拷問部屋とヘタレと私

須方三城

九日目。狼が泣く。

 日付が変わり、五分程が過ぎた頃。


 湯煙踊るユニットバス式の浴室。湯煙の発生源は、浴槽に張られた薄翡翠色のお湯溜まり。


「ええお湯ですなぁ~……」
「ギパァー~……」


 湯の中に裸体を沈め、お団子ヘアのエミリナと巨大ムカデのムッチンが嬌声を上げる。


「本当、極楽ってここの事を言うんだろうねー」
「ギパー」


 白い浴槽の淵に顎を預け、エミリナは「ぷひー」と阿呆みたいな溜息。
 その隣りで、ムッチンも顎にあたる部分を淵に乗っけて「ぐぺー」とエミリナの真似をする。


「いやーそれにしてもさー……ロハで朝一と寝る前にお風呂に入れる上、自然由来の入浴剤入り湯船でゆっくりって……あーもう。前までの私の生活って何? 囚人以下?」
「ギパー」
 ※難しい事はわからないけど、そうなんじゃないのー。


 エミリナが住んでいたアパートには風呂など無く、近所のカプセルホテルが副業オプションで行っている貸し風呂通いだった。
 そして月末は大抵その貸し風呂代の捻出すら難しくなり、キッチンの流しで頑張っていたのだ。


 それが今ではどうだろう。
 お金の心配など皆無でシャワーを浴び、身体を洗い終えたら、ギルエスが拘り抜いたお肌に優しい入浴剤が投入された湯船で極楽夢気分だ。
 風呂から上がれば、これまたギルエス拘りの柔軟剤で洗濯された良い匂いのするバスタオルと囚人服が待っている。
 結構匂いフェチの気があるエミリナとしてはもう天国でしかない。


 風呂に入る度に、一生ここに住みたいと思う。


「でもねー……悲しいけどそうも行かないよねー……」
「ギ?」
「いやさー……だって私、ぶっちゃけほとんど一般人だしー……」


 ギルエスは以前、エミリナの身辺調査を行っている風な事を言っていた。


 つまり、いずれはエミリナが真実を吐き続けていた非常に協力的な捕虜であると判明する訳だ。
 それと同時に、エミリナから引き出せる有益な情報など一つも無いと言う事実も明らかになるだろう。


 そうなれば、必要以上の責問が行われる事は無い。つまり、この拷問施設とはオサラバだ。
 無難に行けば厳重注意、罰金、そしてここでの事を一切公言しない事を条件に祖国へ強制送還と言う流れか。


「こんな夢みたいな生活を知って、私は外の世界で生きて行けるのかねー……」
「ギパ、ギパパ!? ギパ!」
 ※不安なのね!? 大丈夫、エミにゃんには私が付いてるわよ!


 ムッチンは「世界に負けちゃ駄目!」と言わんばかりに一鳴し、無数の足の一本でワソワソとエミリナの肩の柔肌を撫で始めた。


「ふぇっつ!? び、ビックリしたー……もーくすぐったいよー。いきなりどしたの?」
「ギパッ! ギパッ! ギーパ!」
「んー……? 何言ってるか全然わかんないけど、もしかしてムッチン応援してくれてる? ありがとねー」


 応援してくれるのは嬉しい所だが、やはり不安なモノは不安だ。


「あーあー……ギッさんが永遠に私を養ってくれないかなー……死ぬ気で頼めば、あの性格上、情けをかけてくれそうだけど……」


 ギルエスの事だ。「このままじゃ私死ぬよ!? 化けて出るよ!? 恨めしエミにゃんしちゃうぞ!」とか言えば、養ってくれそうではある。
 だが一つ、大きな問題が。


「私の身体はギッさんには刺激強過ぎるだろうから、共同生活とか無理臭いのよねー」


 ギルエスが女性免疫極低なのは二日目の時点で把握している。だのにエミリナと共同生活なんて始めたら、多分彼の心臓は持たない。
 唯一の長所とも言える恵体がここに来てネックになるとは、エミリナも想定外である。


