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とある離島のインペリアルボーイ

須方三城

5,ロボと騎士と暇な1日

 居間、テレビをつけながら、俺は高校の課題を片付けていた。


 数学やら英語やらはわからん所はググりゃどうにかなるんだが……本当に国語ってのは厄介だ。
 作者の気持ちとか知らねーわ。
 ふと思いついたナイスな構想を、情熱のままに書き記しちゃっただけの可能性とかあるだろうに。
 いちいち書いたモンに深い意味を求められちゃ、作者さんもたまったモンじゃないだろう。


『鋼助さん、少し気になっている事を聞いてもよろしいですか?』
「何?」


 俺の隣りに座って新聞を呼んでいたBJ3号機が、不意に問いかけて来た。


『自室にあんな立派な勉強机があるのに、何故居間の卓袱台で勉強をしているんですか?』
「そりゃお前……ああいう机に向かうと、眠くなるからに決まってるだろ?」
『決まってるだろって……そんなモンですか?』
「そんなモンだ」


 勉強机に座る=寝る。
 多分もう脊髄反射の域だと思う。


 だがこの課題は中学の授業と違い、欲求に任せて放り出す訳には行かないのだ。
 通信高校の課題提出はとんでもなく重要なモノで、モロに留年に繋がる。
 留年は流石に嫌だ。なんとしても回避したい。


 睡魔の強襲を避けるためにも、あぐらをかいてテレビをチラ見しながら、って言うこの勉強環境が丁度良い。


 さて、とりあえず作者の気持ちは適当にそれっぽい事を書いて……と…………うわ、出たよ、「冬の季語を使って俳句を2作品作りなさい」だって。
 どうしてこうも国語科の連中は生徒に俳句を読ませたがるかね。


「……ところでBJ、お前さ、俳句を作るのって得意?」
『俳句ですか? うーん……挑戦した事が無いのでなんとも』


 まぁそうか、ロボットが俳句を作る機会なんて無いわな。


「じゃあ試しに、冬の季語で俳句を作ってみてくれ」
『冬、ですか。ワード検索開始……「寒風が、財布の中に、吹きすさぶ」とかどうでしょう?』
「サラリーマン川柳かよ」
『えー、では……「銀世界、猫は嫌うが、美しい」とか』


 今度は無難だな……まぁ良いや、とりあえず両方とも拝借させていただこう。
 よし、国語はこれで終わりだ。
 次は歴史だ。課題プリントを取り出し、早速スマホでブラウザを開く。


「鋼助様、昼食の支度が出来ました」
「おっ」


 エプロン姿のトゥルティさんが、大皿を2つ持って居間へと入って来た。
 普段、婆ちゃんが酒屋で働いている時間帯である昼の飯は、朝で作り置きをしてくれている。
 でも今朝、トゥルティさんが何やら「雑事は私にお任せを!」とか言い出したらしく、トゥルティさんが昼食を作る事になったらしい。


「料理は素人同然の私ですが……祖母様のご指導を賜りましたので、それなりの出来だと自信があります」


 大皿に盛られていたのは見た目は普通の焼き飯と、婆ちゃんに習ったであろうニンジンシリシリ。ちなみにウチのニンジンシリシリは細切りのニンジンを溶き卵と共に炒め、醤油風味の味付けを施したモノである。


 ふむ、緑色の野菜が無い。素晴らしい。


 婆ちゃんは「嫌いなんですけど!」といくら主張しても絶対に1日1食は苦瓜やらを食わせて来るからな。
 俺の健康を思ってくれるのは有難いが、正直ね。


「それとまだゴーヤーチャンプルーなるモノもあります。取り皿と箸もお持ちしますので、少々お待ちください」


 ……婆ちゃんめ、しっかり仕込んでいたか。


「チクショウめ……」


 まぁ良いや。作ってもらっている立場である以上、これ以上の文句は言うまい。


 ……しかし、今朝まで料理の素人が作った食事か。
 見た目はまともだが、少し不安だ。
 それに「美人さんが料理下手」ってのは、漫画やらドラマでよく見る展開である。


 ちょっと行儀は悪いが、皿等が来る前に焼き飯を指で少しつまんで口に放り込んでみる。


「………………」


 ……うん、まぁちょっと味が薄い感はあるな。
 ビクビクしながらちょっぴりずつ塩コショウを足したであろう調理工程が目に浮かぶ。
 でも、決して不味くは無い。普通に美味い部類だ。
 料理の心得が皆無に等しい女騎士様の作ったモノとは思えない。


