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とある離島のインペリアルボーイ

須方三城

13,妄想から出た名案



 あの後、沖へ吹き飛ばされたマグロロボはどうにか浜へ帰ってきた。
 が、大破したビッグプレッサ&正座待機のホエルを見て「これは無理ゲーだね」とあっさり負けを認め、降伏。


 とりあえずホエルとツナーの撤収を見送り終えた後、俺と青翼の麗人は海を見下ろせる高台にやって来た。
 もちろん、落ち着いて根掘り葉掘り説明していただくためである。


「今日は助かったよ。多分俺らだけだったらもうちょい手こずってた」


 とりあえず、まずは礼だ。
 そして、


「……で、色々説明してもらおうか、悠葉」


 本題に入る。


「…………何でバレたし」


 青翼の麗人は観念したのか、ゆっくりとヘルメットを外した。
 髪色が真緑に変化し、瞳がエメラルドみたいになってるが……間違いなく悠葉だ。


「声だけで普通わかる? そう思ったにしても確信できる?」
「ああ、その辺は……」


 俺はまだ、誰にも絶対問答インペリアル・アシックの事を話していない。
 別に隠す事にメリットを見出してた訳では無く、ただ単に説明する機会が無かっただけである。
 どこぞの少年漫画じゃあるまいし、自分の能力を自分から説明する機会なんてそうそう無い。
 ま、そのせいで今日は若干質問中に妙な茶々が入ったしな……帰ったらあの2人にも説明しとかないと。


「……質問した事に対して、本当の事を知る事ができる能力……?」
「まぁ、そういう事になるな」
「………………」


 何か、悠葉の顔色が悪くなった。
 血の気が引く、ってのはまさにこんな感じか。


「も、ももしかして、私が何でこんな格好であんたを助けに来たのかとか……」
「あ、そういやお前が手を貸してくれた理由は聞いてなかったな。その辺も含めて色々説明しろって」


 悠葉がホッと胸をなでおろす。


「1つ約束しなさい、私に対してその能力は絶対に使わない事」
「えー…………」
「えーじゃない。殴るわよ」


 それは洒落にならない。
 巨大ロボットを殴り壊す様な拳、俺が耐えられるはずが無い。


「絶対よ」
「……まぁ、わかったよ」


 そこまで言うんなら、お前には使わねぇよ。
 殴られるのは御免だし、人が本気で嫌がる事をやるのは趣味じゃない。


 ま、悠葉だって年頃の女の子なんだし、いくら気心の知れた幼馴染相手でも、野郎には知られたくない事が多々あるのだろう。
 この能力を使っていれば、思いがけずその辺に触れてしまう事もあるかも知れない。
 紳士として、そこは気を使ってやらねばなるまい。
 それに今の所、こいつから本音を聞けなくて困る様なシチュエーションは想像付かないし。


「じゃ、使わないからきちんと説明してくれ」
「……わかった。じゃあまずは、魔法の国、ワクワクホリックランドについて……」






「ふーん……お前はそのワクホリとやらのお姫様の生まれ変わりなのか」
「……意外と反応薄い」


 お前にだけは言われたくねぇ。


 ま、確かに普通はもうちょっと驚く所だろうな。
 なにせ、16年共に過ごした幼馴染が魔法の国のお姫様の転生体だってんだから。


 でもまぁ前世がなんだろうと悠葉は悠葉でしかない。
 前世が大犯罪者だろうが、超絶聖人だろうが、現世での付き合い方に影響する事があるとは思えないし。
 俺の前世だって、どこで何をしでかしていたかわかったモノではない。
 前世が何だろうと、大して驚く事でもないな、と言うのが俺の感想である。


 それと何より、もう既に異世界の帝国の騎士さんやら未来のロボットやらと密なお付き合いしてるからな。
 もう多少の不可思議では動じない自信がある。


「で、そんなお前のために力を貸してくれる妖精的な物がこの島にいて、その緑尽くめな姿はそいつから魔法の恩恵を得るための姿な訳か」


 要するに今の悠葉は、変身ヒーローのヒーローフォルムって事か。
 いや、系統的に魔法少女の戦闘モードってのが適切な例え、か?


「うん、大体そんな感じ。妖精については呼べば来ると思うけど……ウディム」


 悠葉の呼びかけに応じる様に、木々が大きくザワめき始める。


『やぁ、ウディムを呼んだかい?』
「うおっ……」


 どこからともなく響く声。
 何か不思議な感じの声だ。肉声でも、スピーカー越しとも何かが違う。
 とにかく不思議、そうとしか言い様が無い。


「あんたが件の妖精的な存在か……」


 と言っても、声しか聞こえないが。


『うん、そうだよ。初めましてだね、姫様の運命のひt…』
「おおっと手が滑る!」
『づぅんっ!?』


 ウディムの発言を遮る様に、悠葉が身近な木へ向かってカマイタチ的な風の刃を放った。
 伐採された枝と共に、何やら小さな何かが落下した。


『痛たたた……』


 それは、掌サイズの光の塊。
 色は緑色で、何かやかましいくらいにチカチカしている。
 ……もしかして、あれがウディム、か?


