B.L.O~JKがイケメンになってチェーンソーを振り回す冒険譚~

須方三城

14,集大成の一撃は無邪気な破顔と共に。



 まぁ、なんだろう。
 とんだ茶番を見せられたけど、ビーくん似アバターの攻撃でモヤシーヌちゃん(歪)を倒したって事は……


「これで解決?」
『いえ、まだです。モヤシーヌ・クライシンカイスキーの活動は休止しましたが、【歪みの核】は破壊できていません』


 それもそうか。ビーくん似アバターは祝福された武器で攻撃してないもの。
 光のオーブが言う【歪み】とやらを破壊できるのは、このキラキラを帯びた武器だけらしいし。


「じゃあ、彼が起きるまで、待ち?」
『そうなり……、!』


 光のオーブの声が、途中で止まった。


 その理由を、私もすぐに察した。


「……何、あれ」


 私の視線の先、ビーくん似アバターと仲良く並んで白目ゴロンしてるモヤシーヌちゃんの全身から、薄い黒モヤみたいなのが沸き立っている。


「ヴ、ヴオ、ァ、な、んだ、この茶番はァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「!」


 洞窟内を駆け抜けたのは、獣の咆哮の様なガラガラ低音ボイス。発生源はモヤシーヌちゃんから沸き立つあの黒モヤだ。


 黒モヤはゴボゴボと泥があぶくを立てる様な音を伴いながら、どんどんと吹き出して行く。


『あれは……【歪みの核】! 【歪みの魔王】です!! モヤシーヌ・クライシンカイスキーが意識を失った事で支配を逃れた【歪みの魔王】が、彼女の肉体を放棄して出てこようとしています!!』


 あー……まぁ、そらそうでしょうよ。
 魔王さんからしてみれば、取り込もうとした小娘に逆に取り込まれてこき使われた挙句、何をさせらたかと言えば寒い茶番劇の舞台装置だ。
 こんな所に住んでられるかァァァ!! と飛び出したくなる気持ちは至極道理だろう。


「……って事はさ」
『はい。貴方の出番ですね』


 おーらい。


「ヴゥ、クソが、クソ共がァァァ!! 我は魔王ブラァァイオンンンンッ!! 人間如きにここまで舐められて……おのれェ、全員ぶっ殺してゴルァァァ!!」


 モヤシーヌちゃんに入ってたせいか、随分と言葉が堪能になったねブライオン、もとい【歪みの魔王】。


 とか何とか思っている間に、【歪みの魔王】である黒モヤが後方へ飛び退ってモヤシーヌちゃんの身体から完全分離。
 黒モヤはすぐに黒曜石でできたライオン像っぽい元のブライオンフォルムを形成した。


『ヴラド・レイサーメル、【mくしjkkzvw@w LV一四二】とエンカウント』


 もうそれいいから。


 さて、と、じゃあ……一応、初めてのボス戦な訳だし、大盤振る舞いで行こうか。


 ブレイブストライクはさっき撃ったからバフはまだ続いてるから……


 まずは……AS【ソードマスター】上限達成で獲得したSP【剣武一念けんぶいちねん】。


『ヴラド・レイサーメルがSPスキルパフォーマンスを発動。一定時間、与ダメージとクリティカル発生率が上昇。攻撃をガードされた場合、ガードによる与ダメージ減少率が大幅軽減され、更にクリティカル発生率が大幅上昇』


 次、【ビーストハンター】の上限達成で獲得したSP【狩人の呼吸】。


『ヴラド・レイサーメルがSPを発動。一定時間、獣系の魔物・魔王に対してクリティカルと付加効果全般の発生率が超大幅上昇』


 次、【ランペイジ】の上限達成で獲得したSP【暴虐の王モロクレイド】。


『ヴラド・レイサーメルがSPを発動。一定時間、与ダメージとクリティカル発生率が大幅上昇。認識圏内の魔物・魔王の数に応じて更に上昇』


 次、【プロフェッショナルキラー】の上限達成で獲得したSP【仕事人〈殺〉】。


『ヴラド・レイサーメルがSPを発動。一定時間、自身を含め認識範囲内にいる味方アバター全ての【即死】系付加効果の発生率が上昇』


 ラスト、【バーサーカー】の副産物、【狂鬼嵐武レックレスチャージ】。


『ヴラド・レイサーメルがSPを発動。一定時間、与ダメージとクリティカル発生率が超大幅上昇・攻撃モーションが倍速。効果発動中、SP発動・ガード動作・アイテム使用が不可能』


 ぅ、おおおおおおおッ……何これ、何これッ……ぁ、おおおおッ……身体がクッソ熱い……!!
 他のバフ技発動しても何も無かったのにィ……【狂鬼嵐武レックレスチャージ】何これずるい……こんな熱いの……クセに、クセになってしまう……!!


