私とサーガくんの宇宙人攻略記録
EX,忍者娘の黄昏
唐突ですが、私、天音志染は『忍者』です。
いわゆる現役女子高生くノ一。
だから冬とは言えこんなクソ長いマフラーを巻いてるの? って?
違います。これはただ単に私が寒がりなだけです。
適当に買ったので、こんなに長いとは思わなかっただけです。
完全に想定外でした。
そういうクナイや手裏剣って、持ち歩くのって危なくない?
大丈夫です。私が持っている物は全部刃先が丸みを帯びている安全仕様です。
でも鉄の塊である事に変わりは無いので、全力で投げつければ熊は無理でも人くらいは殺れます。
忍者って具体的にどんな仕事なの?
端的に言うと『すごい便利屋』です。
一般的な便利屋さんと違い、護衛や尖兵役など武闘派な依頼や、それこそスパイ活動的な事を主に請負います。
忍者については大体わかっていただけたでしょうか。
しかしまぁ、私は『まだ未熟だ』と忍者稼業を任せてもらえていません。
なので、その評価を1日も早く覆すべく、父に秘密で学校でちょっとした依頼を受けてはこなしを日々繰り返しています。
好きな子の趣味や空いている日を調べて欲しいとか、学校の周りで「害獣が出た」と言う情報があったから真偽を確かめて報告して欲しいとか。
そんな感じです。
最近は専属契約も取りました。
契約主の名は伏せますが……その役職は、とある『親衛隊』の平隊員なんだそうです。
親衛隊の名は『SKS』……私のクラスメイト…っていうか、目の前の席に座る、佐ヶ野サーガと言う男子生徒を陰ながら見守る親衛隊、との事。
サーガきゅん親衛隊。
彼の魅力とやらはよくわかりませんが……角やら尻尾やら、何か変わり者な風なので、気にはなりますね。
そんな話をすると「サーガきゅんの魅力がわからない……?」と本気で訝しむ様な顔をされました。
やっぱり、忍者家系と言う特殊な家に生まれた私は、自覚が無いだけで少し感性がズレているのでしょうか……少し凹みます。
そんなこんなは置いといて、私が取った契約の内容は、件の佐ヶ野の動向を探りまくる事。
暇さえあれば探り尽くして欲しいとの依頼です。
そんな依頼の中で、私は衝撃の事実を知る事になるのです。
なんと、「暴走さえしなければ学園のマドンナも夢じゃない」と言われるあの星野未宙先輩が、宇宙人だと言う事実です。
私ははっきりこの目で見ました、星野先輩の頭から生えた柔らかそうな触角を。
私ははっきりこの耳で聞きました、「NASAだけは勘弁してください」と。
超ビッグニュースです。
佐ヶ野が星野先輩へ告白した(と言うより恋心を暴露された)事も一緒に、依頼主に早く伝えなくては。
「星野先輩が宇宙人だった……?」
そうです、そうなんです。
これはすごい情報です。
忍者として、こんなすっごい秘密を入手してしまった事はとてもテンションが上が…
「そんな事はどうでも良いわ」
……………………。
「星野先輩が、サーガきゅんの告白を一蹴したですって……!? これは大事件よ! 隊長・副隊長に報せないと!」
「あ、あの、宇宙人の方が、大事件なのでは……」
「非常にどうでも良いわよそんなん!」
……やっぱり、私の感性は少しズレているのでしょうか。
夕日を眺めながら、少しだけ感傷に浸ります。
でも、私は負けません。
いつか、立派な忍者になって見せるのです。
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