魔王軍に勝てないのは主人公補正が足りないから
第57回魔王軍対策会議
「それでは第57回魔王軍対策会議を始めます。司会は僕、ショウジ・タカナシが務めさせていただきます」
ぱちぱちぱち……
仲間たちのおざなりな拍手が室内に響く
ここは王都の貴族街にある会員制レストランの個室。貴族が密談や交渉に使うこともあり、部屋には高度な防音結界が張られている。また、従業員も店内で見聞きしたことを他人に漏らせないよう全員が魔術契約しているという念の入れよう。
僕達の魔王軍対策が相手に漏れてしまうと本末転倒なので、会議は基本的にここで行うことにしている。断じて会議にかこつけて超高価で超美味な飯を食べに来ているわけではない。店員が全員美人なお姉さんなのも全く関係ない。
明るい室内の円卓を囲むパーティーメンバーの7人それぞれが料理を受け取り会議が始まる
「えー、前回の会議結果を踏まえ聖属性武器の強化を最優先に行いまして、無事『不死者の洞窟』のボス『永遠なるエルダー・リッチ』を討伐することができました。しかしながらその後に挑戦した四天王最弱と名高い『風のウィンダム』には苦戦を強いられ、誠に残念ながら全滅という結果になってしまいました。そこで今回は『風のウィンダム』対策について話し合いたいと思います。意見のある方は、挙手は必要ありませんので積極的に発言をお願いします」
「で、では私から」
おずおずと話し始めた瓶底眼鏡のバーコード白髪頭は大魔道士のエルヴィンだ
「と、取り敢えず、レベルを上げてさ、再戦、というのがぶ、ぶ、無難では?」
即座に聖騎士グラハムがチビ、デブ、禿、髭のビジュアルに相応しい野太い声を上げる
「儂はそうは思わん。そもそも儂らのレベルは既に90を超えているのだぞ?限界の100まで上げたところで焼け石に水だろう」
「ならば装備の強化を図ってみてはいかがですかな?」
穏やかな声で発言したのは怪しげな仙人髭でどこかくたびれた空気を持つ軽業師のセバス
「それは難しいじゃろう。みなもう伝説級の装備で全身固めて、例えドワーフの全技術、全資材を投入してもいいとこ同程度。これ以上となったら神話級の装備をどっかのダンジョンから発掘してくるしかないかアテもないのじゃろ?賭けてもいいが全員分の神話級装備が揃う前に寿命が尽きるわ。それ以前のもっと早い段階で魔王軍の世界征服が終わっとるじゃろうがの」
ドワーフ国の王女であり、豪戦士のミリアリア・アイア・ナミアリア・ズィンフラム・カップ・ゴル・ブロームナム・セシム・ウンウンオクチが、手入れの行き届いた髭をみつ編みにしながら駄目出しをする
「キントレ、スレバ、イイ」
自慢の胸筋をピクピクさせながら片言で話すのは同じく豪戦士のフィーネ。筋骨隆々の鋼の肉体に、鼻輪の付いた牛頭、ミノタウロス族の女戦士だ
「フィーネ、何でも筋肉で解決しようとするの、やめなさいよ」
笑いながら言うのは魔女のハナコ・ワタヌキ。黒髪黒目のどこにでもいる平均的な女子高生、僕と同じ転移者だ。
「さて、全員1回ずつ発言したところで、名前と容姿の紹介ができました。通常の手段では打開できない事もサラッと示せました。実にスムーズでいい具合です」
「それの何処がいいのだ。それと誰に紹介したのか訳がわからん」
不満顔でグラハムが呟き鼻を鳴らす
「失礼。ちゃんと順を追って話さないと意味がわかりませんよね。それではまず、今日僕とハナコが新しい異世界スキルを覚えましたね」
「リ、リ、リッチを倒したあ、後にそ、そ、そんなことを言っていた」
「その新しいスキルがショーギョーテキリユーとオトナノジジョーです」