『いきなり酷いよ……うぅ……口が滑った感は否めないけどさ……』
「わかってるなら以後気をつけて」
「……っていうか、あの光の塊が……?」
『そう、ウディムだよ。ウディムは夢と現実の狭間、幻想の世界の住人だからね。こっちの世界で使える肉体はまだ無いんだ』


 まだ無い……って事はその内できるのか。
 どういうシステムなんだろうか。


『まぁこんなナリだけど、魔法の力は「聖霊王」のお墨付きだからね。今後共頼りにしてくれていいよ』


 そう言いながら、ウディムを名乗る緑光の塊がフワッと浮き、悠葉の肩に乗る。


「頼りにしてくれていいって……今後も俺達に力を貸してくれるのか?」
「そう、ウディムの力があれば、私でも鋼助を充分守れる、戦える」


 今日の戦闘を見た感じ、そこはケチの付けようが無いだろう。
 BJ3号機にも劣らない強さ……どころか、制空権を握れる分、下手すりゃBJ3号機より強いかも知れない。


「でも、危ない事だぞ」


 四天王を3人も返り討ちにしたんだ。ミストラル大臣とやらが次にどんな手で来るか、想像もできない。
 強力な魔法があるとは言え、生身で戦うのは危険が大きいと思う。


「気持ちはありがたいけどさ、トゥルティさんやBJがいるし、お前が無理する事はないぜ?」


 俺の危機を救ってくれようとする気持ちは本当にありがたい。
 昨日はあんな事言ってたけど、なんだかんだ俺の事をきっちり心配してくれてるんだ、と嬉しく思う。


 でもこれは、俺が我侭を貫くための戦いだ。
「こちらは一向に構わない」と主張し続けるトゥルティさんとBJ3号機を戦わせる事にだって、俺は負い目を感じている。
 これ以上不必要に誰かを巻き込むのは、当然、気が進まない。


「むしろ私1人で充分、あの金髪さんとロボットは故郷に帰らせてあげよう」
「いや、どう考えても逆だろ」


 あっちは仮にも一国の騎士と地球を守るロボットだぞ。
 対してお前は魔法の力があるとは言え、ただの女子高生。
 どちらを戦闘に参加させるかと問われれば、間違いなく前者2名だろう。
 実力云々よりも、戦う事に置ける経験値や気概・認識が全然違うはずだ。


「私は戦う。あの2人は不要。私だけで充分。うん、問題無い。帰らせてあげよう」
「お前な……」


 何でそんなに1人で戦う事に固執するんだ。
 お前そんな好戦的なキャラじゃなかっただろう。


 ……あれか? BJ3号機に乗って戦えるって知った時、操縦したくてしたくて堪らなかった俺と同じ状態か?


 まぁ気持ちはわかる。
 男児がロボットに乗る事に憧れる様に、女の子が魔法少女に憧れる感覚は充分に理解できる事だ。
 その力で人助けとかして活躍したい、派手にビシッとズバババーンな事をやってみたい。
 特別な力を手に入れたら、人間誰しもそう思っちゃうモンだろう。
 その感覚はとても共感するし、気持ちは痛い程わかるんだけど……やっぱり、なぁ。


「あー……じゃあこうしよう、俺らと一緒に戦ってくれ」
「えっ」


 未来のロボット兵器と暴威を振るう魔法戦士。
 手を組めば、多分敵はいないだろう。


 うん、良いアイデアだと思う。
 互いにフォローし合えば、互いのリスクだって減るだろうし。
 俺のために苦労をかけてしまう人口が増えるのは気になる所ではあるが……こいつの今の雰囲気からして「首突っ込むな」つっても無駄っぽいし。
 それくらいは何となくわかる、長い付き合いだから。


「……予想外の展開……!」
『うーん、見事に姫様の目論見が外れちゃったね』
「どうした? 何か不都合があんのか?」
「……ぐっ……」


 何やら苦悶の表情を浮かべ、押し黙る悠葉。
 今の提案、そんなに悩む様な事か……?


「…………わかった、そうする」


 何やら納得のいかない表情で、悠葉はこの提案を飲んでくれた。


「……まぁ、同じポジションなら幼馴染である私に一日の長が……」
「何か言ったか?」
「別に。あの女騎士には絶対に負けない」
「何でトゥルティさんに対抗意識燃やしてんだお前……?」
「うるさい、もう私は帰る。魔法使いすぎて疲れた」


 何かちょっと不機嫌そうな感じで、悠葉は飛び去ってしまった。


「何なんだよ一体……」


 空の向こうへ遠ざかっていく悠葉を見送りながら、俺は適当にあいつが不機嫌になってしまった理由を考えてみる。


 ……ダメだな、全然心当たりが無い。
 あいつの事で全く理解できない行動や言動ってのは珍しい。
 気にはなるが、絶対問答インペリアル・アシックは使わないと約束してしまったし……仕方無い。
 若干モヤモヤするが、この疑問は胸にしまっておこう。






