長政前奏曲~熱烈チョロインと一緒に天下布武をお手伝い~
23.5,松永、天使に浄化される
「ようこそ、ようやく来ましたね。松永久秀様!」
極楽。
今にもはち切れんばかりのムチムチ筋肉少女天使、ヌッファエルが極上の笑顔と筋肉で松永を迎え入れた。
骨と皮しかない骸の様な松永と並ぶと、一層ヌッファエルの筋肉が膨大に見える。
「こ、ここは何処だ……? ……僕は、信長に……」
「ここは極楽、死後の世界ですよ。ちなみに私はヌッファエルです。エルたそとお呼びください」
大胸筋をマッスルさせながらヌッファエルが答える。
「死後……ふぅん、こんな僕でも、極楽浄土に逝けるとはねぇ……」
「そもそも地獄なんて物がありませんからね。何百年か前に建設計画はあったらしいですが、『誰得?』ってなって止めたそうです」
上腕筋をマッスルさせながらヌッファエルは松永に解説。
松永はそれを適当に聞き流す。
「で、エルたそだっけぇ? 君はぁ天使か何か?」
「ご名答!」
「さっきからムキムキ鬱陶しいなぁ、この天使……」
「そう仰らずに!」
「……気持ち悪ぅ……」
まぁ良いや、と松永は周囲を見渡してみる。
純白の柔らかい大地がどこまでも広がり、空は亜麻色。明らかに浮世では無い。
「ねぇ天使さぁん、生き返る方法とかって、無いのぉ?」
「無いです」
「本当?」
「ええ、この筋肉に誓って」
信憑性高いのか低いのかよくわからない誓いである。
ここで松永は考える。
そんな方法があったとしても易々と教えるはずは無いか、と。
「ま、良いやぁ」
松永は望んでいる。
1吸いの呼吸で血の匂いが肺いっぱいに広がる世界を。
地平線の果てまで続く焦土の光景を。
当人は具体的理由はわかっていない、ただ本能的に求めている。
その壊滅的世界で自分だけが笑っている、そんな未来を実現したい。
歪んだ支配欲が、彼の内側には満ち満ちている。
優れた将を見るとわざわざ下克上と言う形式で殺したくなるのも、そこに起因する。
この世で『支配者』は自分だけ、支配者を気取って調子に乗ってる奴を嬲り殺してそれを思い知らせてやりたい、と。
そんな異常な性質を持つ支配欲を満たすために、彼は戦乱を招いた。
ただ1人、死んだ大地の王になるために。
そして、万が一討たれた時の保険に怨念と化す準備までした。
まぁその怨念になっても討たれてしまったのは想定外だが。
別に死後にも世界があるなら、生にしがみつく必要は無い。
極楽で、また戦いを起こせば良い。
「むむっ!」
不意に、ヌッファエルが怪訝な表情を浮かべた。
そして彼女が胸の谷間……と言うより胸筋の合間から取り出したのは、小さな四角い機械。
「神より賜った『悪しきオーラ』センサーがビンッビンに超反応しております!」
「悪しき……おーらせんさー?」
「ああもうこれだから日ノ本の人は! 悪しき気配の探知機です! 松永さん、あなたさては今非常に悪い事を考えていますね!」
「……悪い事、かぁ。まぁ、極楽の管理側の君からするとぉ、そぉかもねぇ……」
「素直な所は高評価! ですがそうなると見逃せません!」
ふぅん、と松永が不敵に笑う。
その笑顔の下で逃げる算段を立てる。
今、松永は丸腰、こんな筋肉魂に素手喧嘩で勝てる訳が無い。
松永には特別徒手空拳の心得がある訳でもないし、尚更。
ひとまずこの天使から逃亡し、極楽の情報を集めよう。
そして「生き返る方法がある」とか適当に食いつきそうなホラ話で釣って……
とか色々考えている内に、松永は異変に気付いた。
「…………あれぇ?」
身体が動かない。
指先1つ、だ。瞬きすらできない。目がどんどん乾いていく。
「なんで……!?」
「筋肉愛武、第37564番……『顕現☆筋肉的支配領域』」
「……!?」
「我が我流殺ぽ……我流の癒し術、『筋肉愛武』における最終奥義……!」
「い、今、絶対に殺法って言おうとした……!」
「してません」
きっぱりと否定し、良い笑顔と良いマッスルを見せつけるヌッファエル。
「『顕現☆筋肉的支配領域』は、あらゆる筋肉を支配します」
「な、に……!?」
