この世界を終わらせる

りゅう

クラニィの過去











「お姉ちゃん…お腹…空いたよぅ…」

妹がお腹を押さえつけて私に訴えて来た。私の可愛くて大切な妹、そんな妹にこんな思いをさせてしまうなんて私は情けない姉だと思いながら妹を抱きしめる。

「明日には次の集落に着くわ…疲れたでしょう?少し寝てなさい…目が覚める頃には集落に着いてるはずだから…目が覚めたら一緒にご飯を食べよう…」
 
クラニィは妹にそう言い寝つかせる。疲れがたまっていたせいかすぐに眠ってしまった妹を背負い私は歩き始めた。

大切な妹を背負った私はゆっくりと荒野を歩く。妹を起こさないように慎重に歩きながら…妹が眠ってから数時間後、ようやく集落が見えた。

「こんな時間に子供が二人で何をしているんだ」

集落の門番は私に尋ねた。

「私たち、両親がいなくてずっと旅をしているんです。少しの間だけこの集落でお世話になれませんか?」
「そうか…大変だったな、とりあえず中にお入りお腹空いているだろうすぐに食事を用意させよう」

門番の人は私に優しくそう言い集落への門を開けてくれる。ジャラリ……
この音を聞いた瞬間、門番の人が青ざめていった。

「神獣使い…」

門番の人がそう呟いたのを聞き私の体はぶるっと震えた。過去のトラウマが蘇る。神獣使いだという理由で集落に入れてすらもらえなかった記憶が…鎖の音、この鎖が私たちをこんな状況に縛り付けていると思うと今すぐにでもこの鎖を切り落としたいと思う。

「私はこの集落に入れてもらえなくて結構です…だかりせめて妹だけでも中に入れてあげてください。もう何日も何も食べていないんです。お願いします」
「そいつも神獣使いじゃないか…」

妹の右手に巻きついている鎖を見て門番の人が呟く。やめて、そんな目で私たちを見ないで…私たちは敵じゃない…お願いだからわかってよ。と大声で叫びたかった。でもそんなことをしたらより警戒されるのは明らか、だから私は必死に頼むことしかできなかった。

「少しの間そこで待て…」

門番の人は私にそう言い門の中に入る。
 
しばらくの間、私はずっと妹を背負ったまま門の前で待っていた。夜風に当たり寒さを感じながらもずっと待てたのは背中にいる大切な妹の暖かさのおかげだろう。妹だけは私を信じてずっと一緒にいてくれている。そんな妹が暖かくないはずがない。

しばらくして門が開いた。集落の中から先程の門番の人とご老人、そして武装した男が何名かいた。

「君が神獣使いの子かな?」
「はい。そうです。あの…お願いですから妹に食事だけでも与えてもらえませんか?」
「そう焦るでない。私はこの集落の長を務めておる者じゃ、先程二人分の食事を用意するに言っておいた。さあ、中にお入り」

長の言葉を聞き私は泣いて喜んだ。背中に眠る妹を起こしてようやく食事が出来ると妹に伝える。妹は嬉しそうな表情をして私と集落の人たちにありがとうと言っていた。我ながらよくできた妹を持ったと思う…

私たちは長の方々に続いて集落に入った。そして集落をしばらく歩いた頃、私は異変に気付いた。異変に気付いた私は慌てて長の方に尋ねる。

「あの、いくら夜だからって人気が少なすぎませんか…」
「住民は皆。避難させた。子供に見せるものでもないしな…」

長がそう言い手を挙げると銃弾があちこちから発射された。

「お姉ちゃん…」

妹は慌てて私を突き飛ばした。妹に突き飛ばされた私は地面に倒れ込み銃弾を浴びずに済んだ。ただ妹は…

「クラン、クラン…嘘…」

妹の体を揺らすが返事はない。妹の体にはあちこちに穴が開いていて見るに耐えない。
「どう…して……」
「すまんな、君たちを集落に入れなかったのが原因で暴れられたら面倒じゃからな…中に入れて安心したところを狙わせてもらった…」

それだけの理由?私たちが暴れだすかもしれないから妹を殺したの?そんなにまだ五歳にもなっていない妹が怖いの?そんなに神獣が怖いの?そんなに私が…私たちが怖かったの?

「君たちに恨みはない。ただ神獣に恨みがあるだけじゃ、神獣使いになったことを悔いるのじゃな…」

長がそう言い終わると私目掛けて弾丸が乱射される。
ここで死のう…もうこんな世界にいたくない。妹と一緒に新しい世界に飛び出そうと思った。その時…妹の鎖が動き出した。そして鎖から解き放たれた神獣、ヒドラは私を守ってくれた。

契約者を失った神獣は契約者の思いを受け継ぎ契約者が望んだことのために動く。そしてそれを終えたら新たな契約者を探しに向かう。ヒドラに妹が何を願ったのかは私にはわからない。

私は妹の亡骸を抱きしめた。どんどん冷たくなる妹を肌で感じながら私は涙を流した。

「これは…何が起こったの?ねえ、あなた!大丈夫?」

一人の少女が私に声をかける。すでに夜は明けていて周囲は明るかった。

「神獣、ヒドラね。あなたがやったの?」

赤髪の少女はヒドラに話しかけていた。神獣と話なんか出来るわけないのに…

「なるほど、大変だったわね。とりあえず妹さんを連れてうちに来なさい、食事の用意をしてあげる。そのあとちゃんと妹さんを送ってあげましょう。あと、神獣についても教えてあげる」
「なんで、わかったの…?」
「神獣と話たから…本当にいい妹さんね…最後まであなたのことを考えていたみたいよ」
「どういう…」
「あなたの妹さんが神獣に託した思いよ。お姉ちゃんを守ってって…」
それを聞いた私の目からは大量の涙が流れていた。
「さて、この神獣をどうするか考えないと…とりあえず連れ帰って新しい契約者を探すべきかしら…」
「私が…私が契約します。妹の形見ですから…」

そう言いながら私は妹の腕に巻きつく鎖に触れ神獣、ヒドラと契約した。 
 
  「神獣二体と契約 ︎いくらなんでも無理…」
  
  私はヒドラと契約した。私の右手に新たな鎖が巻きつく。こうしてヤマタノオロチとヒドラを操る神獣使いが誕生した。その後、私は赤髪の少女シャルロットに神獣について教わり戦士になった。 
 
  「なんだよこれ…神獣二体って……」

  クラニィが操るヤマタノオロチとヒドラの猛攻をハーデスで必死に受け流しながらソーマが呟く。ヤマタノオロチとヒドラは容赦なくハーデスを蝕みソーマを追い詰めていく。






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