河童転生~武士道とは河童になろうとも進み続ける事とみつけたり~
肆:その娘、孝行者につき
娘に促されるまま猟果の回収を手伝った拙者達は、そのまま小さな山小屋に案内された。
ここがこの娘の拠点なのだろう。娘が立てた……訳では無さそうだな。やたら年季が入っているし、しばらく整備されていなかったのか所々がボロだ。外観だけでも草木の侵食が著しい。おそらく内部も相当な有様だろう。
差し詰め、偶然見つけた廃小屋を利用していると言った所か。
「いやァ、悪ィなァ、名前も知らねェのに手伝わせちまって!! 駄賃の飯は腕によりをかけるからよォ、ぎゃはははははは!!」
まったく、年頃の女子とは思えぬどすのきいた笑い声だ。
「そこらに樽がたくさん転がってるだろ? 多分この小屋作った奴が食材入れに使ってた奴だ。適当に突っ込んどいてくれや」
「で、そろそろ話をだな……」
「せっかちだなァおい! 河童ってのはどいつもこいつもそうなのかァ? 河童だけにパッパといきてェってか!!」
おい、馴れ馴れしく拙者の肩をバシバシ叩くな。
「お、筋肉質な風に見えて、手触りはなァーんかカエルみてェにぴたぴたもっちりしてやがんな。面白ェー」
「……わかった、もう話の一切は貴様の言う肉料理ができてからで良い。せめて名乗れ」
「あァん? おいおい、そう言う時は自分から名乗るもんだぜ、河童の旦那よォ」
「河童のゴッパムだ」
「あ、ウチは元乱破で今は平凡な町娘志望のマルガレータでござるニン」
「僕は怒羅豪矛入人のドラクリアです」
「うむ! そして颯爽と復活した妾は陽光乞子のヒメじゃ!! そして肉料理はよう!!」
もうしばらくくたばっていろ阿呆。
「おう、俺ァ狼螺だ。姓は金足、名は狼螺! 【禍充狼塁賦】と【砥王鏤】の半合分だ。よろしくなァ!!」
「わあうるふ、と、とおる?」
半合分とやらが混血を指す言葉である事は知っているが……聞き覚えの無い種族の名だな。
「禍充狼塁賦はヒメさん達と同じく【獣人種】に分類される半人半獣の者ですね。獣人種に多く共通する特徴として鼻がよく利き、豪力を持っていると聞きます。砥王鏤は【恵麗巫】なんかに代表される【超人種】で、確か……雷電を司り、戦具の製造・加工にも造詣が深い匠の一族であると聞いています」
拙者の反応を見てドラクリアが解説を入れてくれた。気の利く男よ。ありがたいな。
「ふむ、成程な。あの迅雷の如き突進や苛烈な蹴りは禍充狼塁賦の豪力、その雷電を帯びる甲掛は砥王鏤とやらの技術で作った戦具、と言った所か」
「おうおうおうよ!! こいつの名前は【炸雷足】っつゥんだ! 雷電を通しやすい黄金をふんだんに使って拵えた自信作でよォ、俺が出せる雷電を増幅してくれんだ!」
雷電を出すのはこのロウラと言う娘自体の能力であり、その戦具はただ補助しているだけ、か。
まぁ、この自慢気な表情を見るに、かなりの増幅量を誇る逸品の様だが。
「【禁解】っつぅ決戦形態もあってな? すげェぜ、見たいか? 見てェよな!? 今度見せてやんよ!!」
人も化生も、自慢する時の顔は活き活きするものだな。
「ふむふむ……しかしそれにしてもじゃ。金の髪に獣の耳……なんじゃかおぬし、妾に似ておるの」
ドラクリア曰く、大きなくくりでは同類らしいからな。
それで同じ毛並みの色とくれば、多少は似通うだろう。
もっとも、ちんちくりんの貴様とロウラとでは身体の成長具合が天と地以上に隔たっているがな。
「まるで妾の妹みたいじゃのう!!」
「ァん? おいおい、身の程を知れやちんちくりん。もし俺らが姉妹なら妹はテメェだ」
「なんと!? どう思うゴッパム!! マル!! ドラクリア!!」