「……うーぬー……」


 ギルエスが養ってくれないと、エミリナが死ぬ。
 エミリナを養うと、ギルエスが高確率で死ぬ。


「世の中ままならぬー……」


 やだやだ、とエミリナは湯船の中で背伸び。


「……ギパ?」
「ん? 今度はどうしたのムッチン」


 不意に、ムッチンがある一点に顔を向けた。
 二本の触覚がピンと張っている。何かを警戒している様な感じだ。


「?」


 ムッチンがじっと見ているのは、浴槽から少し離れた所にある様式便器…の少し上。三枚の羽が回転する換気扇だ。


「換気扇がどうかし…」


 エミリナの言葉を遮る様に、ド派手な破壊音が響く。
 換気扇が、内側から弾け飛んだ。


「ギパッ!?」
「わにゃっ!?」


 まるで、小さな爆弾が炸裂した様な、そんな感じだ。


 突然の出来事に、エミリナとムッチンは仲良く湯船の中でひっくり返ってしまう。


「ごぶぼっ!? あぼぁっはぁ! 酸素酸素! ビックリしたぁもー! 結構お湯飲んじゃったよー……」


 お世辞にも美味しいとは言えない自然の味がお口の中にー…、とエミリナはげんなり。
 ぺっぺと口の中のお湯分を吐きながら、エミリナはムッチンを救助しつつゆっくり立ち上がる。


「ヴォホ! 良ィねェ! ブロンドの巨乳ちゃん、大当たりだァ!」
「ほへ?」


 聞き覚えの無い、獣の唸りの様に低い声。


 声が聞こえた方へエミリナが視線を向けると、便器の蓋の上に何かがいた。


「……………………え、犬?」


 便器の蓋の上にチョコンと佇んでいたのは、モフモフしてそうな灰色の毛玉…では無く、灰色の小型犬。
 毛がモコモコし過ぎているせいで足は完全に埋もれ、顔も鼻先しか見えない。遠目に見たら完全に灰色の毛玉だ。


「アァ!? 犬じゃアねェよッ! どこに目ェ付けてんだブロンドォ!」
「いや、どこにお目目あるの? は、こっちの台詞なんだけど……って、あれ? って言うか犬が喋ってる?」
「ギパパ……!」
 ※すごい不思議……!
「犬じゃアねェっつゥの! いいかァ、俺ァ、ジンロ・ガロ! かの有名な『黒い閃光ブラック・グリッターズ』の戦闘員であり、正真正銘『狼男』だッ!」
「ブラック・グリッターズって……と言うか、狼男?」
「信じらんねェかオラ? まァ、狼男なんざ想像上の生き物だもんなァ」
「あ、いや、別に狼男はいても良いんだけど……」


 奇跡のムカデを抱きかかえて、今更狼男の存在にケチを付けるつもりは無い。
 今、エミリナが「狼男」の後に付けた「?」は、「え、その見た目で狼男は無くない?」と言う意図の元の?だ。


「えーと、ですな……まず…」
「何だ今の音は!? エミリナ・スカーレット! 何かあったのか!?」


 エミリナが色々と順序良く疑問を口にしていこうとした、その時、勢い良く戸を開けて大男が突入して来た。ギルエスだ。
 たまたまエミリナの拷問部屋を訪れた所で、換気扇の破壊音を耳にしたのだろう。


「あ、ギッさん」
「大丈夫かエミリ…」


 やっほー、と挨拶しかけた所で、エミリナはある事に気付く。


「あ……」


 エミリナは今、全裸だ。入浴中だったのだから当然。
 そして今、エミリナは浴槽の中で立ち上がっている。


 つまり、彼女の膝から上を遮るモノは、薄らと立ち上る湯煙のみ。


「ナぼぶらっ」
「ギッさぁああああああああああああああん!?」


 純粋童貞ギルエスがその姿を見て、無事で済む訳が無い。


 ギルエスは、ぱんッ! と言う破裂音と共に大量の鮮血を鼻から放出し、ビターンッ! 仰向けで卒倒してしまった。


「ギッさん!? 大丈夫!? ねぇ!? 大きめの風船が割れる様な音がしたよ今! 鼻の血管大丈夫!?」
「……な…なんて、格好、して…る、んだ……お、前は……」
「いや、そこはお風呂だから多少はね!?」
「ギパッ!」
 ※お、鉄分ゲットですわ!
「あ、ダメだよムッチン! そんなの飲んだらヘタレになるよ!」


