの事件から立ち直れていなかった。みんなには普通に振舞っているつもりだが、やはり自分は騙せない。
いつの間にか3年という月日が流れやりきれなかったという後悔が僕の中を蝕み続ける。今からでも過去へ戻ってやり直したい。そう、何度も思った、戻らしてくれと願った。当然戻れるわけがないでも、僕にはどうすればいいかなんてもう分からなかった。でもそれが僕のしたことの代償なのだ。
ここで生きていくことこそが彼女達に対する罪滅ぼしなのだろう。
「でもやっぱり、悔しいよ……リーナ」
どうして君は僕をテレポートしたのか。結局それは分からずじまいだ。どう足掻いてももう答えを聞くことは叶わない。
コンコン
ドアをノックする音がした。
「ネロ、起きてる? 入るわね」
サーニャだ。彼女はこの宿屋の女将の子だ。彼女はいつも僕を起こしに来てくれる。とはいっても大抵決まった時間に起きれる体だから起きれるので必要ないのだが彼女は毎日欠かさずここへ来る。
「おはよう、ネロ」
「あぁ、おはよう」
彼女は僕の顔を見て顔を歪めた。
これもこの夢を見たあとの決まった光景だ。
「……また、あの夢を見ていたの?」
「あぁ」
多分いや、絶対に僕の頬には涙の跡がついているのだろう。
彼女は優しい子だ。とくに他人を思いやることに長けている。その優しさで僕も何度も救われている。
「でも、大丈夫だ。慣れたから」
下手くそな嘘だった。自分でもわかるほど声は震えていたし何より気づかないうちにまた泣いていたのだ。説得力は皆無だった。こうしている間にも涙は流れている。1度関を切った涙はなかなか止まってくれない。
「顔洗ってくる」
そう告げて洗面所へと逃げ込んだ。
それは、もう夏の終わりだというのに残暑に悩まされていた日のギルドの食堂で起きた。
一人の少女が僕をパーティーに勧誘しにきたのだった。
「あの、私とパーティーを組みませんか?」
そう不安げに尋ねてきたリーナの顔は今でもしっかり覚えている。
その時の彼女は、冒険者になったばかり、とは言っても1、2ヶ月でたまたま一人でいた僕に話しかけたということだった。そして、この時からトライデントが結成された。ちなみにトライデントというパーティー名はリーナがつけたものだ。「絶対これにする」と言っていた、なんでかは分からないが。他にいい案があった訳でもないのでそのままトライデントというパーティー名に決定したわけだ。
後に、ルーシェとヤオラを含む四人のパーティーは程なくしてこの街最強へとなっていた。
***
一人の少年の慟哭がダンジョンの中を反響する。
僕は何もできなかった。何もすることなくして生き延びてしまった。僕の仲間は死んでしまった。
なんで? 
そんなの簡単だ、僕が弱いから。
 何が最高ランクの冒険者だ。自分のパーティー1つ守ることができないどころか僕が守られて……僕が最強だって? 聞いて呆れる。何もできてないじゃないか、何でのうのうと生きてるんだ。
たった1人のためにあいつらは、僕の大事な仲間は死んでいったのか。
「ふざけるなぁあ」
ダンジョンの床を殴りつける。殴った拳からは血が滲む。それでも何度も何度も床を殴りつける。
なんで、なんでなんでなんでなんで、僕は何をしてるんだよ。もっとできることがあっただろ。もっとできただろ……僕は決して最強なんかじゃない。むしろあのパーティーの中で一番弱かったのかもしれない。もっと僕に力を振るえる勇気があれば……
程なくしてネロは意識を失った。
***
「……僕は、僕は……」
時々見る夢は決まって3年前のことだ。今でも鮮明に思い出せるあの時の気持ち、3年経っても僕はあの事件から立ち直れていなかった。みんなには普通に振舞っているつもりだが、やはり自分は騙せない。
いつの間にか3年という月日が流れやりきれなかったという後悔が僕の中を蝕み続ける。今からでも過去へ戻ってやり直したい。そう、何度も思った、戻らしてくれと願った。当然戻れるわけがないでも、僕にはどうすればいいかなんてもう分からなかった。でもそれが僕のしたことの代償なのだ。
ここで生きていくことこそが彼女達に対する罪滅ぼしなのだろう。
「でもやっぱり、悔しいよ……リーナ」
どうして君は僕をテレポートしたのか。結局それは分からずじまいだ。どう足掻いてももう答えを聞くことは叶わない。
コンコン
ドアをノックする音がした。
「ネロ、起きてる? 入るわね」
サーニャだ。彼女はこの宿屋の女将の子だ。彼女はいつも僕を起こしに来てくれる。とはいっても大抵決まった時間に起きれる体だから起きれるので必要ないのだが彼女は毎日欠かさずここへ来る。
「おはよう、ネロ」
「あぁ、おはよう」
彼女は僕の顔を見て顔を歪めた。
これもこの夢を見たあとの決まった光景だ。
「……また、あの夢を見ていたの?」
「あぁ」
多分いや、絶対に僕の頬には涙の跡がついているのだろう。
彼女は優しい子だ。とくに他人を思いやることに長けている。その優しさで僕も何度も救われている。
「でも、大丈夫だ。慣れたから」
下手くそな嘘だった。自分でもわかるほど声は震えていたし何より気づかないうちにまた泣いていたのだ。説得力は皆無だった。こうしている間にも涙は流れている。1度関を切った涙はなかなか止まってくれない。
「顔洗ってくる」
そう告げて洗面所へと逃げ込んだ。
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