ヘビーな家族
ヘビーな家族
カワズ君は、どこにでもいそうなアマガエルです。
人間で言うと、高校生くらい。
つまりどこにでもいる平凡な高校生という実に最近の主人公らしいテンプレート的な男の子。
でもカエルです。
そんなカワズ君には、夢があります。
「あーあ、一度でいいから、カブトムシをたらふく食べたいなぁー」
彼は、カブトムシが大好きです。ただし、ラブでは無くライクです。
カブトムシの、外はコリコリでカリカリ、中はドロドロでプチュプチュな食感の二重構造がたまらないそうです。
理解に苦しみますね。
「あーあーーーー……食べたい……食べたいよぉ」
もう何かキモイですね。
しかしまぁ今は冬。
カブトムシなんてどこにもいません。
カワズ君も大人しく冬眠すればいいのに、彼は基本バカなので寒さを感じません。
降り積もる雪なんぞ蹴散らして、カワズ君は目的も無くプラプラと散歩に出ます。
しかし、友達は皆冬眠中。ウシガエルのモッズ君なんて、誰よりも脂肪がついてて寒さを感じなさそうなくせに、「俺、寒いのマジ無理だから」どのカエルよりも逸早く冬眠しやがります。
「暇だなぁ…カブトムシもいないし…本当に暇だ」
どんだけカブトムシに飢えているのでしょうか。
「もうクワガタでも良いんだけどなぁ」
それも夏の風物詩です。
カブトムシやクワガタは人間でいうスイカの様な物。年がら年中ありつけるものではありません。
それでもカワズ君はバカなので木に登って必死こいて探します。
せめて土を掘れよ、とも思いますが、彼は基本バカなのです。
「ん?」
何かを見つけましたね。
枝の先でうねる、白くてちょっと太い長めのイモムシって感じです。
「これ、カブトムシの幼虫じゃない!?」
聞いたことがあります。カブトムシの幼虫は、白くて太めのイモムシみたいな見た目だと。
ただ、口は横に開くと聞いていたのですが、この白くて太い長めのイモムシは、口を縦にパクパクさせて、ピーピーと泣いています。それに、そもそもカブトムシの幼虫は土の中にいると聞いているのですが…
「うん、これカブトムシの幼虫だよ!」
一度そうだと思い込んだカワズ君に迷いはありません。
そしてここでカワズ君はバカなりに考えます。
この幼虫は余りおいしそうではありません。何せ、コリコリカリカリの甲羅がありませんから。
衣が無い天ぷらなどおいしさ7割減です(当社比)。
なら、どうするか。
「……そうだ、育てたら、成虫になるじゃないか。それから食べよう!」
なら素直に夏まで待って成虫を取って食えよ、とも思いますがカワズ君は基本的にバカなので仕方ありません。
「白いから、シロだね。おいで、シロ」
カワズ君はピーピーと寂し気に無く白くて太い長めのイモムシのシロを優しく抱き上げ、家に連れて帰る事にしました。
冬を越え、春が過ぎ去り、もうすぐ初夏です。
カワズ君の家には、あのシロと命名されたカブトムシの幼虫がいました。元気に育っている様です。
その白くて太い長めの体はカワズ君の何倍も大きくなり、大きな2つの目はギョロリと動き、縦に開く大きなお口からはチロチロと細長い舌が顔を覗かせます。
頭には女の子らしい可愛いリボン。まるでただの白蛇のようですね。
立派に育っています。というか女の子だったんですね。
……まぁ、カワズ君の事だから、「いつ成虫になるんだろう?」とバカみたいな事をいって首を傾げて……
「…………」
部屋の隅で頭を抱えていますね。
流石に彼も薄々気付いている様です。
「……これ、もしかして…ヘビじゃね?」
どうやらまだ疑いの余地があると思っているようですね。
やはりバカみたいです。
「おとん、どうしたん? ただでさえ緑な顔が真っ青やで」
しかも、蛇は蛇で何故かどっかのなまりが出ています。
「……ねぇシロ、何かさ、僕は色々と引き返せない気がするんだ」
「急にどうしたん?」
とんでもない物を拾い育ててしまいました。
カワズ君の倍くらいの大きさになった時点で気付くべきでしたが、その時カワズ君は「こりゃあ大物になるぞ」と手を叩いて喜んでいました。
もうバカ丸出しですね。
「お腹すいたなー……甘いもん食べたいわぁ」
女の子っぽいつぶやき。
恐い。もう滅茶苦茶恐い。シロちゃんの一挙手一投足が心臓に悪い。
カワズくん的にはそんな感じですね。
カワズ君がカブトムシとして育てたおかげで、シロちゃん自身にヘビの自覚は無いようですが、いつ本能的にバクりといかれるか気が気で無いのでしょう。
「……前々からウチな、思うとうたんやけど」
「な、何?」
「おとんって、美味しそうな匂いすんねんな。こう、クリーミーそうというか…」
「っ」
「何かウチに隠れて美味いもん食うてるん?」
「そ、そんな事ないよ……あ、戸棚にビスケットがあるから、それ食べようね!」
「やった!」
「……………」
……バクりといかれる日は近そうですね。 
