無能な村人〜異世界でも強く生きていく〜(旧:〜役立たずの転生者〜)
第七話 村長の実力
少し太陽の光が届き薄っすらと明るい森の中に影が四つ。否、五つあった。
「カ、カイル君!た、たたた大変ですっ!」
カイルの取り巻きの一人が背後から不気味な視線を感じ振り向くと、数十メートル先にゴブリンの姿があった。
「くそっ、アレンのやつ何してんだ!」
ゴブリンが追い駆けてきてることに対して、嫌な顔をしているカイルに続けて、
「ね、ねぇ、ゴブリンがここにいるってとはアレン君は、もしかして……」
アレンを案じ顔を曇らせるミーナ。
「今はアレンのことよりも自分の心配をするべきです。集合場所に着くまでにゴブリンに捕まれば、僕たち終わりですよ」
「あ、あぁ、そうだな。兎に角、全速力で走るぞ! あと少しのはずだ」
集合場所に向けて全力疾走してはいるが、まだ年端もいかぬ子供である。その上、カイルはミーナを抱えた状態だ。ゴブリンとカイルたちの距離は少しずつではあるが、着実に縮んでいる。
「カ、カイル君! な、何かこっちに飛んできます!」
ゴブリンは手に握りしめていた肉を放り投げる。
カイルたちに命中はしなかったものの、恐怖を与えるには十分な効果であった。
『ドサッ』
「うっ」
「おい! 大丈夫か!? 立てるか?」
カイルはミーナを下ろし、引き起こそうと手を差し伸べる。
「す、すみません。足が縺れました」
「きゃあ! 皆、うしろ!」
ミーナの声に反応して、皆一斉に振り向くと、カイルたちのすぐそばまでゴブリンが迫っていた。
「くらえっ! さぁ、今のうちです。あそこを抜ければ着くはずです」
「ギャアアアッ!!」
背後からカイルを襲おうとしていたゴブリンであったが、土を満面に投げつけられ目に入ったのかその場でもがき呻き出した。
「ありがとう、助かったぜ」
◆◇◆◇◆◇
「……ハァハァ、やっと抜けた」
少し薄暗かった森を抜けると、木々などなく開けた場所に到着した。自由行動後の集合場所である。そこには少しの子供たちと母親、カイルの父の村長がいた。
「ん? どうしたんじゃ? そんなに息を切らして」
「親父、ゴブリンだ! ゴブリンが追っかけてきてるんだ!」
「なにっ!? ゴブリンじゃと……、どうやら本当らしいの」
村長がカイルたちが出てきたところを見つめていると、一体のゴブリンが出てきた。
「みんな、下がっておれ」
「なっ、一人で戦う気かよ。大の男三人がかりで倒せるって聞いたぞ」
「ほぉ、よく知っておるの。しかし、何事にも例外はあるんじゃよ」
村長はそう言うと右手を広げゴブリンに向けると、【エアカッター】と唱えた。
すると、空気が圧縮し刃のようになると、ゴブリンに向かって飛んでいき、ゴブリンの首をはねた。
「な、何? 今の」
「すっげー」
「魔法じゃよ。私たち知能が高い生き物は生まれながらに量は異なるが魔力というのを持っておるんじゃ。魔力の量が多い者はああいうこともできるんじゃ」
「今度教えてくれよ!」
「あぁ、今度な。ん? ところで、アレンの姿が見えんようじゃが」
アレンの話題になったことで、カイルとその取り巻き二人はイタズラが見つかった子供のようにお互いの顔を見て目を合わせる。
「そ、それが……、ゴブリンに見つかった時にアレン君一人残って私たちを逃がしてくれたんです」
村長にアレンのことを説明するミーナ。そのミーナの表情は今にも泣き出しそうである。
「なんじゃと、カイル! 何故それを早く言わん。アレンとはどこで別れたじゃ」
「ここを真っ直ぐにいったとこで──」
村長はカイルの言葉を最後まで聞かずアレンがいると思われるところまで全速力で走っていった。
いつも読んで下さりありがとうございます。
はい、今回はゴブリンから逃げていったミーナちゃんたちのお話です。
