Duty
chapter 8 推察 -3
3 7月5日 推察②
夏の匂い漂う空はいまだ赤く輝いていた。
昼よりもだいぶ涼しくなった空気がカフェから出てきた陽太たちを迎えた。
陽太は大きく背伸びをする。
「それじゃあ、また後で。追々連絡するから。そのときは協力してくれると助かるな」
霧島は手を上げ、去っていこうとした。
「ちょっと待て、霧島」
陽太は霧島の背に向かって呼び止めた。
「お前があのクラスのこと、救いたいって考えているなんて思ってなかった。俺たちも出来るだけ協力す――」
そのとき、「ふふ」と霧島から堪えているような笑いが零れた。
「勘違いしないでよ」
霧島はそう言い放ち、陽太と桜のほうへと振り向いた。
「僕はあんなクラスのことなんてどうでもいい」
「……え」
「ましてや僕以外の誰が死のうが関係ない」
スッと陽太たちへ向かって霧島は指を指した。
「死ぬのがキミたちだとしてもね」
「……霧島?」
「僕がキミたちみたいにくだらない正義感なんかで動いているわけがないだろう?」
「じゃ、じゃあどうして?」
霧島は不気味な笑みを浮かべた。
そして、
「腹が立つんだよ。正体不明の何かに遊ばれている感じがね」
と、冷酷な声で言い放った。
陽太はそんな霧島を見つめ続ける。
「今のところ、僕たちのクラスは負けっ放しだ。わかるかい? 僕にとって『負け』とは『死』よりも恥なんだ」
陽太と桜はそんな霧島を唖然として見つめ続ける。
「でもキミたちは違うでしょ?」
「……え?」
「本気であのクラスを救いたいと思っているでしょ」
陽太は霧島の目を逸らし静かに俯いた。
「ずっとキミたちを観察させてもらっていた。死んだ五十嵐を見つけたときも、東と山田が選定されたとき平森に歯向かう様子も」
あのとき、五十嵐の死体を発見したときの廊下の曲がり角。
また教室で眼鏡の奥から冷徹で嫌味な眼を陽太や桜に向け、評定するように観察していたのは霧島であった。
「凄く、いい目だと思った」
陽太が口を開いた。
「俺は……今の状況を変えたいとは、思う」
霧島はにこっと優しく微笑む。
「なら協力しようよ。損は無いはずだよ」
「ただ霧島。お前ひとつ間違ってる」
「?」
「『負け』は『死』よりも恥って言ってたけど、死んだら、勝負すらできないんだぞ」
「……へ?」
霧島はポカンとした表情を浮かべ、陽太を見つめた。
陽太は目を丸くして、「……あ、あれ?」と、呟いた。
「ははっ……ははは」
霧島は笑った。
今まで陽太と桜が見た中で一番自然な笑いに見えた。そして、笑いながら答えた。
「うん、そうだね」
「お、おう」
そして、霧島は去っていこうとしたのだが、陽太は最後に気になった質問をぶつけた。
「そうだ霧島。どうして俺たちなんだよ」
「……何がだい?」
「クラスの中に犯人がいるかもしれないって考えているなら、誰かに協力を要請するなんて危険だろ」
先程の笑いとは異なり、再び不敵な笑みを浮かべ霧島は答えた。
「最初に言ったでしょ? キミたちが一番『マトモ』に見える、って」
夏の匂い漂う空はいまだ赤く輝いていた。
昼よりもだいぶ涼しくなった空気がカフェから出てきた陽太たちを迎えた。
陽太は大きく背伸びをする。
「それじゃあ、また後で。追々連絡するから。そのときは協力してくれると助かるな」
霧島は手を上げ、去っていこうとした。
「ちょっと待て、霧島」
陽太は霧島の背に向かって呼び止めた。
「お前があのクラスのこと、救いたいって考えているなんて思ってなかった。俺たちも出来るだけ協力す――」
そのとき、「ふふ」と霧島から堪えているような笑いが零れた。
「勘違いしないでよ」
霧島はそう言い放ち、陽太と桜のほうへと振り向いた。
「僕はあんなクラスのことなんてどうでもいい」
「……え」
「ましてや僕以外の誰が死のうが関係ない」
スッと陽太たちへ向かって霧島は指を指した。
「死ぬのがキミたちだとしてもね」
「……霧島?」
「僕がキミたちみたいにくだらない正義感なんかで動いているわけがないだろう?」
「じゃ、じゃあどうして?」
霧島は不気味な笑みを浮かべた。
そして、
「腹が立つんだよ。正体不明の何かに遊ばれている感じがね」
と、冷酷な声で言い放った。
陽太はそんな霧島を見つめ続ける。
「今のところ、僕たちのクラスは負けっ放しだ。わかるかい? 僕にとって『負け』とは『死』よりも恥なんだ」
陽太と桜はそんな霧島を唖然として見つめ続ける。
「でもキミたちは違うでしょ?」
「……え?」
「本気であのクラスを救いたいと思っているでしょ」
陽太は霧島の目を逸らし静かに俯いた。
「ずっとキミたちを観察させてもらっていた。死んだ五十嵐を見つけたときも、東と山田が選定されたとき平森に歯向かう様子も」
あのとき、五十嵐の死体を発見したときの廊下の曲がり角。
また教室で眼鏡の奥から冷徹で嫌味な眼を陽太や桜に向け、評定するように観察していたのは霧島であった。
「凄く、いい目だと思った」
陽太が口を開いた。
「俺は……今の状況を変えたいとは、思う」
霧島はにこっと優しく微笑む。
「なら協力しようよ。損は無いはずだよ」
「ただ霧島。お前ひとつ間違ってる」
「?」
「『負け』は『死』よりも恥って言ってたけど、死んだら、勝負すらできないんだぞ」
「……へ?」
霧島はポカンとした表情を浮かべ、陽太を見つめた。
陽太は目を丸くして、「……あ、あれ?」と、呟いた。
「ははっ……ははは」
霧島は笑った。
今まで陽太と桜が見た中で一番自然な笑いに見えた。そして、笑いながら答えた。
「うん、そうだね」
「お、おう」
そして、霧島は去っていこうとしたのだが、陽太は最後に気になった質問をぶつけた。
「そうだ霧島。どうして俺たちなんだよ」
「……何がだい?」
「クラスの中に犯人がいるかもしれないって考えているなら、誰かに協力を要請するなんて危険だろ」
先程の笑いとは異なり、再び不敵な笑みを浮かべ霧島は答えた。
「最初に言ったでしょ? キミたちが一番『マトモ』に見える、って」
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