異世界イクメン~川に落ちた俺が、異世界で子育てします~

須方三城

因縁の決闘、な最終話

 ん?


 ここはどこだろうか。


 窓の外からは、暖かな陽光が差し込んでいる。
 ……どっかの城の、玉座の間、って感じだな。


「これは、魔王城の景色だ」
「!」


 玉座に座している堂々たる風格の魔人、魔王だ。


「アルさん……? あれ、何で……」


 魔王は、グリーヴィマジョリティの件が解決してから、俺の中で喋る事は無かった。
 コクトウも、「あのおっさん、消えちまったぞ」って言ってたから、てっきり成仏しちまったモンだと……


「疑問に思うのも無理は無い。我輩自身、もう消滅した物だと思っていた」


 だが、いつの間にかまた俺の中にいた、と。


「どうやら神は、まだ我輩に情けをかけてくれるつもりらしい」


 そう言って、魔王は少し嬉しそうに笑った。


「……っていうか、ここどこ」
「ここは、君の深層意識の世界。君の夢の中だ」
「俺の夢なのに、何で俺の知らない景色が……」
「すまない、暇だったので色々試していたら、結構自由が利いてな。つい」


 人の夢の世界を勝手にレイアウト変更してんじゃねぇよ……


「……明日、だな。ロマンくん」
「!」


 明日。
 それは……


「サーガの命運を分ける、決闘」
「……ああ。相手は、あんたを殺した男だ」
「わかっている……ゲオルくんだろう」


 魔王の瞳に、悲し気な色が宿る。


「……彼にも、苦労をかけさせてしまっているな……」
「ん? 今何か言った?」
「いや、申し訳無いな、と思ってな」
「別に、俺が望んで選んだ事だし……」


 前にも同じ様な事言った気がすんな。


「明日までは、どうにか持ちそうだ。我輩は君の奥で、この決闘を見守らせてもらう」
「おう、きっちり応援しててくれ」
「もちろんだ。……それにしても、自信あり気だな、ロマンくん」
「ああ、一応、『現実的な勝機』は見えたから」


 アリアトの助言のおかげだ。
 まぁ、夜中に突然半裸のアリアトが部屋に乗り込んで来た時は、かなりビビったが。
 姉貴対策の防犯設備全部ぶっ壊してくれやがったからな。
 正直、あの勢いは怖かった。時間も時間だったから、犯されるんじゃないかと内心ワクワ…ビクビクした。


「明日は、絶対勝つから」


 例え勝機が見えなくとも負ける気は無かったけどな。


「……ありがとう。期待させてもらう」
「おう」
「大事な睡眠中に悪かった。さぁ、深い眠りについて、明日に備えると良い」






 …………ついに、この日が来た。来てしまった。


 自室にて、俺は精神統一のために見よう見まねで座禅を組んでみた。
 ……ダメだ。全然落ち着かねぇ。


 昨晩、夢の中で魔王に大見得切ったばっかだってのに、情けない。
 まぁ、あん時は夜中だったから。深夜のテンションでつい調子に乗っちゃったんだよ。うん。


「顔色が優れないが、大丈夫か」
「……正直、不安だ」


 アリアトの指導の元、『対ゲオル用の魔法』はどうにか形にはできた。
 でも、完璧とは言い難い。上手く扱えるかはまだ不安が残る所なのだ。
 そして、上手く使えたとしても、100%勝てる訳では無い。


 それでも、アリアトの助言を受けるまでは、全く見えなかった光明が差した。
 勝機は、確かにある。
 100%の勝機でなくとも、0%では無い。
 そこには、確実に未来がある。
 あとは、そこへ向かってひた走るしか無い。


「でも……絶対、負けねぇ」


 勝つために、人事は尽くしたつもりだ。


「当然だ。サーガ様の父を目指すのであればな」
「だう! ぱう、えい!」


 ぶちかましたれ! とサーガが小さな拳を俺に差し出して来た。


「おう」


 俺も、拳を軽く当てて、それに応える。


「覚悟ぁ良いみてぇだな、クソガキ」
「お前こそ、覚悟は良いかよ、コクトウ。十中八九、今日は無茶する事になるぞ」
「カッ! 望む所だっての」
「……じゃあ、行くか」