人間で言うと、高校生くらい。
つまりどこにでもいる平凡な高校生という実に最近の主人公らしいテンプレート的な男の子。
でもカエルです。
そんなカワズ君には、夢があります。
「あーあ、一度でいいから、カブトムシをたらふく食べたいなぁー」
彼は、カブトムシが大好きです。ただし、ラブでは無くライクです。
カブトムシの、外はコリコリでカリカリ、中はドロドロでプチュプチュな食感の二重構造がたまらないそうです。
理解に苦しみますね。
「あーあーーーー……食べたい……食べたいよぉ」
もう何かキモイですね。
しかしまぁ今は冬。
カブトムシなんてどこにもいません。
カワズ君も大人しく冬眠すればいいのに、彼は基本バカなので寒さを感じません。
降り積もる雪なんぞ蹴散らして、カワズ君は目的も無くプラプラと散歩に出ます。
しかし、友達は皆冬眠中。ウシガエルのモッズ君なんて、誰よりも脂肪がついてて寒さを感じなさそうなくせに、「俺、寒いのマジ無理だから」どのカエルよりも逸早く冬眠しやがります。
「暇だなぁ…カブトムシもいないし…本当に暇だ」
どんだけカブトムシに飢えているのでしょうか。
「もうクワガタでも良いんだけどなぁ」
それも夏の風物詩です。
カブトムシやクワガタは人間でいうスイカの様な物。年がら年中ありつけるものではありません。
それでもカワズ君はバカなので木に登って必死こいて探します。
せめて土を掘れよ、とも思いますが、彼は基本バカなのです。
「ん?」
何かを見つけましたね。
枝の先でうねる、白くてちょっと太い長めのイモムシって感じです。
「これ、カブトムシの幼虫じゃない!?」
聞いたことがあります。カブトムシの幼虫は、白くて太めのイモムシみたいな見た目だと。
ただ、口は横に開くと聞いていたのですが、この白くて太い長めのイモムシは、口を縦にパクパクさせて、ピーピーと泣いています。それに、そもそもカブトムシの幼虫は土の中にいると聞いているのですが…
「うん、これカブトムシの幼虫だよ!」
一度そうだと思い込んだカワズ君に迷いはありません。
そしてここでカワズ君はバカなりに考えます。
この幼虫は余りおいしそうではありません。何せ、コリコリカリカリの甲羅がありませんから。
衣が無い天ぷらなどおいしさ7割減です(当社比)。
なら、どうするか。
「……そうだ、育てたら、成虫になるじゃないか。それから食べよう!」
なら素直に夏まで待って成虫を取って食えよ、とも思いますがカワズ君は基本的にバカなので仕方ありません。
「白いから、シロだね。おいで、シロ」
カワズ君はピーピーと寂し気に無く白くて太い長めのイモムシのシロを優しく抱き上げ、家に連れて帰る事にしました。
冬を越え、春が過ぎ去り、もうすぐ初夏です。
カワズ君の家には、あのシロと命名されたカブトムシの幼虫がいました。元気に育っている様です。
その白くて太い長めの体はカワズ君の何倍も大きくなり、大きな2つの目はギョロリと動き、縦に開く大きなお口からはチロチロと細長い舌が顔を覗かせます。
頭には女の子らしい可愛いリボン。まるでただの白蛇のようですね。
立派に育っています。というか女の子だったんですね。
……まぁ、カワズ君の事だから、「いつ成虫になるんだろう?」とバカみたいな事をいって首を傾げて……
「…………」
部屋の隅で頭を抱えていますね。
流石に彼も薄々気付いている様です。
「……これ、もしかして…ヘビじゃね?」
どうやらまだ疑いの余地があると思っているようですね。
やはりバカみたいです。
「おとん、どうしたん? ただでさえ緑な顔が真っ青やで」
しかも、蛇は蛇で何故かどっかのなまりが出ています。
「……ねぇシロ、何かさ、僕は色々と引き返せない気がするんだ」
「急にどうしたん?」
とんでもない物を拾い育ててしまいました。
カワズ君の倍くらいの大きさになった時点で気付くべきでしたが、その時カワズ君は「こりゃあ大物になるぞ」と手を叩いて喜んでいました。
もうバカ丸出しですね。
「お腹すいたなー……甘いもん食べたいわぁ」
女の子っぽいつぶやき。
恐い。もう滅茶苦茶恐い。シロちゃんの一挙手一投足が心臓に悪い。
カワズくん的にはそんな感じですね。
カワズ君がカブトムシとして育てたおかげで、シロちゃん自身にヘビの自覚は無いようですが、いつ本能的にバクりといかれるか気が気で無いのでしょう。
「……前々からウチな、思うとうたんやけど」
「な、何?」
「おとんって、美味しそうな匂いすんねんな。こう、クリーミーそうというか…」
「っ」
「何かウチに隠れて美味いもん食うてるん?」
「そ、そんな事ないよ……あ、戸棚にビスケットがあるから、それ食べようね!」
「やった!」
「……………」
……バクりといかれる日は近そうですね。 
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