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とある離島のインペリアルボーイ

須方三城

18,最後はやっぱり皆の力を1つにする系が王道

「おいBJ……こういう場合、未来ではどうしてたんだ?」
『こちらの想定以上の堅い表皮を持つインバーダは……』
「っと!」


 BJ3号機の返答を、ガルシャークさんが遮った。
 そして、BJ3号機が海中へと潜る。
 一瞬にして、コックピット内のパノラマ型ディスプレイが暗い海の色に染まった。


「うぉぅっ」


 急速降下による臓器系への違和感。エレベーターとか車で急な坂道を下る時とかに感じるあれだ。
 不意なその感覚に、思わず声が漏れてしまった。


「悪いね皇子」


 軽い謝罪。
 ガルシャークさんがBJ3号機を海中に潜られた理由は、すぐに理解できた。


 BJ3号機の直上、海上を、黒い大きな影が過ぎ去っていったのだ。
 今の影の主の突進を回避するため、ガルシャークさんはBJ3号機を海中へと避難させたのだろう。


「どぉやらやっこさん、準備ができちまったらしい」


 軽くつぶやき、ガルシャークさんがBJ3号機を浮上させる。
 BJ3号機のアイカメラが捉えた映像は、上空を飛び回る悠葉に向かって赤黒いレーザービームを射出する、白い怪物。


 あの繭の中腹辺りが砕け、中から白い装甲に身を包んだ巨人が生えていた。
 全高は人型部だけでも10メートルはある。少なくとも戦闘モードのBJ3号機よりデカい。関節部を型取る様に刻まれたラインが、赤黒い輝きを放っている。
 巨人、と言っても、腕やら大まかな形状が人に近いと言うだけ。その顔面は人のそれには程遠い。眼球は全部で9個、口と思われる部分は虫のそれの如く縦に裂けていた。悠葉を狙うレーザービームは、あの縦に開閉する口から放たれている。


 あんなんが、少し目を離した隙に飛び出していたとは……


「蜘蛛みたいで気持ち悪い!」


 ビームを躱し、悠葉が反撃。その手から、白い巨人よりも大きな竜巻を放つ。


「ぎぱ?」


 しかし、巨人は「ん? そよ風?」的な奇声とリアクション。全く効いていない。風圧に押される気配すら無い。どうなってんだアレ。


「っのぉ!」


 悠葉は続けて風の刃を放つが、


「ぺい」


 何か「ちょこざいわっ」くらいのノリでかき消されてしまった。


「……おい、何かめっちゃ強いっぽいぞ、あの化物」
『元々の個体能力の高さもあるでしょうが、同化素材がよかったのも原因でしょうね』


 ……あ、そう言えば……カミキリザンキって、ビッグプレッサの特殊装甲と同じ技術を用いてるって言ってたな。
 それがインバーダと同化で、進化しているとしたら……防御力はかなりの物になっていてもおかしくない。


「ぎ……あいあ、だう、ぱはが、ぎぐぅん!」


 連続するインバーダの奇声。
 人型の下半身と化していた繭を突き破り、左右3本ずつ、合計6本の腕が生え出した。
 8本腕……ますます蜘蛛っぽくなったな。


「あぱ、がす!」
『! 不味い!』


 インバーダの上半身の2本、繭から突き出した6本の腕の先が、赤黒い光を放ち始める。
 あれはどう見ても……さっきのビーム攻撃だよな。
 悠葉を狙っている……だけじゃない。
 バラバラだ。8本の腕は、全てバラバラの方角を向いている。
 当然、島の方にも。


「無差別攻撃かよ!」
「やれやれだなぁおい!」


 ガルシャークさんはBJ3号機を走らせつつ、海水も操作。
 無数の水の手を精製し、インバーダを海中へと引きずり込もうと試みるが、ダメだ。インバーダは動かない。
 その挙動を制限する事はできても、海中へ引きずり込むには至らない。


「重ってぇなぁ、っの横綱野郎が……!」
「私は自分で避けれる! 島を!」
「BJ!」
『了解です! 斥力障壁リプレーション・バリア!』


 BJ3号機が島とインバーダの間に入り、巨大な青白い光のバリアを展開する。
 その直後、インバーダが8本のレーザービームを放った。
 内2本が、バリアに衝突する。青白いバリアと赤黒いレーザーのせめぎ合い、目にやかましい閃光を散らす。


『ぐぅっ……!』


 バリアが撓み始める。押されているのだ。
 もう持たない、そう思いかけた時、運良くレーザーの照射が途切れてくれた。


「おいおい……冗談じゃないぜ……」


 俺もガルシャークさんと全くの同意見だ。ふざけんな、何だこの化物。
 気軽にあんなレーザー8本もぶちかまして来るとか、危険過ぎる。


 未来の人たちが地球に降り立つ前に駆除しようと躍起になる訳だ。
 都心部に現れたら、被害は計り知れない。


「はあぁぁああああああ!」


 無事レーザーを躱し切っていたらしい悠葉が雄叫びを上げ、さっきよりも大きな竜巻をインバーダへと投げつける。
 インバーダはそれを受け、若干下半身の繭が海面下に沈む。
 ただそれだけだ。若干風圧に押されただけで、ダメージは負っていない。


「っ……全開でもこの程度なの……!?」
「BJ! マジでアレどうやって退治すりゃ良いんだよ!?」
『こちらの想定以上の表皮硬度を持つインバーダは……それをブチ抜けるだけの力で叩くんです』