「くッは、ァァアアア……!!」


 だ、ダメだ……息を吐き続けないと、自分の吐息の温度で肺が焼け爛れそうだ。
 血が熱い、肉も熱い。骨も溶けそう。もう苦しいくらいだ。
 口から止めどなく白い蒸気が……口だけじゃない、鼻や耳、目尻の涙腺からも出ちゃってる。身体中の穴と言う穴から蒸気と熱い汁が漏れ出している気がする。


「ぉ、おお、おおおおおぉお、おおおおおおおおおおおッ!! おおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉおぉぉおおおおおおおぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉおおおッッッ!!」


 ウォークライ、って言うのだろうか。叫ばずにはいられなかった。


 あは、そりゃあ、SPもガードもアイテムも使えなくなっちゃうよ、こんなの。
 こんな状態であれこれ考えて器用に何かをこなすなんて、絶対無理ィ……!
 テクニックなんて要らない……情熱のままァァ……イっちゃう……!!


「ヴォルァァ!! なんだ貴様!! やかましいぞォォ!!」
「おぉおおおおおお!! おおぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
「ヴォ!? ごめん、今なんて!?」


 うん、ダメだ。「あんたもヴォーヴォーうるさいでしょうが」と反論したつもりだのに、人語が出ない。


 ってかもういいや。うるさくて結構。
 私は今……どうしてもやりたい事がある。


「おぉおああああ、おおおおおおおおッ、おおおおうあああおおおおおお!!」
「ヴォルア!! 何語だそれはァァァ!! 訳がわからんぞ!!」
「あああおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッおおあぁおおおぉお!!」
「無視か貴様ァァァ!! マナーがなってないぞヴォゴラァァ!!」


 うっさい。こっちだって一応ちゃんと人語を喋ってるつもりなのよ。
 でも、ダメ。舌が暴走してて制御できない。声を張る事しかできないバカなお口になっちゃってる。


 これが【狂鬼嵐武レックレスチャージ】ッ……!!
 しゅごい……しゅごいのぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおうううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!


「ヴォロアアァ!! ヴォハハハ!! 我に正面から突進してくるとは良い度胸だ人間ッ!! 貴様をボロカスにして、次はそのムキムキな素敵ボディを我がモノとしてヴォルァしてやる!!」


 おおあああおおああおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!
 おおあおあおおをおおおおおう、おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉッ、おッ、おぉッ、おッああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!


「……おい? 待て……何か……恐ッ……何か恐いぞ貴様…ちょっと待て、ちょっと一旦止まれ。何か変だ貴様、変だぞ貴様その目の色、絶対変だ貴様、もしかして変態か貴様?」


 うぉあああ、おおうあああああ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおうぁああああぁぁあ!!


「待て、待て、待て待て待て止まれ止まれ止まれってヴォ!! ヴォォ!? 恐いこいつ!! ヤダこいつ!! バーリアッ!! エンガチョォォォオオオ!!」


 ぎぃッ!? おぉああちょこざいぃぃッ……今まさに脳天にマサクゥル挿入できそうって所で黒いバリア貼りやがったぁぁああああああッ!!!!
 ガード行為かクソがクソがクソがァァァ!!
 仮にも魔王がセコい真似ぅをぉぉぉおおおお……!!
 もォうちょっとでズブズブゥゥゥウウウウウウウウってグイグイグリグリィィイイイってできたのによォォオオオオオッ!!
 生意気な抵抗をしてんじゃあああああああああないわよぉおあうああああああああああ!!


 ……でもでもでもでもでもでもでもでもでもそんなの関係ねぇぇぇッ……私のスキル構成ナめんなよォォォア……!!


 私はなァァ……【パワフルキラーLV一〇〇】を習得してんだァァよォォ……!!
 このスキルの上限達成ボーナスは【クリティカル発生時に】小型魔王のガードまでなら破壊できる付加効果【ガード完全破壊】が発生する様になァァる……
 つまり、小型魔王のあんたのガードなんてさァァァ!! 【クリティカルが発生しまくれば】ッ!! すぐに破れるんだよぉぉおおおおお!!


 私のマサクゥルは一撃で多段ヒットォォォ……何発も何発も入れてやるゥ、挿入はいるまで入れ続けてやるゥ!!


 それになァ、私は今ァ、剣攻撃でのクリティカル率が上がるSP【剣武一念】、獣系魔物に対してクリティカル率が上がる【狩人の呼吸】ッ、敵の数が多ければ多いほどクリティカル率が大幅に上がる(一体からでも発動する)【暴虐の王モロクレイド】、そしてクリティカル率が超大幅に上昇する【狂鬼嵐武レックレスチャージ】を重ねがけしてんだよぉぉぉおおおお!!


 それだけだけだけじゃああないしぃぃ……


【マッドネス LV一〇〇】ッ!!
 これでクリティカル発生率が上昇ォ!! LV上限ボーナスで更にアゲェ!!


【ソードマスター LV一〇〇】ッ!!
 種別に【剣】を含む武器での通常攻撃でクリティカル発生率が上昇ォ!!
 マサクゥルなら問題なしィ!!


【インファイター LV一〇〇】ッ!!
 LV上限ボーナスで種別に【近接武器】を含む武器による通常攻撃でのクリティカル率が大幅上昇ォォ!!
 これもマサクゥルならオッケェェイッ!!