 エミリナの制止も聞かず、ムッチンはささっとエミリナの手をすり抜けてギルエスの元へ。そしてギルエスに絡み付きながら、血溜まりと化したその鼻血を啜り始める。


「あーもう……どうしようこの状況……」


 とりあえず湯船から上がってギルエスをどうにかすべきだろう。


「って、おォォい! このジンロ様を忘れてんじゃねェぞォオラァ!」
「あ、ごめん。ナチュラルに忘れてた」


 そうだ、ギルエス乱入のせいでそっちに気を持って行かれてしまったが、便器の上でも変な事になっているのだった。


「ちょっと状況まとめんぞコラァ! 俺ァ、ジンロ! ブラグリの誇る改造人間で戦闘員! 狼男のジンロ様よォ! 換気扇ぶっ壊してこんばんわだコラァ!」
「へー」
「もうちょっと興味持てブロンドォ! 寂しいと遠吠えすんぞゴルァ!」
「いや、ごめん。ちょっとギッさんどうにかしてからで良い? 流石にあの出血量は心配」
「アァン!? じゃアさっさと済ませろよゴルァ!」








「これでよし、っと……」


 ギルエスの鼻にトイレットペーパーを詰め、エミリナは立ち上がる。
 完全に気絶しているらしく、ギルエスは白目を剥いてたまに指先がピクピクする程度だ。


「むー……裸を見られるのは別に良いんだけど、裸を見られて白目剥かれるってのはちょっとムカつくかも……」
「ギパパ」
 ※乙女心ね。わかるわ。
「おうおうおう! 終わったかゴルァ!」


 エミリナがギルエスを処置する間、湯船に浸かって一息ついていたジンロが吠える。


「うん。で、何だっけ。えーと…コンロ?」
「ジンロだオルァ! 耳元で遠吠えしてそのイカれた耳を更にイカしたろかオォウ!?」


 ジンロは浴槽の淵に登ると、全力で身震いしてその小さな身体に纏わり付いた水気を払い始めた。
 一通り水気を払い終えると、


「どこまで言ったっけかァ!? ゴルァ!」
「ジンロわんはブラグリの戦闘員で改造人間で狼わん」
「おう、ちゃんと聞いてたのか。その通…違ェ! ちょっと違ェぞおォいコラァ!? 狼男な? ワーウルフな!? 人狼な!? ジンロだから人狼って覚えると簡単だろオラァァ!」
「…………………………」
「んだよ? その面はオラァ」
「そこに姿見があるわん」
「アァン? 鏡がどうかし…んだコリャアアアアアア!? 俺、犬じゃァねェかァッ!?」
「……気付いてなかったんだ……」
「う、嘘だろ!? おい!? 話が違ェぞ!? 満月の夜、変身後の戦闘モードはまさに獣って感じになるって……!」
「まぁ、まさに獣だね」
「ギパ」
「ッ…通りで手は肉球仕様で使いモンになんねェわ、二足歩行できねェわ、視線が異様に低いわ、前が見辛いわ……!」
「踏んだり蹴ったりだね」
「ギパ」
「こんな……こんな馬鹿な……」