「身の程を知れちんちくりん」
「……沈黙は金と言うでござるニン」
「…………えと……えへへ(誤魔化しの微笑)」
「味方不在ッ!!」
「ぎゃはははは!! じゃあもう今からテメェは俺の妹な!! ほれ抱っこしてやらァ!!」
「納得がいかぬのじゃがァーッ!! まぁ抱っこされるのは嫌いじゃあないがのう!! ただし余り高く上げるな!! 妾との約束じゃぞ!?」
「このまま高い高いだオルァァァァーッ!!」
「言ってるそばからブン投げるっておぬしなっていぃぃぃぃぃぃいいいいやぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!?!!」
◆
もはや屋外と大差無いのでは? と思える程に草木の侵食が進んだ小屋内部。
その一角には、山小屋とは思えない立派な調理場。普通の民家にある設備と大差無く見える。この小屋を建てた者は食に拘る手合いだったらしいな。
そんな調理場にて、ロウラは作業を開始した。
見受けられる道具は、木を割っただけの雑なまな板に、獣の骨から削り出したであろう不細工な包丁。
それらを扱うロウラの手際の良さは――美事と言うしかなかった。調理に臨むその姿からは、先程までの女子らしさを嗤って蹴り飛ばす様な粗暴さはすっかりなりを潜めていた。
「ほう……」
傍から眺めていて、思わず感心の息が溢れてしまう。
脂が少なく硬い獣肉を、ロウラは力任せではなく肉の繊維にそって的確に包丁で撫ぜる事で、非常に静かに切り分けていく。
肉の筋に対しては斜めに角度を付けて何度か切れ込みを入れている。筋を噛み砕きやすくする事で硬肉でも口当たりを良くし、更に煮物にする場合には味の浸透を補助するための技法か。
難しい事をしている風には見えない……そう、実に簡単そうに、まるで水が流れていく様に、作業を進めていく。
武士の嗜みとして包丁の扱いを軽く齧り、ついでに料理についても軽く撫ぜただけの拙者だが……そんなほぼ素人の拙者から見ても、ロウラの技量はかなり高い事がわかる。
手馴れている。熟れている。
所作のひとつひとつから、包丁を握り慣れている事がいちいちよくわかる。
「……意外、と言っては失礼かも知れんが、随分と達者だな」
「ん? まァな。ガキの頃からよく母ちゃんの手伝いして飯を拵えてたかんなァ。それに禍充狼塁賦は元々が肉を見るのが得意だし、味覚も優れてる。加えて俺にゃあ砥王鏤譲りの器用さもあるときた。そんな俺が料理下手な道理があるかァァって話だよ」
口を動かしつつも、ロウラは手を止めない。
肉の処理を一段落終えると、乾燥させていた木の実を何種類か磨り潰して混ぜ合わせ、黄色い粉末を作成。水を入れた釜を火にかけ、その中に件の粉末を投入した。
好奇心から余っていた件の粉末を指に付けて一舐めしてみたが、ぴりりと辛味のある粉だった。しかもその辛味の奥に仄かな甘味と果実特有の酸味も混ざり合って存在し……未知の味である。不味くは無いが、不思議な味……と言うより、不思議な刺激だ。
「なんぞこれは……」
「……この香りは……この粉末の主になっている木の実は【辛哩苺】の実ですね」
「かれー……とな? 知っているのか、ドラクリア」
「本来は気付けなどに使われる様な強刺激物、薬膳以外では余り使われない素材だと記憶していますが、甘味を加えて調整すれば特に問題無く食せる物ではあります」
ほとほと博識だな貴様は。伊達にやんごとなき血を引いてはいないと。
「成程な、その実の粉末に、甘味のある実を乾かした粉を混ぜ合わせ、調味料として調整したのか」