次回もよろしくお願い致します。
「カ、カイル君!た、たたた大変ですっ!」
カイルの取り巻きの一人が背後から不気味な視線を感じ振り向くと、数十メートル先にゴブリンの姿があった。
「くそっ、アレンのやつ何してんだ!」
ゴブリンが追い駆けてきてることに対して、嫌な顔をしているカイルに続けて、
「ね、ねぇ、ゴブリンがここにいるってとはアレン君は、もしかして……」
アレンを案じ顔を曇らせるミーナ。
「今はアレンのことよりも自分の心配をするべきです。集合場所に着くまでにゴブリンに捕まれば、僕たち終わりですよ」
「あ、あぁ、そうだな。兎に角、全速力で走るぞ! あと少しのはずだ」
集合場所に向けて全力疾走してはいるが、まだ年端もいかぬ子供である。その上、カイルはミーナを抱えた状態だ。ゴブリンとカイルたちの距離は少しずつではあるが、着実に縮んでいる。
「カ、カイル君! な、何かこっちに飛んできます!」
ゴブリンは手に握りしめていた肉を放り投げる。
カイルたちに命中はしなかったものの、恐怖を与えるには十分な効果であった。
『ドサッ』
「うっ」
「おい! 大丈夫か!? 立てるか?」
カイルはミーナを下ろし、引き起こそうと手を差し伸べる。
「す、すみません。足が縺れました」
「きゃあ! 皆、うしろ!」
ミーナの声に反応して、皆一斉に振り向くと、カイルたちのすぐそばまでゴブリンが迫っていた。
「くらえっ! さぁ、今のうちです。あそこを抜ければ着くはずです」
「ギャアアアッ!!」
背後からカイルを襲おうとしていたゴブリンであったが、土を満面に投げつけられ目に入ったのかその場でもがき呻き出した。
「ありがとう、助かったぜ」
◆◇◆◇◆◇
「……ハァハァ、やっと抜けた」
少し薄暗かった森を抜けると、木々などなく開けた場所に到着した。自由行動後の集合場所である。そこには少しの子供たちと母親、カイルの父の村長がいた。
「ん? どうしたんじゃ? そんなに息を切らして」
「親父、ゴブリンだ! ゴブリンが追っかけてきてるんだ!」
「なにっ!? ゴブリンじゃと……、どうやら本当らしいの」
村長がカイルたちが出てきたところを見つめていると、一体のゴブリンが出てきた。
「みんな、下がっておれ」
「なっ、一人で戦う気かよ。大の男三人がかりで倒せるって聞いたぞ」
「ほぉ、よく知っておるの。しかし、何事にも例外はあるんじゃよ」
村長はそう言うと右手を広げゴブリンに向けると、【エアカッター】と唱えた。
すると、空気が圧縮し刃のようになると、ゴブリンに向かって飛んでいき、ゴブリンの首をはねた。
「な、何? 今の」
「すっげー」
「魔法じゃよ。私たち知能が高い生き物は生まれながらに量は異なるが魔力というのを持っておるんじゃ。魔力の量が多い者はああいうこともできるんじゃ」
「今度教えてくれよ!」
「あぁ、今度な。ん? ところで、アレンの姿が見えんようじゃが」
アレンの話題になったことで、カイルとその取り巻き二人はイタズラが見つかった子供のようにお互いの顔を見て目を合わせる。
「そ、それが……、ゴブリンに見つかった時にアレン君一人残って私たちを逃がしてくれたんです」
村長にアレンのことを説明するミーナ。そのミーナの表情は今にも泣き出しそうである。
「なんじゃと、カイル! 何故それを早く言わん。アレンとはどこで別れたじゃ」
「ここを真っ直ぐにいったとこで──」
村長はカイルの言葉を最後まで聞かずアレンがいると思われるところまで全速力で走っていった。
いつも読んで下さりありがとうございます。
はい、今回はゴブリンから逃げていったミーナちゃんたちのお話です。
次回もよろしくお願い致します。
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