悪い魔法使い(姫)~身の程知らずのお姫様が、ダークヒーローを目指すとほざいています~
第34話 姉と兄(>)
「あ、兄上……」
王城、ウィリアムの執務室。
ソファーに座し、ゆっくりと紅茶を啜るウィリアムに対し、チャールズは説得を試みていた。
「た、確かにガイアさんは男だし、テレサに少々意地悪な事を言う時もあるらしい。でも話や報告を聞く限りテレサの害になる様な人じゃ……」
「……わかっている、チャールズ」
「!」
ふぅ、とウィリアムは一息吐くと、立ち上がり、クローゼットの方へ。
「俺だって、ちゃーんと話は聞いた。結果、命を奪うまででは無いと判断した」
「兄上……!」
意外と冷静だ。
それもそうだ。一応第1王子であり大臣の座に就いている身。
いくら最愛の妹のためとは言え簡単に人を殺したりなど……
「とりあえず、2度とテレサに近づけない様、足を3本程削ぎ落とす」
「落ち着いてください兄上。足は2本です」
ウィリアムがクローゼットから取り出したのは、埃を被った愛刀。
「後足2本と前足1本だ」
「ああ成程、兄上、ガイアさんを人間どころか類人猿としてすら認識してませんね?」
「俺はテレサに集る野獣に人権など認めない……だが、今日までテレサの楽しい日々に多少の貢献を果たしたという功績に免じ、足のみという寛大な処置で済ませよう」
「兄上、足3本は寛大とは言いません絶対」
「足なんぞ飾りだと思えば安い物だろう」
「落ち着いてください。ああは言ってもジ○ングだって最終的には足付きますから。あれ1整備士の暴走発言ですから」
まぁこの際ジオ○グの事はどうでも良い。
(シノ……間に合ってくれよ……!)
ウィリアムの説得に挑戦はしている物の、チャールズはハナっから無理だと判断していた。なので既にシノをガイアの元へ向かわせている。とにかくガイアを一時的にでも安全な場所へ逃がすために。
「ちなみにチャールズ。お前の考える事などお見通しだ」
「え?」
ウィリアムの言葉と同時、執務室のドアが開かれ、拘束されたシノが投げ込まれた。
「シノ!?」
「す、すみませんチャールズ様……力及ばず……」
「命令通り拘束した。これでいいか」
「あなたは……!」
シノを捕らえたのは、青髪の女性。その頭部には角。口内には牙が並ぶ。
王属直下の騎士団、その騎士団長が直々に任命した副団長。
元は悪竜四天王よりも上、ドラングリムの側近だったドラゴン、エキドナ。その人間擬態形態だ。
「ご苦労、エキドナ副騎士団長」
「エキドナさん! あなたは何て事を……!」
「よくわからんが、第1王子の命令だ。悪く思うな第3王子、メイド長」
流石のシノもエキドナが相手では手も足も出なかった様だ。
「騎士団を自由に動かせる…これが王位継承権1位と3位の差だ、チャールズ」
「まぁいくら王子とは言え、こんなよくわからん事で動かして欲しくは無いがな」
私はトレーニングに戻るぞ、と一言を残し、エキドナは去って行った。
「テレサは臣下達にあれこれ足止めさせている。……さぁ、今の内にひと狩り行こうか」
「っ……兄上! いい加減にしてください!」
チャールズは腰の剣型対竜兵装の柄に指をかける。
「……本気で止めるつもりか、チャールズ」
「次期国王候補筆頭がこんな事をしていいと思っているんですか! 落ち着いて考え直してください!」
「チャールズ。確かに俺は、今、冷静さを失っているだろう」
フン、とウィリアムは笑う。
「妹の危機に冷静な兄など、兄では無い!」
「テレサに危機なんて迫ってないから!」
根本的に冷静じゃない。
