動物輝装纏鎧THEドッグオー

須方三城

5,俺達の旅はこれからだ



「遅い」


 ハートの髄までフルボッコしてやったローグマンを警察に届け、広場に戻ってみると、コハネが超ブスっとした顔でベンチに座っていた。
 ……まさか、この数時間、ベンチから微動だにしなかったのか、こいつ。
 確かにここで待ってろ、とは言ったけど……


「……って、待てコラ、その空の小瓶は……」
「待ってる間に全部食べちゃった」
「担保って言葉の意味わかってんのかよ……」
「わかってるわよ。馬鹿にすんな馬鹿」
「…………」


 もう何だ。
 こいつの横暴さにも慣れてきたな。


「で、旅、行くわけ?」
「ああ。今はまだ昼間だ、文句ねぇだろ」
「お昼ご飯がまだ」
「………………」


 ああもう……昨日の夕方にはもうこの町を出てる予定だったのに……
 それもこれもやっぱり全部あのローグマンって奴のせいだ。


『おお、流石に名前を覚えたか』


 まぁ、多分すぐに忘れるけどな。


「じゃあ、さっさと昼飯を食って、行くぞ」
「うん、お昼は何にしよっかなー……」


 ったく……何で俺がこんなガキに付き合わなきゃならないんだ。


『そう言うなら、さっさと見捨てて行ってしまえば良いでは無いか』


 でも、あの世で尻尾をどうこう言ってただろ。
 実現されたら溜まったもんじゃない。
 どういう風に死ぬ事になるかはわからんが、とにかく死んだ後は安らかに眠らせてくれ。


『本当、厄介なのに捕まったな』


 全くだ。


「そうだ、朝は閉まってたハンバーガーのお店、あそこ行こう!」
「はいはい了か……うぐふぅ!?」
「わっ!? いきなりどうした訳!? 何? お腹痛いの?」
「あ、ああ……」


 腹を抑えてしゃがみ込んでんだ、腹が痛いに決まってるだろ。
 ぐぅ……ローグマンのチョコ爆弾の効果が回って来やがった……!


 くそ……マジでツイてねぇ……
 思えばローグマンと会ってから踏んだり蹴ったりだ。


「と、トイレに……」
「えー、ご飯が先よ」
「ふざけんなよコラ!」
「流石に冗談よ」


 きゃは、と笑うコハネ。
 ああ、ブン殴りたい。でも力んだら漏れそう。


 これから数日、こいつとの旅か……


 ……俺、ハゲるかも知れない。



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