長政前奏曲~熱烈チョロインと一緒に天下布武をお手伝い~
9.5,光秀、名誉の負傷
「あの、光秀さん」
「ん? 何?」
食事が終わり、膳を片付けながら、俺は少しだけ光秀さんに気になっていた事を聞いてみた。
「その……答え辛い事なら良いんですけど……その左目」
「ああ、これ?」
光秀さんは、左目に白い眼帯を宛てがっている。
「これはね……」
何か楽しい事を思い出した様に、光秀さんは少しだけ口角を上げた。
「信長様に仕える家臣として、『名誉の負傷』だよ」
これは、長政が織田家に臣従する3年前の話。
まだ、光秀の左目が健在だった頃の事。
光秀が信長と共にモノノ怪狩りに向かった時の事だ。
主級のモノノ怪と対峙していた信長が、不覚を取った。
そんな信長を庇って、光秀は左目を負傷してしまったのだ。
その傷は深く、光秀の左目は、2度と光を捕らえる事は無かった。
そんな事件から1ヶ月程してからだった。
白い眼帯にも慣れてきた光秀が、やたら不機嫌そうな信長に呼び出されたのは。
「……あのー……信長様? 僕、何かあなた様の気に障る事をしましたっけ?」
「身に覚えがねぇか? 上等だなこの野郎」
ああ、完全にブチギレてらっしゃる。
光秀は必死に記憶を漁ったが、それらしい記憶が無い。
「……はっ! まさか、先日の酒宴の席で何か粗相を……!?」
それしか思い当たらない。
光秀は酒に弱く、少し舐めただけでも酩酊する程。
先日、越後の上杉家当主を招いた酒宴で、自分がどう振舞ったかは既に忘却の彼方だった。
「見当違いも良い所だなこの野郎……!」
「ひぃっ!?」
信長は脇に置いてあった南蛮の火縄銃を静かに取り上げた。
どうやら、ますます怒りを買ってしまった様だ。
次の失言でおそらく銃口を向けられ、更にその次で多分発砲される。
「えー……えー……」
必死に記憶を探る光秀。
しかし、もう思い当たる節は無かった。
「……す、すみません、不心得ながらこの光秀……皆目見当が……」
「……光秀」
「は、はい……」
「一益から聞いたぞ。テメェ、その目の傷……自分の不覚傷だって言いまわってるらしいな」
「は……?」
確かに、光秀はこの眼帯について問われる度「恥ずかしながら、少し不覚を取りまして……」と説明してきた。
「どぉいう了見だ」
「どういうって……」
「何故真実を隠す? 答えろ」
「それは……やはり、主君が家臣に庇われたなど、恥になる事かと思い……」
「けっ……そんな所だろぉとは思ったよ。……前々から思ってたが、テメェは阿呆だな」
「はぁ……」
「頭は切れるが、何もわかっちゃいねぇ」
呆れた様に溜息を吐き、信長は銃を置いた。
「主君が家臣に守られて、何が恥になる?」
「え……それは……」
「生命掛けで自分を守ってくれる家臣を持った主君が、その家臣の何を恥じるか」
「!」
「そんな家臣の存在を喜ぶ事もできねぇ……器量の小さい主君だと家臣に思われてるって事の方が、よっぽど恥だ」
「……思慮が、足りませんでした」
「今後、その傷を不覚傷なんて言う事は、絶対に許さねぇ。覚えとけ」
「……はい」
「その傷は、名誉の負傷だ」
「……肝に銘じておきます」
光秀は、この件で更に強く確信したと言う。
やはり、この人に臣従して正解だった、と。
「ちなみに光秀。先日の酒宴、お前は裸で踊り狂ってたぞ」
「マジですか!?」
「マジだ。上杉のカマ野郎が目を爛々とさせてたぞ」
「ひぃぃっ!?」
「ん? 何?」
食事が終わり、膳を片付けながら、俺は少しだけ光秀さんに気になっていた事を聞いてみた。
「その……答え辛い事なら良いんですけど……その左目」
「ああ、これ?」
光秀さんは、左目に白い眼帯を宛てがっている。
「これはね……」
何か楽しい事を思い出した様に、光秀さんは少しだけ口角を上げた。
「信長様に仕える家臣として、『名誉の負傷』だよ」
これは、長政が織田家に臣従する3年前の話。
まだ、光秀の左目が健在だった頃の事。
光秀が信長と共にモノノ怪狩りに向かった時の事だ。
主級のモノノ怪と対峙していた信長が、不覚を取った。
そんな信長を庇って、光秀は左目を負傷してしまったのだ。
その傷は深く、光秀の左目は、2度と光を捕らえる事は無かった。
そんな事件から1ヶ月程してからだった。
白い眼帯にも慣れてきた光秀が、やたら不機嫌そうな信長に呼び出されたのは。
「……あのー……信長様? 僕、何かあなた様の気に障る事をしましたっけ?」
「身に覚えがねぇか? 上等だなこの野郎」
ああ、完全にブチギレてらっしゃる。
光秀は必死に記憶を漁ったが、それらしい記憶が無い。
「……はっ! まさか、先日の酒宴の席で何か粗相を……!?」
それしか思い当たらない。
光秀は酒に弱く、少し舐めただけでも酩酊する程。
先日、越後の上杉家当主を招いた酒宴で、自分がどう振舞ったかは既に忘却の彼方だった。
「見当違いも良い所だなこの野郎……!」
「ひぃっ!?」
信長は脇に置いてあった南蛮の火縄銃を静かに取り上げた。
どうやら、ますます怒りを買ってしまった様だ。
次の失言でおそらく銃口を向けられ、更にその次で多分発砲される。
「えー……えー……」
必死に記憶を探る光秀。
しかし、もう思い当たる節は無かった。
「……す、すみません、不心得ながらこの光秀……皆目見当が……」
「……光秀」
「は、はい……」
「一益から聞いたぞ。テメェ、その目の傷……自分の不覚傷だって言いまわってるらしいな」
「は……?」
確かに、光秀はこの眼帯について問われる度「恥ずかしながら、少し不覚を取りまして……」と説明してきた。
「どぉいう了見だ」
「どういうって……」
「何故真実を隠す? 答えろ」
「それは……やはり、主君が家臣に庇われたなど、恥になる事かと思い……」
「けっ……そんな所だろぉとは思ったよ。……前々から思ってたが、テメェは阿呆だな」
「はぁ……」
「頭は切れるが、何もわかっちゃいねぇ」
呆れた様に溜息を吐き、信長は銃を置いた。
「主君が家臣に守られて、何が恥になる?」
「え……それは……」
「生命掛けで自分を守ってくれる家臣を持った主君が、その家臣の何を恥じるか」
「!」
「そんな家臣の存在を喜ぶ事もできねぇ……器量の小さい主君だと家臣に思われてるって事の方が、よっぽど恥だ」
「……思慮が、足りませんでした」
「今後、その傷を不覚傷なんて言う事は、絶対に許さねぇ。覚えとけ」
「……はい」
「その傷は、名誉の負傷だ」
「……肝に銘じておきます」
光秀は、この件で更に強く確信したと言う。
やはり、この人に臣従して正解だった、と。
「ちなみに光秀。先日の酒宴、お前は裸で踊り狂ってたぞ」
「マジですか!?」
「マジだ。上杉のカマ野郎が目を爛々とさせてたぞ」
「ひぃぃっ!?」
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