「私のこの筋肉を前に、あらゆる者の筋肉は平伏し、服従し、支配を求める……」
「そんな……馬鹿な……! この僕を支配なんて……!」
「心では認めないおつもりですか? でも、筋肉は正直ですよ」
ヌッファエルがその無骨な指をくんっと跳ねさせる。
その動きを合図に、松永の身体が勝手に動き、無意味なマッスル体勢を取った。
「っ!?」
「ご理解いただけましたか?」
「ぐっ……こ、こんなぁ……!」
「その気になれば、あなたの臓器系の筋肉を支配し、第2の死を与える事もできますよ」
「第2の死……!?」
「極楽において、我々天使はあなた方を完全に消滅させ、輪廻の環から取り除く権限を与えられています」
「っ……!」
完全なる消滅。それが、第2の死。
「ですが、そんな無慈悲な事はしません。私があなたを浄化し、導きましょう」
「浄化だって……い、一体何を……待て、何だその動きはぁ……!?」
「神による偉大な産物よ……私のこの筋肉に迷える子羊を救済し、導ける奇跡の輝きを……!」
「な、何を全身に塗りたくっているんだ!? そ、それは油か!?」
「オリーヴオイル……某イケメン……じゃなくて、神が用いる万能の油です」
黄金の油が、ヌッファエルの小麦色の肌を輝かせる。
「や、やめろ、ちょっと待て、な、何をする気だ……!?」
「黄金聖油により清められしこの筋肉で、あなたを浄化します」
これからどんな処刑が始まるのか、松永は予想してしまった。
1歩、また1歩、油を滴らせるヌッファエルのぬっちゃぬっちゃ的な足音が松永に迫る。
「ま、待て、止まれ止まれ止まれ止まれ止まれぇぇぇ!」
身体が動かない。
全力で逃げ出したいのに、全身くまなくその場に縫い付けられてしまっている。
絶望が、松永の心を少しずつ侵食してゆく。
「嫌だぁ……止めろ、来るなっ……!」
「いざ、浄化の時」
「僕に……僕に近寄るなァァァァァァァァァァァァアァァアアアァァァァァアアアアァァッッッ!!」
「筋肉愛武、第651番『聖油☆伝説』」
因果応報、その言葉を忘れてはいけない。
悪には、必ずや報いが訪れるのだ。
極楽。
今にもはち切れんばかりのムチムチ筋肉少女天使、ヌッファエルが極上の笑顔と筋肉で松永を迎え入れた。
骨と皮しかない骸の様な松永と並ぶと、一層ヌッファエルの筋肉が膨大に見える。
「こ、ここは何処だ……? ……僕は、信長に……」
「ここは極楽、死後の世界ですよ。ちなみに私はヌッファエルです。エルたそとお呼びください」
大胸筋をマッスルさせながらヌッファエルが答える。
「死後……ふぅん、こんな僕でも、極楽浄土に逝けるとはねぇ……」
「そもそも地獄なんて物がありませんからね。何百年か前に建設計画はあったらしいですが、『誰得?』ってなって止めたそうです」
上腕筋をマッスルさせながらヌッファエルは松永に解説。
松永はそれを適当に聞き流す。
「で、エルたそだっけぇ? 君はぁ天使か何か?」
「ご名答!」
「さっきからムキムキ鬱陶しいなぁ、この天使……」
「そう仰らずに!」
「……気持ち悪ぅ……」
まぁ良いや、と松永は周囲を見渡してみる。
純白の柔らかい大地がどこまでも広がり、空は亜麻色。明らかに浮世では無い。
「ねぇ天使さぁん、生き返る方法とかって、無いのぉ?」
「無いです」
「本当?」
「ええ、この筋肉に誓って」
信憑性高いのか低いのかよくわからない誓いである。
ここで松永は考える。
そんな方法があったとしても易々と教えるはずは無いか、と。
「ま、良いやぁ」
松永は望んでいる。
1吸いの呼吸で血の匂いが肺いっぱいに広がる世界を。
地平線の果てまで続く焦土の光景を。
当人は具体的理由はわかっていない、ただ本能的に求めている。
その壊滅的世界で自分だけが笑っている、そんな未来を実現したい。
歪んだ支配欲が、彼の内側には満ち満ちている。
優れた将を見るとわざわざ下克上と言う形式で殺したくなるのも、そこに起因する。
この世で『支配者』は自分だけ、支配者を気取って調子に乗ってる奴を嬲り殺してそれを思い知らせてやりたい、と。
