とある離島のインペリアルボーイ
0,龍宮帝国第1皇子、俺
俺の名前は鉄軒鋼助。
この小さな離島、生垣島に現存する数少ない希少種、現役男子高校生である。
まぁ、高校生っつっても通信制だけど。
この島には高校が無いし、本島へ引っ越すのも面倒だった。
何より、俺はここでの暮らしが気に入っている。
離れ小島へと続くコンクリの橋の上から釣り糸を垂らし、夕日が沈むのを眺める……ってのが、子供の頃からの日課だ。
時の流れってのは早いもので、ついこの間高校生になった気でいたのに、もう「年末」と言う言葉を耳にする機会が増え始める頃。
いくら亜熱帯のこの島でも、そろそろ夕暮れ時は半袖じゃ辛い時期だ。
つぅ訳で久々に長袖のシャツを引っ張り出し、俺は今日も日課の夕釣りへと向かった。
「鉄軒鋼助様、ですね」
日課に向かう道中の俺に、見知らぬ女性が声をかけてきた。
「……まぁ、そうですけど」
誰だろう、この人。
外見から判断できる要素をとりあえず整理してゆこう。
まず、その三つ編みにされたブロンドの髪や碧い瞳からして、日本人じゃないだろう。そもそもアジア系じゃないな。
ヨーロッパ方面の貴族麗人、ってのがしっくり来る。
年齢は俺よりちょっと上くらいか。少なくとも歳下って事は無いだろう。
要するに外国のお姉さんだ。
服装は……なんだろう。斬新だな。
甲冑、って言うんだろうか。
とにかく鎧だ。腰には剣もある。
リアルでプレートアーマー付けてる人なんて始めて見た。
ってか何で首から下はフル装備なのに兜はしてないんだろう。
観光客……にしても、なんつぅか……
まぁ、何だ。世の中は広いな。
「初めまして、私はトゥルティ・マリーヌと申します」
何か西洋のお菓子みたいな名前だ。
「はぁ、……で、そのトゥルティさんが、俺に何の用すか?」
今この人も初めましてっつってたし、初対面なのは間違い無いだろう。
一体俺に何の用だろうか。
面倒事は勘弁だが……
だって、婆ちゃんとの約束で8時までには帰宅しなきゃならんのだ。
移動であんまり時間を食いたくない。
「我が父、タトス・マリーヌより、命を受けて参りました」
「タトス……?」
あれ、その名前はつい先日聞いた覚えが……
「龍宮帝国第1皇子、鉄軒鋼助様。このトゥルティ・マリーヌ、生命に代えてもあなたをお守りします」
2週間くらい前になるか。
俺の婆ちゃんが経営する酒屋の店番中、「タトス」と名乗る中年外国人が俺を訪ねてきた事があった。
その時、そのおっさんから聞いた話だが……
この生垣島のすぐそばには、深さウン千メートルと言う大きな海溝がある。
その海溝の底には……『国』があるんだそうだ。
その名も海底国家・龍宮帝国。
本来はこの世界とは別の世界の海底国家だったらしいのだが、20年くらい前に、新天地を求めて国土丸ごと世界を渡ってきたんだそうだ。
突拍子の無い話で正直「何言ってんだこのおっさん」とも思ったし口にもしたが……
まぁ世の中科学じゃ説明できない事も多いし、ひとまず信じて続きを聞いた。
転移当初、龍宮帝国はこの世界の侵略を考えていたそうだ。
龍宮人自体が超能力的な力を持っているし、帝国には『バトルシーマン』と言う機動兵器を擁しているとの事で、戦力的には自信があったと言う。
でもこの世界の軍事について調べを進める内……
「え、この核兵器って何? バカなのこれ? こんなん落としたらしばらくその土地使えないじゃん」
「でも実戦での投下記録もあるみたいですよ」
「うわぁ……この世界の住人ファンキー過ぎんだろ……」
「しかもかなり数があるみたいっすね。こんなん全部ブッ放されたら、地上征服できてもまともに暮らせませんよ」
「自爆兵器の類かよ……うわーシラケるわー。誰得マジで」
「この世界は無いっすね。別の世界狙いましょうか」
「だな。ナンセンス過ぎるわ」
って感じのやり取りが皇帝と軍事最高責任者らの間であったらしく、侵略計画は無しになったそうだ。
更に、
「陛下、ヤバいっす。転移装置ブッ壊れてます」
「はぁぁ?」
「あの転移装置はオーパーツ要素の強い代物だったので……技術者はもちろん死んでますし、まともな文献も残って無い……正直修復は無理っす」
「うわー……マジ詰みじゃん。シラケるわー……」
と、言う訳で、龍宮帝国はこの世界の一部としてやっていく方針で現在に至るんだそうだ。
タトスと言う人物が俺に接触してきた本題は、ここからだ。
実はこの龍宮帝国皇帝、病のためもう大して先が長くは無いそうだ。
当然、後継を選定せにゃならない。
皇帝には息子が1人、娘が1人。
順当に行けばこの息子が世襲するのだが……皇帝は先日、このタトスと言うおっさんを含む重臣達にとんでもないカミングアウトをしたのだと言う。
「ワシ、実は地上に子供がいるんだよねー……てへっ」
この皇帝、実はこっそり地上に出て、地上人女性とよろしくやっていたのである。
当然、ヤれば出来るモノだ。
地上には、龍宮帝国の現皇子よりも前に生まれた皇子がいる。
つまり、皇位継承権第1位の存在が、地上で暮らしていると言うのだ。