「スキル名からでは効果が全く想像できませんな」
「簡単に説明すれば僕の異世界スキルショーギョーテキリユーは僕達が元いた世界の日本で小説やアニメとして売れそうな設定、見た目、言動にすれば主人公補正が付いて戦力大幅アップ、というパッシブスキルですね。ありがちな鉄板ネタ使い古されたネタでも十分強くなります」
「ハナコのオトナノジジョーのほうはどうなのじゃ?」
「それは私が自分で説明しようか。オトナノジジョーは私達のキャラクター設定を変更できるアクティブスキル。これでショーギョーテキリユーを効果的に活かせるってことね。元のキャラクター設定を多少残しておかないと発動しないけど、後付設定、過去の設定無視もかなり柔軟にできるわ」
現地組の仲間たち5人がざわつく
「それは神の領域に踏み込むことにならんか。聖騎士の端くれとしてそれは少し、いや、かなり抵抗があるぞ」
「ワレノ、キンニク、フヤセル?」
「増やしません。それとグラハム、一応私達神様に呼ばれてこの世界に転移してきてるし、異世界スキルも神様から与えられたものなのよ。ということは神様公認ってことじゃない?」
「む、そうか。ならば問題ない…のか?」
「ないでしょ。だいじょーぶ、だいじょーぶ」
なにやらグラハムがあっさり丸め込まれているのは置いておいて、きちんと確認して置かなくてはいけないことがある
「神様の気持ちより、最大の問題は皆さんの気持ちですよ」
「どういう意味ですかな?」
「僕のショーギョーテキリユーを活かすためには皆さんの容姿も、職業も、その他個性と呼ばれるものを大幅にいじることになります。オトナノジジョーによるキャラクター設定変更後は半分、いや、8割がた別人になってしまうでしよう。魔王を倒すためとはいえ耐えられますか?」
「そうだわ、新しいスキルが手に入ってはしゃぎ過ぎたみたい。そんな根本的なことを見落とすなんて。ごめん、みんな。オトナノジジョーのことはいったん忘れて別の方法を考えましょう」
ハナコの目に涙が浮かんでいる。仲間の気持ちを考ていなかった自分に気付きショックをうけているのだろう。普段から脳天気なハナコも流石に堪えたようだ
「何を言っとる。他の全てが変えられようとも儂の信仰心は決して変わらん。そしてその信仰心があれば儂は生きていけるし戦える」
「わ、私は魔道にい、い、いろいろ捧げてきましたし、いまさらです」
「ワタクシも問題ありませんな。亡き妻の忘れ形見、最愛の娘の為に何としても世界に平和を取り戻さなければいけませんからな」
「妾もドワーフ国の王女として、国と民のためならばこの身がどうなろうと構わんのじゃ」
「ツヨクナル、ナンデモイイ」
「謝るのはハナコじゃなく僕のほうだったみたいですね。すみませんでした。皆さんの覚悟がそれ程とは」
頭を下げ仲間に謝るが、それを手を振って遮るのはミリアリア・アイア・ナミアリア・ズィンフラム・カップ・ゴル・ブロームナム・セシム・ウンウンオクチだ
「よいのじゃ、それよりも皆の気持ちが解ったところでどうするのかの?どうやって『風のウィンダム』に勝つつもりなのじゃ」
「そうだな、ショーギョーテキリユーとオトナノジジョーを併せれば戦力強化できるのは解ったが、そもそも儂らには日本で売れそうな設定とやらが全くわからん」
グラハムが溜息を吐きながら首を振る
「その点は幸い僕もハナコもオタク寄りの人間ですから任せてください。多少古いものやマイナーなものも混ざってしまうでしょうが問題ありません」
「そうね。問題はどう設定変更するかじゃなく、誰を設定変更するかよ。まだスキルを覚えたばかりだから1人が限度なの」