「木の実だけじゃあないぜ。さっき獲った中にもいた黄色くてデケェ百足がいただろ? あいつの外殻を砕いたもんも混ぜてある。なんでか知らねェが程好く甘ェんだよ、あの虫の殻」
「ほう、あんな気色の悪い虫が甘味と。見た目ではわからんものだな」
「……き、聞かなかった事にします……」
「?」
さて、しばらくすると、粉を溶かした汁物から嗅いだ事の無い香ばしい匂いが立ち込め、それを合図にロウラは下拵えを済ませた肉や野草を釜へと投入。
薪を大量に追加し、猛烈な火力で更にしばらく煮込むと――
「おらよ、待たせたなァ!! 俺特製、肉煮込み辛哩苺汁だァ!!」
木から掘り出した深皿になみなみ注がれた、茶色い汁。細かく切られた肉と野菜が強火で煮込まれる事で原型を止めぬ程に溶け解れてしまっている。
……見てくれはただのどろっとした茶色い汁だのに、匂いだ。匂いがとても良い。
何故かはわからんが、本能が猛烈に米を欲し求める匂いをしている。
「おほぉぉ猛烈に美味そうな匂いの汁物じゃのう! 汁物とは飲む物、これ即ちかれーとやらは飲み物! はよう、はようそれを妾に!! 大量に!!」
「貴様には反省と言う概念が無いのか」
また満ち過ぎた腹を抱えて醜態を晒すつもりかこの阿呆。
「さて……」
全員に皿が行き渡った所で、草原と大差無い有様の居間に尻を下ろす。
……ふむ、改めて、この汁物、本当に芳しい。
最初は「こんな粗暴な娘が作る料理など雑な物に決まっている」と思っていたが、いやはや中々どうして。
あの繊細かつ流麗な調理工程を見た後に、この香りを嗅がされて、この一品に負の印象を抱ける者が何処にいるだろう。
まだ口を付けていないが、それでも断言できる、これは確実に美味い。
「では、いただく」
皿の縁に嘴をあてがい、一口啜る。
――ああ、やはりだ。美味。
先程粉末だけを舐めた時はぴりりと来たが、水に希釈され、そこに肉と野菜が溶け込んで良い塩梅になっている。
肉や野菜が溶け込んだ事で生まれたとろみが舌に絡みつく感覚も、実に心地良い。
汁の味もさる事ながら、それをよく吸った崩れ肉も良い。塊が残っていても筋を念入りに切られているので、一噛みどころか舌で撫ぜるだけで解れてくれる。
「ほへー……汁物なれど肉料理、山道を歩いて疲労した身体にはじんわりと染みるでござるニン……」
「そうですね、使用している食材から察するに栄養価は非常に高く、咀嚼に体力を使わない。疲労を取るための食事としては最適と言えるでしょう」
うむ、これを筒に入れて持ち歩けば、陣中食として重宝するかも知れんな。
まぁ、この大陸では大きな戦なんぞ何処もやっていないらしいので、その分野での活躍の目は無さそうだが。
ふむ……汁物故に、多少腹にモノが溜まっていても一杯程度なら問題無く食せるな……どうやらロウラめ、こちらの話を聞いていない風で、拙者が先程「既に飯は済ませてきた」と発言したのはしっかり聞いていたとみえる。
この娘、口調や態度は確かに粗暴だが……ただの荒くれ者と言う訳ではないらしい。
「おかわりじゃ! おかわりを持てい!! なんなら釜ごと持ってくるのじゃ!!」
そして拙者の隣で騒ぎ立てるこの阿呆は真性の阿呆の様だ。ロウラの気遣いを水泡の彼方へ散らそうとしている。
もう諌める気にもならん。またうぷうぷと吐き気に襲われるが良い。
「おうおう、美味ェか美味ェか!! 正直者共め! どいつもこいつも俺の飯に夢中か!! 愛いじゃあねェの!! よしよし、全員片っ端から頭を撫でてやる!! って、うぉおう!? おいゴッさん、何だこれ!! 指がぬぼってなったぞぬぼって!! ぎゃははは面白ェ!!」