「テレサに男が近寄っているんだぞ……!? あんなにも可愛らしいテレサに男が! 充分危機だろうが! 一晩の過ち真っしぐらだろうが! お前と違って世の男ってのは大抵ケダモノなんだよこの草食系め! そんなんだから二十歳過ぎても童貞なんだ貴様は!」
「よぉぉし戦争だこのクソ兄貴テメェゴラァ!」
「俺は貴様の屍を越えていく!」
「エキドナさん戻ってきてください! このバカ兄弟を止めて!」
拘束され、身動きの取れないシノの目の前、ド派手な兄弟喧嘩が幕を開けた。
「全く、肝心の魔法使いちゃんがいないじゃない」
「……不平を言う割に幸せそうだな」
魔地悪威絶商会オフィス。
その来客用のソファーには、ガイアの姉マリナが堂々と腰掛けている。
そして膝の上にアシリアを乗せ、幸せそうな表情でその頭をナデナデしていた。
「ガイア、この人誰? どことなくガイアに似てる」
「俺の姉貴だ」
「はぁー、あの魔法使いちゃんに加えて猫耳ロリにそこそこ良い体した弱気美少女? 何ここ桃源郷?」
「……まさか……人生初セクハラが女性相手とは思いもしませんでした、あ、私なんてむしろセクハラされたらお礼言わなきゃレベルですよね、ごめんなさい……」
出会い頭にマリナに抱きつかれるわ尻揉まれるわで、コウメはすっかり怯え、ガイアの陰に隠れてしまっている。
異世界初日でこんな目に合わせてしまって、ガイアは非常に申し訳ない気分になる。
「今日ほどあんたの人生が羨ましいと思った日は無いわ……あー至福」
「ガイア、この人何か目が恐い」
「変な事されたら殴り倒していいぞ」
「やーねぇ。いくら私でも10歳満たないかも知れない子には手を出しゃしないわよ」
11歳なら手を出すと言う事かこの犯罪者予備軍は。
「で、魔法使いちゃんはいつ戻ってくるの?」
「そろそろじゃ…お」
噂をすれば、階段を登る足音。
テレサが帰ってきた様だ。
「よう、テレ……」
しかし、オフィスのドアを開けたのは、ガタイの良い眼鏡の男。
衣服のそこかしこに剣で切られた様な裂け目があり、眼鏡のレンズにも亀裂が走っている。
要するに誰かと一戦交えた後っぽい状態の男だ。
「……誰?」
「あれ、あんた……」
「貴様がガイアだな……」
「え、そうだけど、何? え、ちょ、何か恐いんだけど」
よく見れば眼鏡男の手には剣。
柄に嵌め込まれた宝玉から見るに対竜兵装だろう。
「え、えーと、俺に何か用、でしょうか……」
「とりあえず足をもらうぞ」
「はぁっ!?」
「問答無用だケダモノが! リオ・マリー二の名の元に!」
「いやいやいやこれはちょっと問答しよう!? ってか誰それ!?」
「っていうか何してんのよ、ウィリー」
マリナのその声に、今まさにガイアに襲いかかろうとしていた眼鏡男の動きが止まる。
「ウィリー……? 姉貴の知り合いか…!?」
「ええ。大学の後輩。あとそいつ王子よ」
「王子、って……」
「第1王子ウィリアム」
王子。つまり、テレサの兄だ。
何故その王子がガイアの足を削ぎ落そうなどと考えているのだろうか。
「き、貴様……いや、あなたは……」
「久しぶりね」
マリナが通っていたのは王立のエリート大学。
庶民の学校とは隔絶された城内の学校で教育を受ける王族の者達だが、大学だけはそちらを利用する事がある。
どうやらそこでの先輩後輩という間柄らしい。
「ご、ご無沙汰しております……マリナさん……な、何故こんな所に……」
あからさまに怯えるウィリアム。
普段の彼ならこんな姿は絶対に見せないだろう。
「弟の職場を視察してんのよ」
「お、弟……」
この空間にいる男は、ガイアとウィリアムだけ。
「で、私の弟に何か用かしら?」