皆が少し考え込み、それぞれの意見を述べる
「む、全員強化はできぬのかの。ならば強化するのはエルヴィンしかおるまいの」
「そうなるでしょうな。『風のウィンダム』は素早い動きに加えて空を飛びますからな。一番身軽な私でさえ近接攻撃を当てるのは至難の業です」
「四天王ともなれば最弱といえども各種耐性は相当高い。状態異常中心の魔女では分が悪いから、エルヴィンの高火力魔法で叩き落として儂らでタコ殴るのが正解か」
「ワレ、ツヨクナリタイ」
「た、た、確かに私が適任のようです」
「ワレ、ツヨクナリタイ」
どうやら1名を除いて全員の意見が一致しているようだ
「必ずフィーネも強くするから、今回はごめんね。それじゃエルヴィンをどう変えていきましょうか」
「まずは髪型からですね。バーコードで人気キャラはなかなか難しい」
「じゃあまずは毛量を増やして、と」
ハナコが自分の目の前の空間にタッチするような仕草と同時にエルヴィンの頭から猛烈な勢いで髪が生えてくる。新しく生えた髪は、元々あった髪と同じ長さまで伸びるとそこでとまる。
「うわっ髪長っ!ってそうかバーコードって意外と長いからロン毛属性ついてたんだね。取り敢えず私の髪ゴム貸してあげるから括っといて」
ポケットから予備の髪ゴムを取り出しエルヴィンに渡すハナコ
「次はやっぱり眼鏡かな。眼鏡無しにするのはコスト嵩むからレンズ薄くしてフレーム換えてって感じで。じゃあエルヴィンの顔に合いそうなフレーム考えるから眼鏡外して顔見せてね」
髪ゴムを渡すついで、とばかりにエルヴィンの眼鏡に手を伸ばす
「瓶底眼鏡のせいでエルヴィンの顔って今まででちゃんと見れたことないからねー…ってぎゃあああぁぁぁ」
それまで遠巻きに眺めて仲間からミリアリア・アイア・ナミアリア・ズィンフラム・カップ・ゴル・ブロームナム・セシム・ウンウンオクチが素早く飛び出しハナコの横に駆け込む
「どうしたのじゃハナコ…うっきゃあああぁぁぁ」
普段の落ち着いた物腰からは考えられない奇声をあげる様に、慌てて様子を見に行くが2人が邪魔でエルヴィンの顔が見えない
「超イケメンだった」
「エルヴィン、お主途轍もない美形じゃったのか」
ショックを受けたように後ずさる2人の間から覗くとそこにはとんでもない美中年が戸惑うようにして立っていた
「これは…嬉しい誤算ですね。この顔を出すだけで戦力4倍くらいは期待できる」
「そうね。目付きは少しきついけど文句無しのイケメンだわ」
ひとしきり騒いで落ち着いたのか、ハナコはまじまじとエルヴィンの顔を観察している
「この顔なら眼鏡はフレームレスが鉄板かしら」
「確かに、フレームレスで鬼畜眼鏡路線が無難でしょう。髪の長さはこのままで、髪色も白から変更無しでいけそうです。それと読者が読みにくいでしょうから吃音は無くしちゃいましょう」
「はいはい、おっけー。後は美中年より美青年のほうが私の好みだから20くらい若くしてっと」
「自分の欲望に忠実すぎです。って全然変わってないみたいですが?」
ああ、と何かに気づいたようにエルヴィンが口を開く
「あ、私エルフなので。こう見えても400歳なんですよ。なので20くらい若返っても見た目はさして変わらないと思います」
「え、エルヴィ、エルフ?でも、耳?」
あまりの驚きに声がでない
「ああ、私エルフの割に耳短いんですよね。でもほら、先がちょっとだけ尖ってるでしょ?あ、ついでにかっこいい感じでシュッと長い耳にできません?それとハナコさん、あと200歳くらい若返らせてもらえ青年くらいの見た目になると思うのでよろしくお願いします。これで強くなれるなんて夢のようですね」