 決闘の舞台は、門のすぐ外。
 ユウカが日課の日向ぼっこで利用する、黒草の草原だ。






「そろそろ、正午だな」


 談話室。
 元グリーヴィマジョリティ組の数名が、休憩を取っている。


 ガドウは時計をチラチラと気にしながら、落ち着かない様子でコーヒーを啜っていた。


「僕達が気を揉んでも仕方無いでしょう」
「シャンドラの言う通りよ」


 溜息混じりにつぶやきながら、アリアトがその手を振るう。
 彼女が腕を振るう度、世界を改変する魔法、リベリオンが発動、ジタバタともがくロマンの姉、レディを拘束していく。


「むきぃぃぃぃぃぃ! ひどい! ひどい仕打ちよアリアトさん! 私はただロマンちゃんの勇姿をこの目に焼き付けて今晩のオカズにしたいだけなのに!」
「……ねぇガドウ、弟が好きだと、弟の姿だけでごはんが食べられる物なの?」
「ナノー?」「ソーナノー?」
「そういう事にしとくわ」
「……私は……まだその域じゃない……」


 レディが変態なだけなので、イザラがしょんぼりする必要性は全く無い。


「とりあえず、こんな所かしら」


 分厚い3重の鉄製巨大鳥籠。
 その内に、亀甲縛りで吊るし上げられたレディ。
 加えてその四肢は黒く重厚な枷、首にはソフトなSMプレイで使いそうなモフモフ仕様の首輪がハメられている。


「くぬぅ……流石リベリオンで創った縄……! 破れない……! うぅ、ロマンちゃぁぁぁぁぁん……」
「ガチ泣きですね」
「我慢を覚えなさい。相手方の要求なんだから、仕方無いでしょ」


 今回の決闘に置いて、ゲオル側から付いた注文だ。
 ギャラリーは無し。
 同席を許す範囲としては、世話役シングとサーガまで。
 それだけ真剣勝負だと言う事だ。


「うぅ……私ゲオルって人あんまり知らないから、この組み合わせの場合どっちがネコ向きでどっちがタチ向きか参考にしたかったのに……」
「ねぇガドウ、何でこの流れで猫と太刀が出てくるの?」
「ナァドウシテダヨ?」「吐イテ楽ニナッチマエヨ!」
「アリアトさん、猿ぐつわもハメようぜ。これ以上レディに喋れせると俺にも厄介な展開が待ってそうだ」






 デヴォラの屋敷、正門前。黒草の草原。


 初夏を感じさせる、少し強めの日差しが差し込むその場所に、俺はサーガを抱き、シングと共にやって来た。


「久しぶりだな、少年」
「……もう、来てやがったか」


 既に、ゲオルはそこで俺を待っていた。
 この前と同じく、ラフなポロシャツとスラックス姿に、金色の手甲。
 そこに、手甲と同じ素材らしい金色の足甲と胸当ても追加されている。
 そしてその傍らには、地面に突き立てられた大剣。
 この前のとはデザインが違う。
 今日のためにわざわざ新調してくれたらしい。迷惑な話だ。


「……!」


 げっ…あいつ、腰に普通の剣も差してやがる。


 ゲオルの弱点と言うか、付け入る隙の1つとして、大剣と言う大振りな武器を使用するという点があった。
 その武器の性質上、懐に入られてしまうと、致命的な攻撃は行えない。
 まぁ、ゲオルの挙動速度は常人には目で追う事すら難しい。その速度なら、武器が大剣でも、相手に懐に潜られる心配は無いのだろう。
 そこにあぐらをかいてくれる事を期待したんだが…そういや、俺は以前、こいつにイビルブーストの最大出力を披露してしまっていたんだ。