「ひっ、いえ、そのですね。マリナさんの弟さん、テレサに何か悪さするんじゃないかと思いまして、テレサに2度と近寄れない様、足の方をバッサリと……」
「え、何? 俺あのまま進んでたらガチで足持ってかれてたの!?」
さらっとすごい事を暴露され、ガイアは愕然とする。
「安心しなさい。ウチの弟の性への趣味趣向はグラマー系一筋だから。垢抜けない女の子に手を出したりはしないわ」
「お前はお前で何でそういう事知ってるのかな?」
「そりゃあもちろん、ねぇ?」
マリナは色々問題はあるがガイアの姉だ。
実家で同居していた頃に、ガイアの秘蔵コレクションの内容は見聞済。
「……っていうか、ディアナちゃんから聞いてた通りみたいね……」
「えーと、妻から一体どんな話を……」
「あんた、妹にうつつ抜かして、大分ディアナちゃんを放置してるらしいじゃない?」
「そ、そんな事は……」
「無いの?」
「……有ります」
マリナから放たれる、殺気。
ガイアは知っている。今のマリナの笑顔は、ガチでキレている時のそれだ。
「人の可愛い後輩寝取っといて、随分良い度胸してるわねぇウィリー……」
「す、すみません……」
「正座」
「……はい」
剣を置き、ウィリアムは言われた通り正座。
マリナはアシリアを開放し、ウィリアムへネチネチとした説教というか言葉責めを開始する。
「…………よくわからんが、助かった、のか?」
というか何だろうこの状況。
自分の姉が王子を正座させて悪態の限りを浴びせている。
「ガイアのお姉さん、強い」
「みたいだな……」
ウィリアムの執務室のすぐ外、廊下。
大量の瓦礫の中でチャールズは気を失い、シノは拘束されたまま転がっていた。
そこにエキドナが戻ってくる。
「何か破壊音が聞こえると思って、ちょっとお茶飲んでから戻ってきてみたら……」
「お、遅いですエキドナさん……っていうか謎の破壊音よりお茶を優先しないで……」
「まぁ、何だ……よくわからんが、人間は毎日ドタバタギャーギャーと楽しそうだな。この城に来てから飽きないぞ」
「それは何よりですね……」
ガイアさん無事だといいなぁ、とシノは力無く笑った。
王城、ウィリアムの執務室。
ソファーに座し、ゆっくりと紅茶を啜るウィリアムに対し、チャールズは説得を試みていた。
「た、確かにガイアさんは男だし、テレサに少々意地悪な事を言う時もあるらしい。でも話や報告を聞く限りテレサの害になる様な人じゃ……」
「……わかっている、チャールズ」
「!」
ふぅ、とウィリアムは一息吐くと、立ち上がり、クローゼットの方へ。
「俺だって、ちゃーんと話は聞いた。結果、命を奪うまででは無いと判断した」
「兄上……!」
意外と冷静だ。
それもそうだ。一応第1王子であり大臣の座に就いている身。
いくら最愛の妹のためとは言え簡単に人を殺したりなど……
「とりあえず、2度とテレサに近づけない様、足を3本程削ぎ落とす」
「落ち着いてください兄上。足は2本です」
ウィリアムがクローゼットから取り出したのは、埃を被った愛刀。
「後足2本と前足1本だ」
「ああ成程、兄上、ガイアさんを人間どころか類人猿としてすら認識してませんね?」
「俺はテレサに集る野獣に人権など認めない……だが、今日までテレサの楽しい日々に多少の貢献を果たしたという功績に免じ、足のみという寛大な処置で済ませよう」
「兄上、足3本は寛大とは言いません絶対」
「足なんぞ飾りだと思えば安い物だろう」
「落ち着いてください。ああは言ってもジ○ングだって最終的には足付きますから。あれ1整備士の暴走発言ですから」
まぁこの際ジオ○グの事はどうでも良い。
(シノ……間に合ってくれよ……!)