誰がゴッさんか。と言うか、拙者の頭の皿に拳を出し入れして遊ぶな。
「あ、そういやゴッさん、テメェ、俺に話があんだよな?」
……拙者の呼び名はゴッさんで決まった様だな。まぁ良い。
「ああ、そうだが……皿の中をまさぐりながら話を進めようとするのはやめろ」
「何も入ってねェの? つまんねー」
少し前までは銭の入った巾着を入れていたが、それはもう荷の方に移してあるのでな。
……さて、ようやく本題に入る訳だが……阿呆は食うのに夢中なので、拙者から話すとするか。
◆
「ほォーん。で、テメェらはそのヨーカイオーとか言うののすげぇ兵器を探して、冒険の旅をしている訳だ」
「ああ。まぁ、兵器を探すと言うのは半ば建前で、冒険する事自体を主旨としているがな」
「ふむふむ……まァ、何が吃驚ってェと、そのちんちくりんがテメェらの頭目って事だな」
だろうな。
過去から何も学ばずに膨らんだ腹を押さえて青い顔をしているこの阿呆なちびすけが、一つの群れを束ねる長だと予想し喝破できる者はそういまい。
……だがまぁ、性根だけは良い阿呆だ。マルもドラクリアも既に色々と察し、駄目な妹でも可愛がる様な目で見ている。愛嬌を元手に支持を集める所については、おそらくこれからも問題はあるまい。
武威については拙者が補えば、それなりにやっていけはするだろう。
「ぃ、色々と意義を唱えたい所じゃが……うぷ……今は無理……」
言葉より先に吐瀉物が出そうな面をしているしな。
マルに背中を摩られながらおとなしくしておけ。
「して、拙者らはその旅の道連れとなってくれる仲間を探している。そこで貴様の噂を聞き、勧誘しにきた……と言うのが大方の粗筋だ」
「冒険の旅かァー……興味は無くも無ぇが……無理だなァ。わざわざ誘いに来てくれたのに悪ィ」
「理由は聞いても?」
「ん? あァ、良ィぜ別に。隠す様な事ァ無ェからな。俺ァな、この山でやんなきゃなんねェ事があんだ」
まぁ、何の意図も無しにこんな山に入る訳は無いだろうな。
「口ぶりから察するに、ただの山篭りではないのだな」
ただの修行目的であれば、山に篭るのも冒険の旅に出るのも大差あるまい。
それがわかっていない、と言う事もないだろう。ロウラは粗暴な風だが、決して阿呆や間抜けの類ではないのはよくわかった。
「俺ァな、母ちゃんと親父の足跡を追って、この町、この山まで来たんだ」
「御両親を探しているのでござるニンか? それも、この雄緑の外から?」
「あァ……俺ら家族は元々、しばらく先にある【浅火走】っつゥ町で戦具工房をやってた」
「浅火走と言うと……あの工房街の? すごいな……」
「その浅火走とやらで工房を構えるのは、そんなに驚く程の事なのか?」
「ええ、そりゃあ勿論ですよ。浅火走で工房を構えるには街を運営する工房組合の厳しい査定を通る必要があり、そのため一流以上の者以外は排除される……しかも当然、工房を構えられる土地には限りがある訳ですから、新入や再入を狙う匠と先住の匠の競合は勿論、街内部でも工房施設の拡大のために他所の工房を取り込まんと権謀術数……街の独自令で、技術を競い合い、負かした相手の工房を買収できる制度まであるときた。内外問わず強豪同士での競合に継ぐ競合……蠱毒にも似たその技術研磨の速度は、三日ごとに街の外での一年分は技術が革新すると言われている……まさしく【匠の街】、又は【未来の街】だと聞いています」
地理やその地域の特色にまで詳しいのか、ドラクリア。
今、一息での情報量が半端では無かったぞ。
しかし、匠の街、未来の街、か。もしやヒメが意気揚々と語っていた拠安賓組駆鞍泊もその街の産物か?