衝撃的な事実が判明したエルヴィン改造計画、終了
ぱちぱちぱち……
仲間たちのおざなりな拍手が室内に響く
ここは王都の貴族街にある会員制レストランの個室。貴族が密談や交渉に使うこともあり、部屋には高度な防音結界が張られている。また、従業員も店内で見聞きしたことを他人に漏らせないよう全員が魔術契約しているという念の入れよう。
僕達の魔王軍対策が相手に漏れてしまうと本末転倒なので、会議は基本的にここで行うことにしている。断じて会議にかこつけて超高価で超美味な飯を食べに来ているわけではない。店員が全員美人なお姉さんなのも全く関係ない。
明るい室内の円卓を囲むパーティーメンバーの7人それぞれが料理を受け取り会議が始まる
「えー、前回の会議結果を踏まえ聖属性武器の強化を最優先に行いまして、無事『不死者の洞窟』のボス『永遠なるエルダー・リッチ』を討伐することができました。しかしながらその後に挑戦した四天王最弱と名高い『風のウィンダム』には苦戦を強いられ、誠に残念ながら全滅という結果になってしまいました。そこで今回は『風のウィンダム』対策について話し合いたいと思います。意見のある方は、挙手は必要ありませんので積極的に発言をお願いします」
「で、では私から」
おずおずと話し始めた瓶底眼鏡のバーコード白髪頭は大魔道士のエルヴィンだ
「と、取り敢えず、レベルを上げてさ、再戦、というのがぶ、ぶ、無難では?」
即座に聖騎士グラハムがチビ、デブ、禿、髭のビジュアルに相応しい野太い声を上げる
「儂はそうは思わん。そもそも儂らのレベルは既に90を超えているのだぞ?限界の100まで上げたところで焼け石に水だろう」
「ならば装備の強化を図ってみてはいかがですかな?」
穏やかな声で発言したのは怪しげな仙人髭でどこかくたびれた空気を持つ軽業師のセバス
「それは難しいじゃろう。みなもう伝説級の装備で全身固めて、例えドワーフの全技術、全資材を投入してもいいとこ同程度。これ以上となったら神話級の装備をどっかのダンジョンから発掘してくるしかないかアテもないのじゃろ?賭けてもいいが全員分の神話級装備が揃う前に寿命が尽きるわ。それ以前のもっと早い段階で魔王軍の世界征服が終わっとるじゃろうがの」
ドワーフ国の王女であり、豪戦士のミリアリア・アイア・ナミアリア・ズィンフラム・カップ・ゴル・ブロームナム・セシム・ウンウンオクチが、手入れの行き届いた髭をみつ編みにしながら駄目出しをする
「キントレ、スレバ、イイ」
自慢の胸筋をピクピクさせながら片言で話すのは同じく豪戦士のフィーネ。筋骨隆々の鋼の肉体に、鼻輪の付いた牛頭、ミノタウロス族の女戦士だ
「フィーネ、何でも筋肉で解決しようとするの、やめなさいよ」
笑いながら言うのは魔女のハナコ・ワタヌキ。黒髪黒目のどこにでもいる平均的な女子高生、僕と同じ転移者だ。
「さて、全員1回ずつ発言したところで、名前と容姿の紹介ができました。通常の手段では打開できない事もサラッと示せました。実にスムーズでいい具合です」
「それの何処がいいのだ。それと誰に紹介したのか訳がわからん」
不満顔でグラハムが呟き鼻を鳴らす
「失礼。ちゃんと順を追って話さないと意味がわかりませんよね。それではまず、今日僕とハナコが新しい異世界スキルを覚えましたね」
「リ、リ、リッチを倒したあ、後にそ、そ、そんなことを言っていた」
「その新しいスキルがショーギョーテキリユーとオトナノジジョーです」
「スキル名からでは効果が全く想像できませんな」