ウィリアムの説得に挑戦はしている物の、チャールズはハナっから無理だと判断していた。なので既にシノをガイアの元へ向かわせている。とにかくガイアを一時的にでも安全な場所へ逃がすために。
「ちなみにチャールズ。お前の考える事などお見通しだ」
「え?」
ウィリアムの言葉と同時、執務室のドアが開かれ、拘束されたシノが投げ込まれた。
「シノ!?」
「す、すみませんチャールズ様……力及ばず……」
「命令通り拘束した。これでいいか」
「あなたは……!」
シノを捕らえたのは、青髪の女性。その頭部には角。口内には牙が並ぶ。
王属直下の騎士団、その騎士団長が直々に任命した副団長。
元は悪竜四天王よりも上、ドラングリムの側近だったドラゴン、エキドナ。その人間擬態形態だ。
「ご苦労、エキドナ副騎士団長」
「エキドナさん! あなたは何て事を……!」
「よくわからんが、第1王子の命令だ。悪く思うな第3王子、メイド長」
流石のシノもエキドナが相手では手も足も出なかった様だ。
「騎士団を自由に動かせる…これが王位継承権1位と3位の差だ、チャールズ」
「まぁいくら王子とは言え、こんなよくわからん事で動かして欲しくは無いがな」
私はトレーニングに戻るぞ、と一言を残し、エキドナは去って行った。
「テレサは臣下達にあれこれ足止めさせている。……さぁ、今の内にひと狩り行こうか」
「っ……兄上! いい加減にしてください!」
チャールズは腰の剣型対竜兵装の柄に指をかける。
「……本気で止めるつもりか、チャールズ」
「次期国王候補筆頭がこんな事をしていいと思っているんですか! 落ち着いて考え直してください!」
「チャールズ。確かに俺は、今、冷静さを失っているだろう」
フン、とウィリアムは笑う。
「妹の危機に冷静な兄など、兄では無い!」
「テレサに危機なんて迫ってないから!」
根本的に冷静じゃない。
「テレサに男が近寄っているんだぞ……!? あんなにも可愛らしいテレサに男が! 充分危機だろうが! 一晩の過ち真っしぐらだろうが! お前と違って世の男ってのは大抵ケダモノなんだよこの草食系め! そんなんだから二十歳過ぎても童貞なんだ貴様は!」
「よぉぉし戦争だこのクソ兄貴テメェゴラァ!」
「俺は貴様の屍を越えていく!」
「エキドナさん戻ってきてください! このバカ兄弟を止めて!」
拘束され、身動きの取れないシノの目の前、ド派手な兄弟喧嘩が幕を開けた。
「全く、肝心の魔法使いちゃんがいないじゃない」
「……不平を言う割に幸せそうだな」
魔地悪威絶商会オフィス。
その来客用のソファーには、ガイアの姉マリナが堂々と腰掛けている。
そして膝の上にアシリアを乗せ、幸せそうな表情でその頭をナデナデしていた。
「ガイア、この人誰? どことなくガイアに似てる」
「俺の姉貴だ」
「はぁー、あの魔法使いちゃんに加えて猫耳ロリにそこそこ良い体した弱気美少女? 何ここ桃源郷?」
「……まさか……人生初セクハラが女性相手とは思いもしませんでした、あ、私なんてむしろセクハラされたらお礼言わなきゃレベルですよね、ごめんなさい……」
出会い頭にマリナに抱きつかれるわ尻揉まれるわで、コウメはすっかり怯え、ガイアの陰に隠れてしまっている。
異世界初日でこんな目に合わせてしまって、ガイアは非常に申し訳ない気分になる。
「今日ほどあんたの人生が羨ましいと思った日は無いわ……あー至福」
「ガイア、この人何か目が恐い」
「変な事されたら殴り倒していいぞ」
「やーねぇ。いくら私でも10歳満たないかも知れない子には手を出しゃしないわよ」
11歳なら手を出すと言う事かこの犯罪者予備軍は。
「で、魔法使いちゃんはいつ戻ってくるの?」
「そろそろじゃ…お」
噂をすれば、階段を登る足音。
テレサが帰ってきた様だ。
「よう、テレ……」
しかし、オフィスのドアを開けたのは、ガタイの良い眼鏡の男。