 わお、脳筋スタイル。
 まぁ、未来の世界にしかない専用兵器とか言われても調達が難しいし、ある意味助かった。


「って、でもさっきお前の最大技が全く効かなかったじゃん!」
『バスターナックルには、もう1段階上が有ります』
「!」
『ただし威力が高すぎるので、地球上での使用は余り推奨されていないのですが……背に腹は代えられないでしょう。あのインバーダの直上より照射し、地球に与える被害を最小限に抑えます』
「おし、じゃあ少し操縦代わってくれ、皇子サマ」
「え?」
「俺は、あの化物の動きを抑える事に集中する。作業分担って奴だ」


 ガルシャークさんがあいつの動きを封じ、俺が引き金を引く、と。


「足場の水面固定も解除する、自力で飛んでくれ」
『了解しました』


 BJ3号機は腰部と脚部のスラスターを起動、出力に任せて滞空する。


『この一撃は精神エネルギーが多ければ多いほど良い! 悠葉さんも力を貸してください!』
「わかった」


 BJ3号機の後ろ首の辺りに、操縦席にある物と同じハンドルパイプが生える。悠葉がそこに降り立ち、パイプを握った。
 精神タンク3人体勢だ。相当なエネルギーが供給されている事だろう。


「ぎぎ」


 インバーダが動こうとした時、海水で作り出された無数の蛇が、その全身を絡め取る。


「んぎ、あう!?」
「けっ……今度はキッツキツだぞ化物野郎……!」


 意識を能力操作だけに割けるか否かでかなり出力が変わってくるらしい。
 水の蛇達はがっちりとインバーダを縛り上げ、ジリジリと海の中へ引き込んでいく。


 すごい……が、ガルシャークさんの脂汗もすごい。大分無茶苦茶頑張ってくれているらしい。
 こんな真面目な面で歯を食いしばってるガルシャークさんは初めて見る。
 仮にもガルシャークさんは騎士、普段は無気力なおっさんでも、人命を守るための化物退治に手を抜く様な事をするはずがない。


「っし、さっさと決めるぞ、BJ!」
『はい!』


 ハンドルパイプを強く握り、BJに指示を送る。
 さぁ、跳べ。そして、俺の、俺の母さんの愛した島に仇名そうとしたあのマジでふざけたクソッタレに鉄槌を下してやれ。


 BJ3号機に命令を送り、インバーダの真上へ。
 9つの瞳が、BJ3号機を捉える。瞬間、インバーダは大口をかっ開いた。
 その喉の奥から赤黒い光がせり上がって来るのが見える。ビーム攻撃を放つ気だ。


「お口はチャックだオラァ!」


 ガルシャークさんの叫びと共に、水蛇達が喉元へと這い上がり、その顎を強制的に閉じさせた。


「もぎょっ」


 ボフンッ、と言う爆発音と共に、インバーダの奇声が響く。
 どうやら想定外に口を閉じさせられたがために、口内でビーム攻撃が暴発してしまったらしい。
 目や口の隙間からブスブスと黒煙が漏れ出している。


「そろそろキッツいから……ドデカいの頼むぜ、皇子ィ!」
「おう、BJ!」
『はい! ダブルバスター、セットアップ!』


 BJ3号機の両手が大砲へと変形する。そして、両手を叩き合わせる様な動作でその大砲同士を連結。
 両砲門内でエネルギーが高速巡回、徐々にエネルギー量が増加しているのがディスプレイの表示で伺える。横に表示されている、おそらくエネルギーを数値化した物であろうカウンターが目にも止まらぬ速度で回転していく。


 俺と、ガルシャークさんと、悠葉。
 3人分の精神エネルギーを根こそぎ注入し、砲内で増幅させ、そして放つ。


『出力臨界! ダブルバスターナックル、バァァァストォッ!』


 撃ち出されたのは、両掌を組んだ形の巨大な光の拳。デカい。インバーダの巨体を軽く凌駕する巨拳だ。
 そんな光の巨拳が、容赦なくインバーダを飲み込む。


「ぎや……」


 ロクな断末魔も上げさせずに、その力の濁流の中でインバーダを消滅させた。
 そのまま、海を割る。海水を吹き飛ばし、一瞬だが海底が露出、そこに巨大なクレーターを刻みつけた。


「は、はは……マジですごい威力だな……」


 本当に、さっきまで巨大な怪物がいたのだろうか。
 そう疑ってしまう程、跡形も無くインバーダを消滅させてしまった。
 しかもここ、沖だぞ。水深100や200を軽く超えているはずだ。
 なのに、海底が見えた。しかも余波だけで抉ったぞ、その海底を。


 あまりの威力に俺が戦慄する中、余波と共に天高く舞い上がった海水が、土砂降りの雨となって海へと還ってゆく。


 これが、未来のロボットの本気の一撃か……
 未来の怪物も洒落になってないが、こいつもこいつで頭おかしい。


「おっと……」


 今、一瞬、立ちくらみみたいなのが……


『精神エネルギーを使い過ぎましたね。島に戻りましょう。これ以上の消費は生命に関わります』
「私もすっごい疲れた」
「……俺は……もう……駄目かも知れない……」
「ガルシャークさんが死にかけてる!?」


 海水の操作で頑張り過ぎた上に精神エネルギー大量徴収された訳だから、当然か。
 さっさと島に戻って降ろしてあげないとマジで死んでしまいそうだ、急ごう。





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