「簡単に説明すれば僕の異世界スキルショーギョーテキリユーは僕達が元いた世界の日本で小説やアニメとして売れそうな設定、見た目、言動にすれば主人公補正が付いて戦力大幅アップ、というパッシブスキルですね。ありがちな鉄板ネタ使い古されたネタでも十分強くなります」
「ハナコのオトナノジジョーのほうはどうなのじゃ?」
「それは私が自分で説明しようか。オトナノジジョーは私達のキャラクター設定を変更できるアクティブスキル。これでショーギョーテキリユーを効果的に活かせるってことね。元のキャラクター設定を多少残しておかないと発動しないけど、後付設定、過去の設定無視もかなり柔軟にできるわ」
現地組の仲間たち5人がざわつく
「それは神の領域に踏み込むことにならんか。聖騎士の端くれとしてそれは少し、いや、かなり抵抗があるぞ」
「ワレノ、キンニク、フヤセル?」
「増やしません。それとグラハム、一応私達神様に呼ばれてこの世界に転移してきてるし、異世界スキルも神様から与えられたものなのよ。ということは神様公認ってことじゃない?」
「む、そうか。ならば問題ない…のか?」
「ないでしょ。だいじょーぶ、だいじょーぶ」
なにやらグラハムがあっさり丸め込まれているのは置いておいて、きちんと確認して置かなくてはいけないことがある
「神様の気持ちより、最大の問題は皆さんの気持ちですよ」
「どういう意味ですかな?」
「僕のショーギョーテキリユーを活かすためには皆さんの容姿も、職業も、その他個性と呼ばれるものを大幅にいじることになります。オトナノジジョーによるキャラクター設定変更後は半分、いや、8割がた別人になってしまうでしよう。魔王を倒すためとはいえ耐えられますか?」
「そうだわ、新しいスキルが手に入ってはしゃぎ過ぎたみたい。そんな根本的なことを見落とすなんて。ごめん、みんな。オトナノジジョーのことはいったん忘れて別の方法を考えましょう」
ハナコの目に涙が浮かんでいる。仲間の気持ちを考ていなかった自分に気付きショックをうけているのだろう。普段から脳天気なハナコも流石に堪えたようだ
「何を言っとる。他の全てが変えられようとも儂の信仰心は決して変わらん。そしてその信仰心があれば儂は生きていけるし戦える」
「わ、私は魔道にい、い、いろいろ捧げてきましたし、いまさらです」
「ワタクシも問題ありませんな。亡き妻の忘れ形見、最愛の娘の為に何としても世界に平和を取り戻さなければいけませんからな」
「妾もドワーフ国の王女として、国と民のためならばこの身がどうなろうと構わんのじゃ」
「ツヨクナル、ナンデモイイ」
「謝るのはハナコじゃなく僕のほうだったみたいですね。すみませんでした。皆さんの覚悟がそれ程とは」
頭を下げ仲間に謝るが、それを手を振って遮るのはミリアリア・アイア・ナミアリア・ズィンフラム・カップ・ゴル・ブロームナム・セシム・ウンウンオクチだ
「よいのじゃ、それよりも皆の気持ちが解ったところでどうするのかの?どうやって『風のウィンダム』に勝つつもりなのじゃ」
「そうだな、ショーギョーテキリユーとオトナノジジョーを併せれば戦力強化できるのは解ったが、そもそも儂らには日本で売れそうな設定とやらが全くわからん」
グラハムが溜息を吐きながら首を振る
「その点は幸い僕もハナコもオタク寄りの人間ですから任せてください。多少古いものやマイナーなものも混ざってしまうでしょうが問題ありません」
「そうね。問題はどう設定変更するかじゃなく、誰を設定変更するかよ。まだスキルを覚えたばかりだから1人が限度なの」
皆が少し考え込み、それぞれの意見を述べる
「む、全員強化はできぬのかの。ならば強化するのはエルヴィンしかおるまいの」