衣服のそこかしこに剣で切られた様な裂け目があり、眼鏡のレンズにも亀裂が走っている。
要するに誰かと一戦交えた後っぽい状態の男だ。
「……誰?」
「あれ、あんた……」
「貴様がガイアだな……」
「え、そうだけど、何? え、ちょ、何か恐いんだけど」
よく見れば眼鏡男の手には剣。
柄に嵌め込まれた宝玉から見るに対竜兵装だろう。
「え、えーと、俺に何か用、でしょうか……」
「とりあえず足をもらうぞ」
「はぁっ!?」
「問答無用だケダモノが! リオ・マリー二の名の元に!」
「いやいやいやこれはちょっと問答しよう!? ってか誰それ!?」
「っていうか何してんのよ、ウィリー」
マリナのその声に、今まさにガイアに襲いかかろうとしていた眼鏡男の動きが止まる。
「ウィリー……? 姉貴の知り合いか…!?」
「ええ。大学の後輩。あとそいつ王子よ」
「王子、って……」
「第1王子ウィリアム」
王子。つまり、テレサの兄だ。
何故その王子がガイアの足を削ぎ落そうなどと考えているのだろうか。
「き、貴様……いや、あなたは……」
「久しぶりね」
マリナが通っていたのは王立のエリート大学。
庶民の学校とは隔絶された城内の学校で教育を受ける王族の者達だが、大学だけはそちらを利用する事がある。
どうやらそこでの先輩後輩という間柄らしい。
「ご、ご無沙汰しております……マリナさん……な、何故こんな所に……」
あからさまに怯えるウィリアム。
普段の彼ならこんな姿は絶対に見せないだろう。
「弟の職場を視察してんのよ」
「お、弟……」
この空間にいる男は、ガイアとウィリアムだけ。
「で、私の弟に何か用かしら?」
「ひっ、いえ、そのですね。マリナさんの弟さん、テレサに何か悪さするんじゃないかと思いまして、テレサに2度と近寄れない様、足の方をバッサリと……」
「え、何? 俺あのまま進んでたらガチで足持ってかれてたの!?」
さらっとすごい事を暴露され、ガイアは愕然とする。
「安心しなさい。ウチの弟の性への趣味趣向はグラマー系一筋だから。垢抜けない女の子に手を出したりはしないわ」
「お前はお前で何でそういう事知ってるのかな?」
「そりゃあもちろん、ねぇ?」
マリナは色々問題はあるがガイアの姉だ。
実家で同居していた頃に、ガイアの秘蔵コレクションの内容は見聞済。
「……っていうか、ディアナちゃんから聞いてた通りみたいね……」
「えーと、妻から一体どんな話を……」
「あんた、妹にうつつ抜かして、大分ディアナちゃんを放置してるらしいじゃない?」
「そ、そんな事は……」
「無いの?」
「……有ります」
マリナから放たれる、殺気。
ガイアは知っている。今のマリナの笑顔は、ガチでキレている時のそれだ。
「人の可愛い後輩寝取っといて、随分良い度胸してるわねぇウィリー……」
「す、すみません……」
「正座」
「……はい」
剣を置き、ウィリアムは言われた通り正座。
マリナはアシリアを開放し、ウィリアムへネチネチとした説教というか言葉責めを開始する。
「…………よくわからんが、助かった、のか?」
というか何だろうこの状況。
自分の姉が王子を正座させて悪態の限りを浴びせている。
「ガイアのお姉さん、強い」
「みたいだな……」
ウィリアムの執務室のすぐ外、廊下。
大量の瓦礫の中でチャールズは気を失い、シノは拘束されたまま転がっていた。
そこにエキドナが戻ってくる。
「何か破壊音が聞こえると思って、ちょっとお茶飲んでから戻ってきてみたら……」
「お、遅いですエキドナさん……っていうか謎の破壊音よりお茶を優先しないで……」
「まぁ、何だ……よくわからんが、人間は毎日ドタバタギャーギャーと楽しそうだな。この城に来てから飽きないぞ」
「それは何よりですね……」
ガイアさん無事だといいなぁ、とシノは力無く笑った。
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