 壁に埋め込まれた姿見の前で、灰色の毛玉がぐったりとうなだれる。


「あー……えーと……その、落ち込んでる所に悪いんだけど、質問良い?」
「……んだよ……何でも聞けよオラァ……」
「何でジンロわんはこんな所に?」


 状況から察するに、換気扇をぶっ壊したのはジンロだろう。換気扇からこんばんわとか言ってたし。
 つまり、わざわざ換気扇の通気口から侵入し、ここへ来たと言う事だ。


「俺ァよォ……まァ、ブラグリの改造人間だからよォ……とある作戦中に捕まって、ここの隣りの部屋で拷問受けてたんだよオラァ……」
「へー、お隣さんだったんだ」
「そんでよォ。今日満月じゃんよォ。俺実は改造されて初めての満月でよォ。ワクワクしながら変身したんだよオラァ……そしたらスルン、って手錠が抜けてよォ……」


 その時ジンロは「んお? なんか抜けたぞオラァ。壊す手間省けてラッキーオラァじゃねェか」と、身体が縮んだ事を欠片も気にもしてなかった。


「とにかく、自由に動ける様になって、脱走しようとしてた訳だよオラァ。そしたらよォ、何か俺好みの金髪巨乳の匂いがしたからよォ。その匂いを辿って真っ直ぐ進んだら風呂場で、換気扇で、ここって訳だオラァ」
「金髪とか巨乳って匂いでわかるんだ……」


 試しにエミリナは自分の匂いを嗅いでみるが、入浴剤の匂いしかしない。
 ジンロは相当鼻が利くらしい。


「ん? で、その金髪巨乳の私に会いに来てどうするつもりだったの?」
「そりゃア、狼男の狼の部分に身を任せて、そのおっぱいをムシャぶり尽くすつもりだったんだよオラァ」
「それ、多分だけど男の部分じゃないかな」
「……まァ、どっちでも良ィわ…もォそんな気分じゃねェよコレ……超かっけェ狼男になれるって聞いたからブラグリに入って改造手術まで受けたのによォ……」
「ご、ご愁傷様……」


 湿った毛玉からすごい哀愁が漂っている。


「俺、狼が好きだからよォ。憧れてたんだぜ、狼男……せめて…せめて狼になれてたら、こんな気分にはならなかったろうよォ……」
「完全に犬だもんね、今のジンロわん」


 毛の色的に、もう少し大型犬に近い姿だったなら、薄目で見れば狼に見えなくも無かったかも知れない。
 だが残念。ジンロは今、完全に小型犬。それも毛玉である。毛が伸びすぎた灰色のトイプードル的な犬でしか無い。


「この気持ち、どォすりゃア…」
「わんばんこー! エミリナさんわんばんこッ! わん! ばん! こッ! 夜のギャパ奈がナナナナナ!」


 と、ここで聞き慣れた喧し声。
 ポンチョを纏ったリス系騒音少女、ギャパ奈だ。


「あれ、ギャパ奈ちゃん? こんな時間にどうしたの?」
「あらやだエミリナさん裸じゃないスかーッ! お風呂でなんて格好! 歩くハレンチ! まぁその辺は置いといて! ギャパ奈はお兄ちゃんにお夜食デリバリー! でもオフィスにも休憩室にもノーお兄ちゃん! なのでここかな、と…のはっ!? お兄ちゃんが気絶してる!? 何で!?」
「あー……これはねー」
「しかも白目剥いて鼻血まみれでムッチンホールドとか絶対面白い状況ッ! なんでギャパ奈が到着するまで待てなかったんですかもぉぉぉこの早漏ッ! もっかい! もう一回何があったか再現プリーズミー!」
「テメェは……昨日の騒がし小娘オラァ!」
「おろろろろ? 何やら不思議生物が増えてる! でも今はお兄ちゃんが先! ほらほら! 早く起きて再現! リトライなのですよ! 眠れる風呂場のお兄ちゃんは妹の愛のビンタで目を覚ますのです!」
「ギャパ奈ちゃん、これ以上血を出したらギッさんマジ死するから日を改めてあげて」
「おい! まず俺を無視すんなオラァ! つゥか、自分で言うのも難だが無視できる存在感じゃねェだろオラァ!?」
「えぇぇぇ! そりゃないぜエミリナすん! ギャパ奈は刹那を生きてるんですなのよ!? だのに我慢!? 今はまだその時では無いと!? そうでもないとギャパ奈は思うのですが!? そこんとこどうですかねムチ神様!」
「ギパッ」
 ※今はまだその時じゃないと思うわ。
「テメェ……アァ、丁度良いぜオラァ! 昨日の夜、良ィ気分なのを邪魔されてテメェにはムカついてた所だ!」