「そうなるでしょうな。『風のウィンダム』は素早い動きに加えて空を飛びますからな。一番身軽な私でさえ近接攻撃を当てるのは至難の業です」
「四天王ともなれば最弱といえども各種耐性は相当高い。状態異常中心の魔女では分が悪いから、エルヴィンの高火力魔法で叩き落として儂らでタコ殴るのが正解か」
「ワレ、ツヨクナリタイ」
「た、た、確かに私が適任のようです」
「ワレ、ツヨクナリタイ」
どうやら1名を除いて全員の意見が一致しているようだ
「必ずフィーネも強くするから、今回はごめんね。それじゃエルヴィンをどう変えていきましょうか」
「まずは髪型からですね。バーコードで人気キャラはなかなか難しい」
「じゃあまずは毛量を増やして、と」
ハナコが自分の目の前の空間にタッチするような仕草と同時にエルヴィンの頭から猛烈な勢いで髪が生えてくる。新しく生えた髪は、元々あった髪と同じ長さまで伸びるとそこでとまる。
「うわっ髪長っ!ってそうかバーコードって意外と長いからロン毛属性ついてたんだね。取り敢えず私の髪ゴム貸してあげるから括っといて」
ポケットから予備の髪ゴムを取り出しエルヴィンに渡すハナコ
「次はやっぱり眼鏡かな。眼鏡無しにするのはコスト嵩むからレンズ薄くしてフレーム換えてって感じで。じゃあエルヴィンの顔に合いそうなフレーム考えるから眼鏡外して顔見せてね」
髪ゴムを渡すついで、とばかりにエルヴィンの眼鏡に手を伸ばす
「瓶底眼鏡のせいでエルヴィンの顔って今まででちゃんと見れたことないからねー…ってぎゃあああぁぁぁ」
それまで遠巻きに眺めて仲間からミリアリア・アイア・ナミアリア・ズィンフラム・カップ・ゴル・ブロームナム・セシム・ウンウンオクチが素早く飛び出しハナコの横に駆け込む
「どうしたのじゃハナコ…うっきゃあああぁぁぁ」
普段の落ち着いた物腰からは考えられない奇声をあげる様に、慌てて様子を見に行くが2人が邪魔でエルヴィンの顔が見えない
「超イケメンだった」
「エルヴィン、お主途轍もない美形じゃったのか」
ショックを受けたように後ずさる2人の間から覗くとそこにはとんでもない美中年が戸惑うようにして立っていた
「これは…嬉しい誤算ですね。この顔を出すだけで戦力4倍くらいは期待できる」
「そうね。目付きは少しきついけど文句無しのイケメンだわ」
ひとしきり騒いで落ち着いたのか、ハナコはまじまじとエルヴィンの顔を観察している
「この顔なら眼鏡はフレームレスが鉄板かしら」
「確かに、フレームレスで鬼畜眼鏡路線が無難でしょう。髪の長さはこのままで、髪色も白から変更無しでいけそうです。それと読者が読みにくいでしょうから吃音は無くしちゃいましょう」
「はいはい、おっけー。後は美中年より美青年のほうが私の好みだから20くらい若くしてっと」
「自分の欲望に忠実すぎです。って全然変わってないみたいですが?」
ああ、と何かに気づいたようにエルヴィンが口を開く
「あ、私エルフなので。こう見えても400歳なんですよ。なので20くらい若返っても見た目はさして変わらないと思います」
「え、エルヴィ、エルフ?でも、耳?」
あまりの驚きに声がでない
「ああ、私エルフの割に耳短いんですよね。でもほら、先がちょっとだけ尖ってるでしょ?あ、ついでにかっこいい感じでシュッと長い耳にできません?それとハナコさん、あと200歳くらい若返らせてもらえ青年くらいの見た目になると思うのでよろしくお願いします。これで強くなれるなんて夢のようですね」
衝撃的な事実が判明したエルヴィン改造計画、終了
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