悪い魔法使い(姫)~身の程知らずのお姫様が、ダークヒーローを目指すとほざいています~

須方三城

R92,女子力をあげるためにできること(恋占いor性転換)



 魔地悪威絶商会のオフィス。


「ガイアさん、私、女子トークがしたいです!!」
「なんでもかんでもまず俺に振れば良いと思ったら大間違いだぞ阿呆」


 いつも通り、阿呆なお姫様が阿呆な事を言い出した。


「なぁテレサ、女子トークは女子同士でキャッキャウフフするのが大前提ってのはわかってるよな?」
「知ってますよ? 女子友同士で噂話とか恋愛相談とかするんですよね?」
「……………………」
「……な、なんですか、その至極意外そうな顔は……?」
「い、いや……珍しいなと……」


 このパターンでテレサが主題を正しく理解しているなんてすごく珍しい。
 そりゃあガイアもポカーンとなる。


「……で、わかってるなら尚更なんで俺に振るんだよ……」
「ガイアさんがアシリアちゃんに切ってあげるフルーツがいちいちアニマルファニーだったりで微妙に女子力高いので、イケるかなって……」
「手先の器用さと女子力は必ずしも=じゃねぇぞ」


 ちなみに、ガイアのアニマルフルーツカットをアシリアが喜ぶ理由は「かわいい」とかそう言う児童っぽい感情からではなく、狩猟本能的なものを刺激されてより美味しそうに見えるからだったりする。
 一番のお気に入りはウサギである(よく食べていたから)。


 ガイアもそれは重々承知して捧げているので、アレが女子力を象徴するのかと問われると……まぁ、そうでないと信じたい。


「むぅ……じゃあガイアさんには女子トークは無理、と言う事ですか?」
「そりゃあな」
「じゃあ、私と女子トークできる様に、ガイアさんも女子について勉強しましょう!!」
「おい待て。何で俺まで頑張る方向になる?」
「ふふん、それはですね……このパターンで私だけが頑張っても上手くいった試しが無いからです!!」
「学習した事は素直に褒めてやる。でも自信満々に言うなッ!!」




   ◆




「……で、具体的に何させる気だよ」
「もー、なんだかんだノってくれるんだから、ガイアさんは~。そう言うの知ってますよ、ツンデレタイプって言うんですよね」
「そう言う風に人の善意を茶化す輩は独りぼっちタイプがお似合いだな」
「ほああ!? ご、ごめんなさい!! ちょっと調子乗りました!! 謝りますので帰らないで!! もっと具体的に言うと、アシリアちゃん達が散歩から帰ってくるまで独りぼっちにしないで!!」


 がち泣き寸前ですがりついてくるテレサのザマに少しだけスカッとしたので、ガイアはもう少しだけ付き合う事にする。


「で、もう一度聞くぞ、具体的に何をさせる気だよ?」
「そうですねぇ……どうしたらいいと思いますか!?」


 相変わらずのノープランである。


 普段のガイアなら、適当に何かしら提案してやる所だが……正直、別に女子力とか要らんとしか思ってないガイアとしては、特に思い付く事はない。


「つまり私の出番でせう」


 と、待ってましたと言わんばかりに天井から降って来た真の忍者・カゲヌイ。


「よし、解散だテレサッ!! 少なくとも俺は帰ッ……」
「おやおやガイア氏、素直じゃあないのはご愛嬌ですが、ぷりぷりお尻を振って私から逃げられるとでも?」
「……………………」


 オフィスの出入り口には既に、鉄製のこんぺいとう……いわゆる忍者撒き菱が散布済みだった。
 それも真の忍者特製の撒き菱。上空を飛び越えるものを感知したら、その飛翔物の落下点を自動計算して移動するスグレモノである。


「さぁて、要するに【ガイア氏を女子にしてしまおう】と言う話でしたね」
「色んなステップを超越していくなァァァーッ!!」


 これだから真の忍者は嫌いだッ!! とガイアは叫ぶ。


「元々、【ガイア】とは【大地の女神】と同名……在るべき性に戻るだけでせう」
「待て馬鹿ッ!! 黒いどむっとしたロボットに乗ってるおっさんも同じ名前だぞ!? だからその何時の間に何処から取り出したか不明な何か恐ろしい形をした棒をしまえッ!! つぅか何だそのイボイボした禍々しい棒は!?」
「【本気刈マジカル忍者ステッキ】。これ一本で忍者的医療手術を行うに充分と言う便利快適な忍者道具です」
「医療器具に付ける名前じゃねぇッ!!」


 こればかりは全力抗戦、そう決めたガイアは魔法の指輪から対竜兵装を取り出す事も視野に入れて臨戦態勢。


「……やれやれ、そこまで本気で嫌がるとは仕方無い。私は良い子なので人が嫌がる事は極力控える主義。やり方を変えるとしませう」
「どの口が言う……!?」
「私のプリティマウスです☆」


 きゃはん☆と茶化す様に薄く笑いながら、カゲヌイは禍々しい棒をポイッと投げ捨てる。
 代わりにそのお胸の谷間から取り出したのは、一冊の本。
 そのピンク地の表紙には「ろうぜ、女子トーーク!! よっしゃあ恋愛編」と雄々しい太筆で書かれた題字。


「あ、カゲヌイさん、さては……そのマニュアル本を参考に女子トークを学ぶんですね!?」
「イエス正解ですテレサ氏。身体にメスを入れない方向でやりませう」
「まずその方向から試すのが普通じゃねぇのか? なぁ?」
「さて、ピーピー嬉し騒がし喧しガイア氏。この本を参考に、女子トークの真髄を学んでいただきませう。ふむふむへそへそ……【まずは女子らしく恋占いを嗜むべし】だそうです」
「恋占い?」
「花びらを毟りながら呪言の如く好き嫌いをブツブツと唱えるアレですね!!」


 女子トークに臨むならば、もう少し言い方と言う物がある気がする。


「運命の恋を見つけてロマンチックな恋愛を望む……それも乙女でせう。さて、ここに恋占いの参考例が載っていますよ。【心臓を抉り出した瞬間、脳裏を過る相手が運命の相手だゾ☆ 告る前に確認チェック☆】」
「告る前に死ねと」


 未来のリア充を刈り取ろうと言う漆黒の意思を感じるマニュアルだ。


「あとは……【乳首を思いっきりつねられてドキッとする人とは運命的な相性が良いゾ☆】」
「仮にドキッとしたとして、その後そいつとロマンチックな恋愛できるのか?」


 馴れ初めが乳首をつねられてドキッとしたからとか、子供に語るどころか墓場まで持っていく話題な気がする。


「……やれやれ、ガイア氏。占いとは得てしてオカルティックでミスティック。つまり不可解で神秘的なものです。いちいちそんな常識的ツッコミを入れている様では女子力の会得など夢のまた夢子ちゃん」
「と言うか、もうお前とテレサで女子トークやれば良いんじゃねぇかな」
「まーたそんな事言う。これは荒療治不可避」
「ぶぅッ!? またその禍々しい棒!?」
「また? 否。これはさっきのとは別物、【殺人キラ忍者ステッキ】でせう。ひと振りで相手の生を終焉へと導き、異性としての新たな生を与える素敵なステッキ」
「原理の規模が一気に壮大に!?」
「ちなみに、死ぬ時しっかり痛い奴です」
「何その無駄なクオリティ!? ま、待て!! その理屈ならせめてさっきの奴で!! さっきの奴でお願いしま、ァアーーーッ!?」




 ……つづく?



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