「詳しいなァテメェ。ああ、そうさ。俺の親父は一山でいくらの匠たァ訳が違う、敏腕無類の大巨匠だったんだぜ」
……過去形、か。
「……だがまぁ、工房を構えてたのはもう一〇年くれェ前の話さ。おっと、腕が落ちて追い出された訳じゃあねェぞ? 俺の両親はその頃、俺がまだガキの頃に、いきなりいなくなっちまったんだ。そんでつい最近まで、何処に行ったかもわかんねぇ状態でなァ。ようやく掴んだ情報で、丁度親父達がいなくなった頃に、この山ん奥に住んでる【遠呂智】っつぅ害獣の退治に名乗りを上げた夫婦がいるって情報を得た。その夫婦は獣人種の艶やかな女と、大柄な人型種で金綺羅の無精髭が特徴の男だったって話だ。まァ、親父達の事に違いねぇと踏んだ」
遠呂智なる害獣と、それが一〇年ほど前に退治された話は南蛮飯屋の主人からも聞いたな。
確か、とても凶悪な害獣で、並の手合いでは歯が立たなかったのだとか。
「親父達は俺の耳にタコができるくれェ言ってたんだ。『力も戦具も、皆の平和を守るためにある』ってな。だから、その害獣の話を聞いて、いても立ってもいられなかったんだと思う。……ガキの頃の俺にそれを伝えたら、力も無ェくせに付いて行こうとすると思って、黙って行っちまったんだろう」
「……それで、御両親は……」
「退治に向かった夫婦は……戻って来なかったそォだ。だが、その日から、遠呂智の悪さも無くなったらしい」
「……つまり、勝ったのだな。貴様の両親は」
「ああ、そうさ……親父達は勝ったんだ……! 自分らの生命と、引き換えによ……!! ふざけた親だよな。ガキに骨のひとつも残さねェなんざ、親の風上にもおけねェ……世間様に言わせりゃ、最低の子不幸者だ」
――生命を賭けて大義を成す。
それは世間的には褒められる事で、誇らしい事だろう。
しかし一方で……子を持つ親としては、自らの死後に子に弔わせるための遺物を残せぬは恥ずべき事だと聞く。
死者の弔いだなんだは拙者には余り縁の無い文化であったため、聞いた所でしかないが……弔いの儀式と言うのは、建前では「故人の慰霊のため」と言いつつ、実際は遺族の心を整えさせる側面が大きいのだそうだ。
まぁ、死者のために生者ができる事など、せめて安らかな眠りを祈ってやるくらいなのだからな。そう言う話にもなる。
祈る事で、死者のために何をする事で、悲しみを緩和する。それが弔いと言うものなのだろう。
しかし、ロウラの親は、ロウラに骨の一本も残せてはいない。ロウラには、遠い日の思い出と空の墓しか残されていない。
それでは、余りにも不憫に思えると言うもの。
傍から見た者がロウラに同情し、ロウラの親を批難する心情は理解できなくもない。
「……でもよ、俺は親父達を蔑みたかねェ。誰かが蔑む事も許したくねェ。だから俺は両親の骨を探すために、この山に入って、探索してんだよ」
「親の名誉のために、骨を拾いに来た、か」
子の鑑だな。
「………………」
ドラクリアの神妙な面持ち……ドラクリアは、亡き母の血を誇るために強くならんとしている身だ。ロウラの志に、強く共感する所があるのだろう。
どちらも親のため、奮迅せんと事に臨む子ら……ふん、微笑ましい小童共め。
仲間にするのならば、好意的に見れる相手が最良この上無い。
俄然、ロウラを勧誘したくなった。
では、どうすべきか。
「……ロウラよ。つまり、貴様の親の骨を見つければ、貴様は拙者達と共に冒険に付いて来てくれるのだな?」
「ん? ……ああ、まァな。骨を見つけた後の事ァなんも決めてねェ。……言われてみりゃあ、冒険の旅ってのも悪かねェわな。テメェらもなんだか柄が良さそうだし、気も合いそうだ。何より見てて面白ェ」
「そうか。では……頭目、それとドラクリアとマルも、聞いてくれ。拙者はこいつの親の骨探し、手伝いたいと思うのだが、異論は?」
「特に無いでござるニン。美味しい御飯を馳走になった恩もあるでござるニンし、むしろ手伝うのが道理とも思えるでござるニン」
「はい、勿論、僕も賛成です」
「ぅ、うむ……うぷ……当然じゃ……皆で……手伝う、ぞ……ぅ」
「テメェら……」
では、決まりだな。
「た、ただ、今はちょっと、待つのじゃ……うぷ……動けぬ……」
「……………………」
……本当に、こいつがいるとビシッとしまらなんだ。
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