 俺の最大移動速度を警戒し、小回りの利く剣も用意してくれやがったらしい。
 本当、迷惑過ぎる。もう少し最強らしく余裕かましてくれよチクショウめ……


「顔の火傷は、治っていない様だが」
「気にされる程でもなぇよ」
「そうか」
「……シング、サーガを頼む」
「任せておけ」
「だい!」


 シングにサーガを引渡す。
 離れ際、サーガは頑張れよと言わんばかりに、俺の胸を軽く叩いていった。


「さて……」


 ゲオルを、見据える。
 可能な限りの敵対心を込めて。


「やはり、貴様は良い目をしている。その目が、虚仮こけで無い事を祈るぞ」
「……なぁ、1つ、聞かせて欲しい事がある」
「何だ」
「あんたの本当の目的は、何なんだ」
「!」


 ゲオルには、不可解な行動が多すぎる。
 その不可解な行動を繋ぎ合わせていくと、理由はわからないが、1つだけ、疑問が生じるのだ。


 もしかしてゲオルは、サーガを殺す気なんて、無いんじゃないか? と。


「……そこの世話役と言い、嫌な所で勘が良いな」


 ゲオルが、少しだけ口角をあげて笑った。


「そうだな。もし貴様が俺に勝てたのなら、もう隠しておく必要も無い。そしたら、話してやってもいい」
「……?」


 どういう意味だ、俺が勝ったら隠す必要が無くなるって。


「さぁ、始める前に、この決闘の詳細を確認しておく」
「あ、ああ……」


 聞いた所で、それも今は答えてはくれないだろう。


「勝負は1対1。俺と貴様の一騎打ち。魔法や武器、道具の使用に制限は無い。ファイトフィールドはこのダンジョン全域。どちらかが戦闘不能になった時点で決着、最後まで立っていた方の勝ちだ」
「あんたが勝ったら、あんたはサーガを殺す……俺が勝ったら、あんたは2度とサーガに手を出さない」
「約束しよう」
「そんで、今言った通り、全部話してもらう」
「了承した」


 現状は実にシンプルだ。
 このダンジョン内をフィールドとして、何でも有りのデスマッチ。最後まで立ってた奴の勝ち。
 そして、俺は負けられない。


 それだけの事。


「……やんぞ、コクトウ」
「応」


 コクトウの柄に、手をかけ、一気に引き抜く。


 俺に合わせて、ゲオルも大剣を地面から引き抜き、そして空いている手で腰の剣を抜いた。


 ……やっぱ、二刀流戦術か。
 ゲオルの腕力なら片手振りでも一撃必殺級であろう大剣。
 大剣程の威力は無いだろうが、大剣の死角をカバーじつつ斬撃速度はその上を行く剣。


 あの剣のおかげで、正面の死角と言えた懐の内は、潰されてしまった訳だ。
 だが、まだ希望はある。


魔剣融合ユニゾンフォール、『夜色ノ魔王クロノズィーガ』」


 魔剣奥義を発動し、全身に、黒鉄の鎧を纏う。
 まぁ、ゲオルが相手じゃ防御力は心許ないが、この状態の最大の利点は、鎧による防御力上昇ではない。


「それが、貴様達の魔剣奥義か」
「能力解説ならしてやんねぇぞ」


 アリアトの時とは状況が違う。
 わざわざ情報を与えてやるつもりは無い。
 フェアプレー精神? 何それ食べれんの?
 っていうか元々のスペックがフェアじゃねーよって話だよ。


「構わない、何を起こそうと、叩き潰すだけだ」


 言ってくれる。
 まぁ、その辺を有言実行できちゃうから、世界最強なんだろう。


「行くぞ」


 その声が聞こえたと思った時には、ゲオルは目の前にいた。


「っ!?」


 嘘だろ、俺、今イビルブースト全開だぞ。
 こいつ、前より速くなって……いや、前の時が、かなり手を抜いてたってだけか……!