【ザ・キラー LV一〇〇】ッ!!
 シンプルにクリティカル発生率が微上昇ォォォッ!!


【クイックキラー LV一〇〇】ッ!!
 最初の一撃から極短時間、クリティカル発生率が上昇ォッ!!
 天の声の言う通りなら、あんたとはさっきエンカウントし直した事になってるからねェェェ……まだまだ持続してるよォォオオ!!


【ブルータルキラー LV一〇〇】ッ!!
 自分よりもLVが低い魔物・魔王に対しての攻撃のクリティカル発生率が上昇ォ!!
 更にLV上限ボーナスゥ、自分よりもLVが低い魔物・魔王に対しての攻撃に、ガードされた際のダメージ軽減率を減少させる付加効果【ガードバング】を追加ァァ!!
 あんたのLVは一四二でしょぉぉ? 私のLV表記は××××だけどさァ……確実に三桁はとっくに超えてるから問題無ァァアい……!!


【オーバーキラー LV一〇〇】ッ!!
 LV上限ボーナスにより、攻撃した魔物・魔王の残HPが少ないほどクリティカル発生率が上昇ォ!!
 ガードしててもHPは極少量ずつ減ってくゥ……じわじわじわじわじわじわと効力アァァップの高まりんぐゥゥ……!!
 しカも【ブルータルキラー】のボーナスで獲得してる付加効果【ガードバング】のおかげでスピードアァァァアアアアアアプッ!!


【コンボマスター】ッ!! LVは確認してないから知らん!!
 コンボ数に応じてクリティカル発生率が上昇ォォォオオオオオッ!!


 良い!?
 これどう言う事かわかるゥゥ!?


 私はねェ、クリティカル発生時に確率であんたのガードを破壊する事がでキる!!
 そシて四つのSPでクリティカル発生率をメチャクソ上げあげアゲェェァ!!
 更に八つのASでクリティカル発生率をもっともっトもっとブチあげェェェッ!!


 でさデさでさァァァ……ガードを抜けて、私の攻撃があんたに直撃シたら…私の攻撃があんたのその脳天にぐぃぃいいいって食い込んだらァ!! 何が起こるト思う!? ねぇ!? クイズだよ!? ほら、何が起こるんでシょぉおおーうかッ!?


 実はねぇ、私すっごく良いスキルも習得してルンだァァ……


【プロフェッショナルキラー】ァァ!!
 クリティカル発生時にねぇ!! 小型魔王にも効いチゃう付加効果【完全即死】が確率で発動スるんだァァ……☆
 発生確率はすっごぉく低いんダけどさぁぁ……ちゃぁぁンとSP【仕事人〈殺〉】で即死系効果の発生率あげてるから安心シてね!!


 楽シみじゃない? 楽シみくない? 楽シみジャアァンッ!?


 このバァァリアを破ったあとにさぁぁ……あんたはどウやって死ぬと思う!? ねぇ!?
 マサクゥルの素攻撃でHPゼロになるのが先かな!?
 完全即死が発動して死んじゃうのが先かな!?
 どっちダろうね!? 私としては前者の方が長ァく楽シめそうだから楽シいかな!?
 あッ、じゃああ【仕事人〈殺〉】は発動シなけりゃ良かった失敗失敗でもいいやこれは勝負だね前者なら私の勝ち後者ならあんたの勝ちぃぃあぁああ私って勝負事あんま好きくないはずだのになんでだろぉぉお今はすっごく楽シいぃ今すっごく私活き活きイキしてる気がシゅるのぉぉおおおおおおこれ全ぶあれかなれっくれすちゃーじのせいかなそうなのかなわたしいますっごくてんしょんあがっててもうなにがなんだかよくわからないやぁあああ。


「ぐ、ヴォオオオ!? ば、我がバリアがァァァ……もぉ、もたんと言うのかァァァーーーッ!?」


 きゃは!! がーどかんぜんはかいのおかげかな? たんじゅんにすたみなぎれかな?
 ひびがびびびってぇ~そろそろそろそろ~……


「ぬ、ぅ、ぅうううう、ヴォあッ!?」


 ばーりあ……こわれちゃったぁああああああ!!


「し、しまッ、助、へヴぉァッ」


 はいったぁぁ!! なか、あったかい!! すっごくあったかぁぁい!!
 ほら、ほらほらほら、しょうぶ、しょうぶだよ!!
 ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぎゅっぎゅぎゅぎゅぎゅっぎゅうううううううううううっっっ!!


「ぁ、ヴぇ、ぼ、ぼぽ、ぽ、ぶぼあ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」


 ずぶずぶぎゅっぎゅ!!
 ぐりぐりぎゅっぎゅ!!
 ぐいぐいぐりぐりずんずんぎゅっぎゅうううううううううっっっ!!
 ぁぁあああああははは、ああああああははははははははははははははあははははははははあはははははは!!


「あ、あ、あ、あ、……ヴぷあぁん」


『ヴラド・レイサーメル、【tぐぃてwtrtbじゃ LV一四二】を撃破』



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