 ジンロは牙を剥き、臨戦態勢。
 狼男になれたと思ったら犬だった悲しみ、まともに取り合ってもらえない切なさ、そして昨日の夜の件。
 それらから来るフラストレーションを、全てギャパ奈にぶつけて発散しよう、と言う考えだ。


「うなっ!? 何やら殺気を感じるなのです! ギャパ奈とやる気ですか御犬様!? ユーファイトミー!?」
「アァそォだ! ミーファイトユーだゴルァ! 見た目はこんなんだが、俺のパワーはモノホンだぞオラァ!」


 今のジンロは小さくて可愛いが、その内に秘めたパワーは狼男と呼ぶに相応しいモノである。
 その顎の力は、大福か何かを齧り取る様にチタン製の球を簡単に食い千切る事ができる程。
 見た目こそアレだが、性能はマジなのだ。


「覚悟しろやオラァ!」


 タイルを蹴り、灰色の毛玉が跳ぶ。


「そんな! こんなか弱き乙女に容赦なく飛びかかるなんて……ギャパ奈には特製催涙スプレーをお見舞いする事しかできません!」


 ギャパ奈が瞬時にポンチョの下から取り出したのは、口紅サイズの小さな白い筒。
 側面に小さな穴が開いており、そこから内容物を噴霧するのだろう。


「はっ! そんなモンが効く訳みぎゃォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!?」


 ぷしゅっ、とギャパ奈の噴霧攻撃を受け、ジンロが絶叫。ギャパ奈に飛びかかった勢いのまま、壁に衝突してめり込む。


「ぎ、ィ、づァアアアァァ……!? んだ、こ、りゃア!? 目が、鼻が、焼け、や、焼けりゅゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!? ばが、ば、馬鹿なァ!? 通常状態でも催涙スプレーなんぞ平気な身体に改造されてたはずだぞォ!?」
「市販のそれと一緒にしちゃいやん! ギャパ奈ブレンドの催涙スプレーの成分は、喰らった相手の将来の事とか全く考慮してないのです☆ イエス!」
「鬼かテメェはァァァアアアァァァアアァァァ!?」
「鬼ではなくギャパ奈なのです☆ さて、追い打ち行くなのですよー! ギャパ奈に喧嘩を売った勇気を称え、取り返しの付かない事をしてやるのです!」


 次にギャパ奈がポンチョの下から取り出したのは、四角くて黒い物体。
 エアコンのリモコン…の様にも見えるが……


「じゃーん、ギャパ奈カスタムスタンガン~! インド象もびっくり一殺イチコロな代物なのです! 運良く生き残っても後々後遺症でジワ死は必至! まさしく絶対絶命の一撃をインド象に! 台所にインド象がよく出て困る、なんて主婦にオススメ!」
「インド象に何の恨みがあんだオラァ!? つゥかインド象がそんなゴキブリ感覚で出て来るかァってヴォルふァアアァァァァァァァァァァアアアアアアァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァッッッ!? アッ」
「ギパ」
 ※無慈悲ね。
「まぁ、先に手を出しちゃったのはジンロわんだし……」


 多少スタンガンを喰らうのも仕方無いだろう。


「お、ら、ァ……」


 その呻きを最後に、ジンロは動かなくなった。
 死んではいないっぽいが、完全にトんでいる。


「ふぃー! お仕置き完了なのです! 一仕事フィニッシュでギャパ奈満足! 今日の所はお兄ちゃんも見逃してあげるです!」
「えーと……じゃあギャパ奈ちゃん、ギッさん運ぶの手伝ってもらって良い?」
「ほい、了解なのです!」


 こうして、満月の夜の騒動は大した広がりも見せずに収束を迎えたのだった。

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