そしてその皇子と言うのが……
俺、なんだそうだ。
この小さな離島、生垣島に現存する数少ない希少種、現役男子高校生である。
まぁ、高校生っつっても通信制だけど。
この島には高校が無いし、本島へ引っ越すのも面倒だった。
何より、俺はここでの暮らしが気に入っている。
離れ小島へと続くコンクリの橋の上から釣り糸を垂らし、夕日が沈むのを眺める……ってのが、子供の頃からの日課だ。
時の流れってのは早いもので、ついこの間高校生になった気でいたのに、もう「年末」と言う言葉を耳にする機会が増え始める頃。
いくら亜熱帯のこの島でも、そろそろ夕暮れ時は半袖じゃ辛い時期だ。
つぅ訳で久々に長袖のシャツを引っ張り出し、俺は今日も日課の夕釣りへと向かった。
「鉄軒鋼助様、ですね」
日課に向かう道中の俺に、見知らぬ女性が声をかけてきた。
「……まぁ、そうですけど」
誰だろう、この人。
外見から判断できる要素をとりあえず整理してゆこう。
まず、その三つ編みにされたブロンドの髪や碧い瞳からして、日本人じゃないだろう。そもそもアジア系じゃないな。
ヨーロッパ方面の貴族麗人、ってのがしっくり来る。
年齢は俺よりちょっと上くらいか。少なくとも歳下って事は無いだろう。
要するに外国のお姉さんだ。
服装は……なんだろう。斬新だな。
甲冑、って言うんだろうか。
とにかく鎧だ。腰には剣もある。
リアルでプレートアーマー付けてる人なんて始めて見た。
ってか何で首から下はフル装備なのに兜はしてないんだろう。
観光客……にしても、なんつぅか……
まぁ、何だ。世の中は広いな。
「初めまして、私はトゥルティ・マリーヌと申します」
何か西洋のお菓子みたいな名前だ。
「はぁ、……で、そのトゥルティさんが、俺に何の用すか?」
今この人も初めましてっつってたし、初対面なのは間違い無いだろう。
一体俺に何の用だろうか。
面倒事は勘弁だが……
だって、婆ちゃんとの約束で8時までには帰宅しなきゃならんのだ。
移動であんまり時間を食いたくない。
「我が父、タトス・マリーヌより、命を受けて参りました」
「タトス……?」
あれ、その名前はつい先日聞いた覚えが……
「龍宮帝国第1皇子、鉄軒鋼助様。このトゥルティ・マリーヌ、生命に代えてもあなたをお守りします」
2週間くらい前になるか。
俺の婆ちゃんが経営する酒屋の店番中、「タトス」と名乗る中年外国人が俺を訪ねてきた事があった。
その時、そのおっさんから聞いた話だが……
この生垣島のすぐそばには、深さウン千メートルと言う大きな海溝がある。
その海溝の底には……『国』があるんだそうだ。
その名も海底国家・龍宮帝国。
本来はこの世界とは別の世界の海底国家だったらしいのだが、20年くらい前に、新天地を求めて国土丸ごと世界を渡ってきたんだそうだ。
突拍子の無い話で正直「何言ってんだこのおっさん」とも思ったし口にもしたが……
まぁ世の中科学じゃ説明できない事も多いし、ひとまず信じて続きを聞いた。
転移当初、龍宮帝国はこの世界の侵略を考えていたそうだ。
龍宮人自体が超能力的な力を持っているし、帝国には『バトルシーマン』と言う機動兵器を擁しているとの事で、戦力的には自信があったと言う。
でもこの世界の軍事について調べを進める内……
「え、この核兵器って何? バカなのこれ? こんなん落としたらしばらくその土地使えないじゃん」
「でも実戦での投下記録もあるみたいですよ」
「うわぁ……この世界の住人ファンキー過ぎんだろ……」
「しかもかなり数があるみたいっすね。こんなん全部ブッ放されたら、地上征服できてもまともに暮らせませんよ」
「自爆兵器の類かよ……うわーシラケるわー。誰得マジで」
「この世界は無いっすね。別の世界狙いましょうか」
「だな。ナンセンス過ぎるわ」
って感じのやり取りが皇帝と軍事最高責任者らの間であったらしく、侵略計画は無しになったそうだ。
更に、
「陛下、ヤバいっす。転移装置ブッ壊れてます」
「はぁぁ?」
「あの転移装置はオーパーツ要素の強い代物だったので……技術者はもちろん死んでますし、まともな文献も残って無い……正直修復は無理っす」
「うわー……マジ詰みじゃん。シラケるわー……」
と、言う訳で、龍宮帝国はこの世界の一部としてやっていく方針で現在に至るんだそうだ。
タトスと言う人物が俺に接触してきた本題は、ここからだ。
実はこの龍宮帝国皇帝、病のためもう大して先が長くは無いそうだ。
当然、後継を選定せにゃならない。
皇帝には息子が1人、娘が1人。
順当に行けばこの息子が世襲するのだが……皇帝は先日、このタトスと言うおっさんを含む重臣達にとんでもないカミングアウトをしたのだと言う。
「ワシ、実は地上に子供がいるんだよねー……てへっ」
この皇帝、実はこっそり地上に出て、地上人女性とよろしくやっていたのである。
当然、ヤれば出来るモノだ。
地上には、龍宮帝国の現皇子よりも前に生まれた皇子がいる。
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