 とにかく、驚いてる場合じゃねぇ。


 来る。
 大剣による、横薙ぎのスイングが。


 上等だ、俺だって、テメェの度肝を抜いてやる。


 この3週間、アリアトの熱血指導の元、地獄を見るような特訓の末に体得した、『対ゲオル用の魔法』。
 早速、お披露目といかせてもらう。


「!」


 ゲオルの目が、少しだけ驚きで見開かれた。
 まぁ、そりゃ驚くだろう。
 躱されるくらいは想定していたかも知れないが、「俺が視界から消える」なんて、予想外だろうからな。


「っしゃあ!」


 その一瞬の隙を突いて、俺は「上空」からゲオルへライダーキック。
 しかし、流石はゲオルってとこか。
 すんなりと躱され、俺の蹴りは黒草ごと地面を吹き飛ばすだけに終わった。


「ちっ!」


 まぁ、こんなんをあっさり受けてくれるなんて思っちゃいない。
 俺はすぐに『翼』を振るって上空へと舞い戻る。


「……風属性の飛翔魔法か」


 ゲオルの推測は、正解だ。


 俺がアリアトと共に必死に学んだ魔法、その名も『制空風陣ブルームライダー』。
 風の魔法であり、飛翔を目的としている。


 本来は半透明の風の翼を背中に取っ付ける魔法だが、魔剣奥義の影響だろう、俺の翼は真っ黒だ。
 マントの時と言い、この鎧には着衣物を黒く染める無駄な性質があるらしい。


「まともに魔法を使えなかったと聞いていたが、かなり成長した様だな」
「はん、どうも」


 ……ぶっちゃけ、この魔法以外は未だに下手くそなまんまだけどな。


 この魔法こそが、俺がゲオルに勝つための、希望。


 人間の死角は、背後の空間、だけでは無い。
 その頭上も、立派な死角だ。
 真上から来る攻撃に、人間は脆い。


 だから俺は、この闘いにおいて制空権を得る事を重視した。
 そのための魔法だ。


 イビルブーストで身体能力を極限まで底上げ。
 イビルレクゼーションでゲオルの魔力を枯渇させる。
 まぁ、あいつは魔力が切れた程度じゃフラつきすらしないだろう。
 少しでも良いから奴の身体的パフォーマンスの精度を下げれれば儲けものだ。


 後は、この翼によって得られた空戦機動力を活かし、ヒット&アウェイでひたすらゲオルの背後と頭上、つまり死角を攻め続ける。
 いくら超人だろうがバケモンだろうが世界最強だろうが、このジリジリ削り戦法で削り取って行けば、どうにか勝てるはずだ。


 問題は、万が一にでもあいつからのカウンターを食らった場合。
 一撃で戦闘不能は避けれても、こちらの機動力低下は避けられない。
 そうなれば、芋づる式に殺られる可能性が高い。


 つまりだ。


 俺は、ここから先、ゲオルから一撃ももらう事なく、ひたすら奴の死角からヒット&アウェイを繰り返すしか、勝つ手段が無い。


 外道だ汚いだと言う批判は受けよう。
 でも仕方無いじゃん、相手が強すぎんだよ。
 長期連載末期のインフレMAX主人公に、初期の敵幹部が挑んでる様なモンなんだぞ今。
 それで勝たなきゃいけないってんなら、もう手段なんて選んでられるかって話である。


 今、俺はゲオルに勝つために、あらゆる美学を捨て去っている。
 後味の悪さとか今後に悔いが残るとか、んな事にこだわってられるか。
 ここで負けた時の方が、数倍後味も悪いし、死ぬほど後悔するはずだ。


