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チート能力を持った高校生の生き残りをかけた長く短い七日間

北きつね

第六話 来訪者


 暖かい温かい食事だ。心にある澱みが消えていく感覚だ。
 どのくらいの時間が経過したかわからないが、リンの周りには眷属たちが嬉しそうな表情で集まっている。

 照れ隠しなのか、近くにいた眷属に話しかける。

「そういえば、ロルフは?」

「まだ、お帰りになっていません」

「そうか・・・。困ったな」

「マスター。何に、お困りなのですか?」

 ”困った”というセリフがリンの口から出た事で、眷属たちは一気に緊張の度合いを高める。
 ヴェルデゴブリンだけではなく、話を聞いていた、ビアンココボルトジャッロオークまでも、心配そうにリンの顔を見てくる。

 眷属たちの表情を見て、なにか問題でも有ったのかと思ったが、自分の”困った”というセリフに反応したのだと、すぐにわかった。

「あっ困っているのは、神殿の改造をやっていいのか確認したかっただけだ。お前たちが心配するようなことではない」

 明らかに安堵の表情に変わる。リンは、自分の行動に一喜一憂する眷属たちが、どこか可笑しさを感じてしまっている。
 そして、オークやゴブリンやコボルトを可愛いと感じてしまう。眷属になったからかもしれないが、コミュニケーションが取れるだけで、身近に感じられるのだ。

 ロルフ精霊型猫が外に出ているのなら、すぐには出来ない。何かできる事がないか考え始めた。

「マスター?」

「ごめん。ごめん。ロルフに、施設の変更や改造のやり方を確認したかったのだけど、戻ってきていないのなら・・・」

「お呼びしましょうか?」

「うーん。いいよ。急いでやることでもない。ヴェルデには悪いけど、しばらくは同じ場所で調理を頼むな」

「はい!任してください」

 ヴェルデだけでなく、ビアンコやジャッロまでリンに頭を下げている。しかし、リンの近くには寄ってこない。彼らは、眷属であり部下だ。仲間ではない。リンは、眷属たちの心を感じながら、どこかに感じる壁を寂しく思っている。

”マスター”

 リデルカーバンクルが、ジャッロの肩に上がって、頭を下げながら、念話を送ってきた。

「リデル。どうした?」

”ロルフ様が、祠の近くでお待ちです”

「わかった。ヒューマドラゴニュートの所か?」

”はい。リザードマンの里から、1時間程度、離れた場所です”

「ん?リザードマンの里じゃないの?」

”はい。祠には、眷属だけが近づけるようにすべきだとお考えのようです”

「わかった」

 ビアンコが先にドアを開けてくれる。
 そこまでする必要はないと思うが、眷属たちにとっては当たり前の行動なのだろう。

 部屋から出ると、神殿に来ている眷属たちの全員が揃っているのではないかと思えるくらいの者たちが俺に視線を向けている。

「ジャッロ?」

 近くに居たジャッロを見てしまった。

「皆、マスターを待っておりました」

「ん?心配してくれていたのか?」

「・・・。はい」

「そうか・・・」

 俺が、部屋の前に集まっている者を見ると、前に居る眷属たちから、膝を折ってひざまずく格好になっていく。
 波が引いていくように、前から徐々に跪いていく、そして、一番うしろに居たオークが跪いた。ジャッロとヴェルデとビアンコも、俺の前に移動して、先頭で跪いた。

 そうか・・・。俺は、心配されていたのか・・・・。

「皆。ありがとう。まだ、何も解決していないが、俺はもう大丈夫だ。お前たちのためにも、ここに居ないヒューマたちやアウレイアたちやアイルたち、そして、リデルたちの為にも、俺は前を向く。もう大丈夫だ。心配をかけた」

 自分で、何を言っているのか解らないが、眷属たちのためにも、ミルやマヤのためにも落ち込むのはやめよう。一歩でも前に歩き出せるように考えよう。

「皆。これからも、俺に力を貸してくれ」

『はっ。我ら眷属は、マスターのために!』

 どこで練習したのかと思えるくらいに声を揃えて、皆が言葉を紡いだ。

「ジャッロ!」

「はっ」

 名前を呼んだジャッロだけではなく、オークたちが顔を上げる。

「神殿の内部に眷属以外が侵入していないか確認しろ。それから、マガラ渓谷から落ちてきた物を調べろ」

「はい。マイマスター」

 命令を受けたジャッロたちオークの集団は、跪いたまま頭を下げる。全員に指示を出さないと駄目なようだ。

「ヴェルデ!」

「はっ」

 同じように、名前が呼ばれたヴェルデとゴブリンたちが顔を上げる。

「神殿の施設を調べろ。全ての場所の立ち入りを許可する。立ち入りが不可能な場所が無いか調査しろ、外に繋がる場所があればすぐに報告しろ」

「はっ。報告は、リデルに行えばよろしいでしょうか?」

「そうだな。リデル。問題はないな?」

”大丈夫です。ヴェルデに眷属を預けます”

