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冒険者の日常

アカツキ

最悪の災厄 2

 状況は一進一退を繰り返す。決してこちらの攻撃が入っていないわけでもない、それなりに手傷は負わせている。
「物凄い体力をしてやがる……」
 それに、どうも回復の形跡がある。恐らくモンスターの自己再生能力、それもかなり強力で半永続的なもの。
 このままではジリ貧だ。この状況を打破する何か、何かが必要だ、頭を回せ。なんでもいい、この状況をどうにかできないのか。
「理……それを捻じ曲げる……万物浄土……強制……」
「はっ、まずい。リーナ、魔術障壁」
 僕らの一瞬の隙をつき敵が魔術を展開しようとする。
詠唱省略オミット、我に応え我の力としてその力を解放せよ、アブソリュートバリア」
 詠唱省略、その魔術に対して完全完璧に上限に達した者しか使えない、一種の才能だ。
「みんな、私の後ろに盾の後ろに入って」
 それとほぼ同時に
「……焼き払え、ヘルインフェルノ」
 敵の魔術が完成した。
「究極魔術……これじゃ足りない、それは万物に通ずる森羅万象、しかしてその理の中に収まらない凶悪な力に抗う力を我は欲する。終焉の瞬間ときに万物は巡り巡りて天へ還り、再び我の前に現れる。かの絶対的な力の根源は醜悪しゅうあくそのものにして、理から外れ道理に反するが故にその力を打ち消すべし、ラップスマジック」
 迫り来る炎の塊は針に刺された風船のような音を立てて消滅した。
『ラップスマジック』
 この街で、今の魔術を使えるものはリーナと他に1人しかいない、魔術そのものをなかったものとして消滅させる魔術。どんな魔術に対しても有効で、その力は壮絶だがそのために消費する精神力もそれ相応のものだ。現在のリーナでも3回が限界だ、この街1番の魔術師でもそれだけしか使えないいわば起死回生の一手、逆転の可能性なのだ。
「な……なんとか止めた、今のうちに……」
「……我が力の根源たるもの、今こそその力を解放せよ」
 それは、『漆黒の夜空』を発動させる詠唱。
 基本的なアビリティが上昇するのを確かに感じ取る。
「貴様もこの力のいしずえとなるがいい……」
 ただ、このスキルの弱点がスキルを発動させると恐怖とかそういった感情が一切なくなってしまうこと。そして人格が変わること……
 だから、ここぞという時しか使わない。自分のことが自分ではないような感覚の中、繰り出される僕の愛剣、その剣は少しずつ敵を傷つけていく、剣戟の速度は徐々に早く早く加速する。
「……まだか、まだやるのかァァァ!!」
 そんな僕の叫びにモンスターが一瞬怯む。今しかない。
「今だ……仕掛けろ」
 間髪入れずにヤオラの飛び道具が飛来する、それと同時にルーシェの放つ正確無比な矢が敵へと突き刺さる。
「グアァァァ……」
 なにか障壁のようなものが砕けた。キラキラと光に反射して崩れ落ちる。モンスターが苦痛にも似た声を上げる。
(これで終わりだ)

 ガキィィィン

 次の瞬間僕は吹き飛ばされた。空中での必死の防御では到底攻撃を受け流し切ることはできなかった。
「ぐっ……どこにそんな力が……」
 本当に一瞬だった、攻撃をしようとしたのに対して敵が何か振りかぶった。咄嗟とっさの判断で攻撃転じていた剣を引き寄せ防御態勢をとった。直後に衝撃が剣を伝って僕を吹き飛ばした。
「……さすがはモンスター、そういった感覚は鋭いのだな」
「いけません、ネロ」
 敵が振った剣によって血が飛び散る。でも痛みはいつまでたっても襲ってこなかった。
 僕のスキルが効果を失う、それと同時に僕の前でヤオラが倒れた。彼が必死に僕をかばったのだ、彼は肩から腹にかけて確かに剣が通った跡があった。そこからとめどなく生暖かい血が流れ続ける。
「……なんで、僕ならあれくらいの剣撃受け流せる……なんで」
 ヤオラの手が次の言葉を遮る。
「体が勝手に動いたのです。何か止めなければ嫌な予感がしたんです、ネロ一旦ここから引き返してください」
「お前は……」
「ここに残って足止めをします」
 無茶苦茶だ。その怪我で何ができるというのだ。
「そんな傷じゃ無理だ、お前も来い」
「仕方ありませんね……リーナ」
 ヤオラがリーナに呼びかける。それは何かの合図だった。
「我に応え我の力としてその力を解放せよ、テレポート」
 視界はは白い光で包み込まれた。

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