そんな異常な性質を持つ支配欲を満たすために、彼は戦乱を招いた。
ただ1人、死んだ大地の王になるために。
そして、万が一討たれた時の保険に怨念と化す準備までした。
まぁその怨念になっても討たれてしまったのは想定外だが。
別に死後にも世界があるなら、生にしがみつく必要は無い。
極楽で、また戦いを起こせば良い。
「むむっ!」
不意に、ヌッファエルが怪訝な表情を浮かべた。
そして彼女が胸の谷間……と言うより胸筋の合間から取り出したのは、小さな四角い機械。
「神より賜った『悪しきオーラ』センサーがビンッビンに超反応しております!」
「悪しき……おーらせんさー?」
「ああもうこれだから日ノ本の人は! 悪しき気配の探知機です! 松永さん、あなたさては今非常に悪い事を考えていますね!」
「……悪い事、かぁ。まぁ、極楽の管理側の君からするとぉ、そぉかもねぇ……」
「素直な所は高評価! ですがそうなると見逃せません!」
ふぅん、と松永が不敵に笑う。
その笑顔の下で逃げる算段を立てる。
今、松永は丸腰、こんな筋肉魂に素手喧嘩で勝てる訳が無い。
松永には特別徒手空拳の心得がある訳でもないし、尚更。
ひとまずこの天使から逃亡し、極楽の情報を集めよう。
そして「生き返る方法がある」とか適当に食いつきそうなホラ話で釣って……
とか色々考えている内に、松永は異変に気付いた。
「…………あれぇ?」
身体が動かない。
指先1つ、だ。瞬きすらできない。目がどんどん乾いていく。
「なんで……!?」
「筋肉愛武、第37564番……『顕現☆筋肉的支配領域』」
「……!?」
「我が我流殺ぽ……我流の癒し術、『筋肉愛武』における最終奥義……!」
「い、今、絶対に殺法って言おうとした……!」
「してません」
きっぱりと否定し、良い笑顔と良いマッスルを見せつけるヌッファエル。
「『顕現☆筋肉的支配領域』は、あらゆる筋肉を支配します」
「な、に……!?」
「私のこの筋肉を前に、あらゆる者の筋肉は平伏し、服従し、支配を求める……」
「そんな……馬鹿な……! この僕を支配なんて……!」
「心では認めないおつもりですか? でも、筋肉は正直ですよ」
ヌッファエルがその無骨な指をくんっと跳ねさせる。
その動きを合図に、松永の身体が勝手に動き、無意味なマッスル体勢を取った。
「っ!?」
「ご理解いただけましたか?」
「ぐっ……こ、こんなぁ……!」
「その気になれば、あなたの臓器系の筋肉を支配し、第2の死を与える事もできますよ」
「第2の死……!?」
「極楽において、我々天使はあなた方を完全に消滅させ、輪廻の環から取り除く権限を与えられています」
「っ……!」
完全なる消滅。それが、第2の死。
「ですが、そんな無慈悲な事はしません。私があなたを浄化し、導きましょう」
「浄化だって……い、一体何を……待て、何だその動きはぁ……!?」
「神による偉大な産物よ……私のこの筋肉に迷える子羊を救済し、導ける奇跡の輝きを……!」
「な、何を全身に塗りたくっているんだ!? そ、それは油か!?」
「オリーヴオイル……某イケメン……じゃなくて、神が用いる万能の油です」
黄金の油が、ヌッファエルの小麦色の肌を輝かせる。
「や、やめろ、ちょっと待て、な、何をする気だ……!?」
「黄金聖油により清められしこの筋肉で、あなたを浄化します」
これからどんな処刑が始まるのか、松永は予想してしまった。
1歩、また1歩、油を滴らせるヌッファエルのぬっちゃぬっちゃ的な足音が松永に迫る。
「ま、待て、止まれ止まれ止まれ止まれ止まれぇぇぇ!」
身体が動かない。
全力で逃げ出したいのに、全身くまなくその場に縫い付けられてしまっている。
絶望が、松永の心を少しずつ侵食してゆく。
「嫌だぁ……止めろ、来るなっ……!」
「いざ、浄化の時」
「僕に……僕に近寄るなァァァァァァァァァァァァアァァアアアァァァァァアアアアァァッッッ!!」
「筋肉愛武、第651番『聖油☆伝説』」
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