「頼む」

 リデルが俺の肩から飛び降りて、眷属を呼び出している。どこに居たのか解らないが、ヴェルデに預けている。

「ビアンコ!」

「はっ」

 ビアンコたちコボルトは数が少ない。現在も進行形で神殿の清掃を行っている。

「神殿の清掃を続けてくれ、それから、できそうなら、ヴェルデたちと協力して、神殿の地図を作ってくれ」

「はっ」

 皆が顔を上げて俺を見ている。

「皆。頼んだ」

『はい。マイマスター』

 一斉に頭を下げてから、皆が作業に移っていく、ジャッロとヴェルデとビアンコがそれぞれの眷属に指示を出しているのがわかる。

「リデル。ロルフの所まで案内を頼めるか?」

”かしこまりました。マイマスター”

 リデルは、転移門を抜けて、森の中を進んでいく。
 途中で、ヒューマたちにも、新しい指示を出した。食料調達を頼んだ。森の中にある食料を調達して、神殿に運んでもらう。調味料は難しいが、肉だけではなく、食べられる草や薬の材料や魚なども調達するように頼んだ。

 アウレイアとアイルが合流した。アウレイアとアイル以外の眷属たちは、ヒューマたちを手伝うように指示を出す。
 食の改善ができれば、気持ちも落ち着くかもしれない。それに、眷属たちを食べさせる必要がある。眷属になってから、食事ではなく、俺との繋がりがあれば補給が出来るように感じるようだが、食事は必要なままだ。出来る限り、安定した食事を提供が出来るようにしたい。

”マスター。このさきです”

 リデルが、立ち止まって、ロルフが居る場所を示す。

「ロルフ!」

「あっリン様。ちょうど良かった。にゃ」

 ロルフが忘れずに、”にゃ”を語尾に付ける。

「その二体が、新しく眷属になりたいと言ってきた者たちなのか?」

「はいにゃ」

 ロルフは、俺を見てから、新しく眷属になりたいと言ってきた者たちを見る。

 オーガはすぐにわかった。もう一体は、”なんでいるの?”と言いたくなる。

「ロルフ。初代との繋がりが」

”我です。リン様”

 オーガが、俺の前まで来て頭を下げる。

「そうか、名は?」

”ありません”

「そうなのか?長で間違っていないよな?」

”リン殿。その事に関しては、儂から説明したいが問題はないか?”

 控えていた、もう一体が話に割り込んできた。ロルフが割り込んできた者を威嚇するが、手で制した。話が進まない。
 鑑定で調べると種族は、”黒竜”と出ている。大きさは、進化後のアウレイアフェンリルと同じ程度だ。

「黒竜殿は、オーガたちの付添なのか?」

”リン殿。誤解させてしまってもうしわけない。オーガたちの付添なのは間違いないが、儂たちもリン殿のお仕えしたく思っております”

「わかった。まずは、オーガの事情を聞かせてくれ」

”はい。この者たちは・・・”

 黒竜の話で解ったのは、オーガたちは山脈の麓に集落を作って生活をしていたが、教会の総本山がある神国の貴族に攻められて、名を持つ長が倒されてしまった。長を失ったオーガは多くの同胞を失った。そして、オーガたちは黒竜に保護を求めた。
 しかし、黒竜にも事情があった。竜種は絶大なる力があるが、魔素が豊富な場所でないと生活が出来ない。黒竜が住んでいた場所は、人族が醜い争いを始めた結果、魔素が減ってきた。そのために、新天地を求めていた。
 そこに、アウレイアの眷属が接触してきた。黒竜は、竜種を代表してオーガの仮長を連れて、神殿への接触を試みた。

「事情はわかった。神殿には多くの種族が共存している。神殿では、種族同士での争いは禁止だ。竜種も、コボルトも俺にとっては同じ仲間だ。それでよければ、神殿は、お前たちを歓迎する」

”承知しております。我ら、竜種とオーガの生き残りを、リン様の眷属に・・・。お願い致します”

 黒竜が、リンを”殿”から”様”に言い換えた。
 対面して、主として認めてしまったのだ。本能で従ってしまう。それが、”動物使い”のスキルの真髄であるかのように・・・。

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