 婆ちゃんの指導力が高いのか、トゥルティさんが器用なのか、それとも両方の相乗効果か。
 何にせよ、昼飯が内蔵強化の時間になると言う事態は無さそうだ。


『ふむ……情報取得終了』


 そう言って、BJ3号機が読み終わった新聞を丁寧に畳み始めた。


「お前、未来から来たのに時事欄とか読んでて楽しいの?」
『僕の中に記録されているのは大雑把な人類史と人間社会に置ける常識的知識、マザーウォールやインバーダに関係するデータだけなので、この時代の細かい時事は把握できて無いんですよね』


 まぁ、考えてみればそれもそうか。
 宇宙怪獣と戦う事を目的に開発したロボットに、お笑い芸人とグラドルの熱愛報道とか有名作曲家のゴーストライター騒動とか記録させても、容量の無駄だろう。


『しかし……あれから3日経つ訳ですが、特に何もありませんね』
「良い事じゃん?」


 フーグとやらの襲撃から早3日、龍宮帝国から新たな刺客が来る気配は無い。
 一応警戒は大事って事で、BJ3号機のエネルギーセンサーとやらは常時作動してもらっている。


「このまんま、何事も無く半年経ってくれたら良いんだけどな……」






 一方、龍宮帝国。


「……いけね、第1皇子殺しに行くの忘れてた」


 龍宮最強の4人の1人と謳われる中年騎士、ガルシャークが「あ、ドラマの録画忘れてた」くらいのノリでつぶやいた。


「やべぇー……通りで何か廊下ですれ違うたびに大臣サマの視線が痛かった訳だ」


 俺が行くんで大丈夫っすよぉ、とガルシャークはミストラル大臣に伝えてしまっていたのだ。
 それでいてこの3日間、何事も無かったかの様に過ごしてしまっていた。


 彼は余りノリ気で無い事はすぐに忘れてしまうタチなのである。


「だぁから思い立った日にすぐ行きたかったんだよ……ったく」


 丁度今は手持ちぶさたな感じだし、一丁地上行きますか、と思い立ったガルシャークだったが……


「あ、ダメだ」


 ガルシャークの専用機であるワンオフのBSM『ギャングファング』は、本日調整中だ。
 昨日、技術部の連中から送られてきた通知を見つけ、その事を思い出す。
 あらかじめ通知を送ってくる程の調整作業……通知の中身は詳しく確認しちゃいないが、おそらく今日1日は使えないだろう。


「あっちゃー……もう量産型マーマンで行こっかなぁ……」


 しかし、フーグから聞いた機動兵器の件もある。
 適当な量産型で出るのはちょっとアレだ。
 しくじる可能性が高い。


 別に世間体とかそんなに気にしないガルシャークだが、任務失敗で始末書を書かされるってのは勘弁である。


「うーん……」


 もう何か色々と面倒臭くなってきた。
 ガルシャークは「別に地上人の皇子とかどぉでも良ぃわぁー」なスタンスなので、尚更。
 カイドー派や純血派の連中と違って、皇子暗殺にモチベーションの置き所が無いのである。


「……とりあえず、俺も大臣サマに言い訳を考えとくかぁ……」


 明日はちゃんと忘れない様にしよう。
 と言う訳で、しっかり龍宮帝国独自開発のスマホ的な端末に「皇子ブッ殺」と言うタイトルのアラームをセットしておく。



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