 今の俺にある思想はただ1つ、勝って、サーガを守る。
 それだけの事だ。


 だから、過程や方法なんて、どうでも良い。


 ……どこの吸血鬼だ俺は。


 まぁとにかく、そういう事だ。
 遠慮はしない。加減もしない。


「ゲオル・J・ギウス……もう一度、あんたに一泡吹かせてやるよ」


 絶対、ゲオルをブッ倒す、そんで、


「絶対に、サーガを無事、連れて帰ってみせる!」


 ゲオルと初めて闘った時、あの時も、同じ様な事を言ったっけか。
 でも、あの時とは覚悟が違う。


 ただ可愛いから守りたい。
 それ以上の想いが、俺の胸の中で渦巻いてる。
 だって俺は、サーガの父親になる男だから。


「……やってみろ」


 あの時と同じ様に、ゲオルは少しだけ嬉しそうに笑った。


「ロマン、やってしまえ!」
「ぱう、やえー!」


 サーガとシングの声援を背に、俺は黒翼を振るう。
 漆黒の拳を、強く、握り直す。


「行くぞ……!」


 守ってみせる、俺の、守りたいモノ、全部。
















 この『本』は何かって?
 ……お前、マジで言ってんの?
 今、世間中を賑わせてる話題の1冊だぜ?


 ……本当に知らねぇみたいだな。
 じゃあ仕方無ぇ、一丁説明してやるよ。


 1年前の、イノセスティリアで起こった事件は、知ってるよな。


 そうだ、皇帝政権が崩壊した、あの『革命』の時だ。
 あの時、皇帝の身柄は革命軍穏健派が無事捕縛したってのに、過激派の連中が、皇帝勢力を皆殺しにしようと『邪神』を蘇らせた。
 ああ、今で言う、『邪神再誕事件』だな。
 それを、あのゲオル・J・ギウス中心になり、革命軍穏健派と皇帝勢力と結託させて、『邪神』を倒したって話。
 そう、この話は報道にもなった、「事実とされてる事」なんだよ。


 その逸話に、こんなウワサがあんだ。


 その邪神を破った……いや、正確に言うと、その邪神を退かせたのは、ゲオルじゃない、ってウワサだ。


 じゃあ誰かって?


 それが、この本の主人公だよ。


 この本が話題になってる理由はな、まず、表紙裏のこの文言だ。
「この作品がフィクションであるか否かの判断は、あなたに委ねる」ってな。
 妙なモンだろ? フィクションかノンフィクションか、はっきりさせてねぇんだ。


 次に、この本の著者と、出版社だ。
 著者の名前は『J・EOLGエオルグ』……ああ、聞いた事ねぇ名前だろ?
 そう、無名の作家…もしくは冒険者なんだ。


 なのに、出版社を見ろよ。
 インターブレス……そう、あのゲオルを始め、超S級と称される冒険者達といくつも専属契約取っちまう様な、超大手出版社だ。
 そんな会社が突然、無名の著者の作品を出したんだぜ? それだけでも話題性抜群だ。
 本当に新人なのか? 誰か著名な作家か冒険者が、偽名で出してるんじゃないのか? だとしたら何故? ってな。


 それに加えて、この内容だ。


 簡単に言うと、こいつは『魔王の息子』のお話だ。


 そう、あの魔王、の息子。
 んなもんいたの? って……その真偽は俺だって知らねぇよ。
 ただ、さっきも言ったろ、この本が虚か真かは、曖昧なんだ。


 魔王の死後、魔王の息子がどういう人生を辿ったかが書かれてる。
 ……つっても、2歳まで、だけどな。
 ああ、結末で、魔王の息子さんは異世界に行っちまうんだよ。


 まぁ、確かに荒唐無稽な感じはするわな。


 とにかく、この本の終盤、あのイノセスティリアの件に触れられてんだ。
 それが、あのウワサの元だ。


 魔王の息子と邪神の子供。
 その2人が手を組んで、怒り狂った邪神を鎮め、時空の彼方へ退かせた。
 そうして、世界を救った。


 ……つまりだ。
 邪神を討ち払い、この『世界を救った英雄』は、ゲオルじゃなくて魔王の息子だった、って内容なんだ。


 まぁ、ゲオルがその場にいた、ってのは間違いじゃないみたいだけどな。
 この本でも、何回か登場するぜ。
 ちょっと悪役っぽく描かれちゃいるがな。


 お、興味出てきたか。
 そういや、お前はゲオルのファンだもんな。


 おう、いいぜ読め読め。
 面白いから。


 この物語は、こんな一文から始まる。




 ―――その英雄には、素晴らしい父親が2人いた。







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