「……インペリアル・アシック……?」
『へぇ、すごい能力ですね』
「ああ、戦闘でも今日みたいな感じで使っていけそうだしな」


 夕飯前のひととき、俺とトゥルティさんとBJ3号機はコタツに収まって話合いをしていた。
 議題は俺の能力について。


「………………」
「ん? どうかした?」


 何故か、トゥルティさんは呆然と俺の方を見つめていた。


「…………1つ、お聞きしたい事があります」
「うん、どうぞ」
「その能力の覚醒は、いつ頃?」
「3日前の夜。ほら、俺がここで課題やってて、トゥルティさんがミカン食ってて……」


 そこまで発言して、俺は「しまった」と心の底から思った。
 この能力の発現は、昨日辺りだった事にしてしまおうと思っていたのを、すっかり忘れていた。
 その理由は……


「そうですか……やはりあの時のしつこい質問は、そういう事でしたか……」


 そう、トゥルティさんの裏の顔を知ってしまったあの夜の事である。
 あの時の事は「ただ単に気が向いたから質問しただけだよ!」とシラを切るためにも、この能力の発現日を偽る必要があったのだ。
 それなのに俺は、取り返しの付かないミスをしてしまった。


「あの時私は……ああ、では……筒抜け、と言う事ですか……うふふ、うふふふふ……」


 力無く笑いながら両手で顔を覆い隠し、トゥルティさんは卓上に突っ伏してしまった。


『……何があったんですか?』
「ごめんBJ、トゥルティさんの名誉に関わる事だから、言えない」
「……仕方無いじゃないですか……萌えるんだから……」


 ボソッと何か聞こえた気がするが、気のせいと言う事にしておこう。


「……あー、トゥルティさん?」
「鋼助様」
「うおぅ」


 何かフォローを入れねば、と声をかけた途端、トゥルティさんがガバっと体を起こした。
 表情は涼しさを保っているが、瞳が揺れまくっている。
 かろうじて平静を保ってるって感じだが……


「とりあえず、皇位継承権完全破棄の意思を示すため、我が父タトス・マリーヌの養子になり、私の弟になるという方向でよろしいでしょうか?」
「落ち着いてトゥルティさん」


 ダメだ、この人今すげぇ錯乱してる。
 話が繋がってないっていうか、突然過ぎて意味不明な議題に飛躍してしまっている。


「はっ……すみません、動揺の余り昨夜眠り際に思い描いていた妄想の断片が口から……」


 どんどんボロが出てるよトゥルティさん。
 あー、でもたまに寝る間際に色々妄想しちゃうよね、暇だもんね、うん。


『あれ、でも、さっきのアイデアって、中々良くないですか?』
「何が?」
『「皇位継承権完全破棄の意思を示すために~」と言う話です』


 皇位継承なんて絶対にしない、と言う意図を込めて、皇家から籍を外す……と言う事か?
 いや、元々俺皇家に籍なんて置いてないぞ、俺はずっと鉄軒家の長男だ。
 そんな事しても無駄じゃ……いや、待てよ。


 龍宮帝国はそもそもこの世界じゃまともに認知されてない国。
 戸籍の管理は地上とは完全に別系統だろう。
 だとすれば、地上人である俺の戸籍情報なんてそもそも向こうには存在しちゃいないはずだ。
 龍宮帝国で俺の戸籍を登録し、なおかつ皇家以外に籍を入れる事で「皇家との関わりを捨てる」・「皇位継承権の完全放棄の意思を示す」事になるのでは無いか。という話か。


 確かに、これなら言い逃れ様の無い「皇位継承権破棄」の証拠が残る。
 そこまでやれば、流石の大臣様とやらも納得してくれるんじゃないか?


 あくまで大臣達に俺の揺るぎない意思を示す、と言う意味では、うってつけのパフォーマンスとも思える。
 これが上手くいけば……半年も待つ事は無い。移籍が完了してしまえばそれで終了だ。


「トゥルティさん、龍宮帝国で俺の籍を作って、かつマリーヌ家に入れる事って、可能なの?」
「は、はい。父がその管轄の最高権力を握っているので、いくらでもデータ改ざんが利きます」


 そうだ、タトスのおっさんも大臣だ。
 その権力を借りれば、イケる。


「もっと早く思いついてくれりゃ良かったのに……」
「すみません……って、え? ほ、本当に良いんですか? この案、採用で? 採用しちゃうんですか!?」


 当然だ。
 生命のやり取り云々の問題を早期解決できるんだぞ。
 何かトゥルティさんがすっごく嬉しそうなのがちょっと不安ではあるが、背に腹は代えられない。


 生命の保証のためだ、ちょっと危ない姉ができるくらいのリスクは………………まぁ、うん、背負っても良いだろう。
 流石に「くっ、いっそ殺せ」って状態には陥らないだろうし……うん、多分。



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