咲かない花

せつな

友達という名の恋のライバル登場?!

愛佳は学年で1番可愛いと誰しもが認め、羨む女の子だ。
男子からはもちろん女子からも人気がある。
なぜ、学校のアイドルが私の親友なのか。
それは、親同士が仲が良く、家も隣同士の幼馴染だからだ。
だから、愛佳は私の側にいてくれる。
じゃないと、私と愛佳は住む世界が違う。

「何をさっきから唸ってるの?」と尋ねれば「聞いてくれる?」と言いたげに顔を上げこちらを見る。

放課後の誰もいなくなった教室で2人。
この時間が1番好きだったりする。
世界で2人だけ、そんな気がするから。

本当に馬鹿げた妄想だ。

「ねー。舞華…どうしたらいいと思う?」
「普通に、好きですって告白すればいんじゃないの?」

「そうだけどー。」と愛佳は頬を膨らませる。

誰よりも知っているからこそ、気づきたくないことも気づいてしまう。
この恋が愛佳の初恋だということ。
だからこそ、成功してほしい。
でもその気持ちと同じぐらい、いや、それ以上に失敗してしまえばいいと。
誰を好きになってもいいから最後には私の元に戻ってきてほしいと。
そんな最低なことを考えている。

「…じゃぁ、練習してみて。」

傷つくと分かっているのに、それでも君の口から聞きたいと願わずにはいられない。

「うん!わかった!」

誰よりも先に君の好き・・が欲しい。

「好きです。」
「…もっと真剣に。」

私ではない。
違う、人へ送られる告白想い

「好きです。」
「…気持ちを込めて。」

私を、見て。

「あなたが、好きです。」
「…全然だめ。」

でも、気づかないでこのドロドロとした感情に。

「もー!じゃぁ、舞華が言ってみてよ!」
「え?!」

「早く!」と愛佳は私の手を引き自分の目の前に立たせる。

「はい!言ってみて。」

これはただの練習。
普通に、言えばいいだけだ。

「……す、。」

喉がキュッと閉じて言葉が詰まって出てこない。
たった2文字なのに、それすら言えない。

「ほらー。舞華だって言えないじゃん!」
「…ごめん。」
「そんな落ち込まないの!練習付き合ってくれてありがとね!」

その笑顔が、ただただ眩しくて。
夕日が愛佳にあたり、なぜか消えてしまいそうなそんな気がして私は手を伸ばした。

「あい、」
「愛佳先輩。」

落ち着いた心地よい声と重なり、舞華は伸ばしかけていた手を引っ込め声の主を見る。

ドクンと心臓が波打った。
嫌な予感がした。
そんな予感ばかりが、どうしてか当たってしまう。

「真樹くん!どうしたの?」

愛佳の弾んだ声。
色づく頬。

あぁ、この子が愛佳の初恋の子。
なんてお似合いなんだろうか。
まるで絵本に出てくる王子様とお姫様。
さしずめ私は、意地悪な継母か何かだろうか。
いや、そんなものにもなれないただのモブだろう。

「…………。」
「…真樹くん?」
「…あ、すみません。」

愛佳に呼ばれようやく口を動かしたがなぜかすごくガン見されてる気がするんです。
何か顔についてる?
それともなんでこいつと一緒にいるんだ?とでも言いたいのだろうか。
そんなのは物心ついた頃から百も承知だ。

「あの、こちらの方は。」
「そうだね!自己紹介しなきゃね!」

できればしたくないし聞きたくもない。
だけど、このキラキラ笑顔に逆らえるはずもない。

「私の大親友の沢辺舞華です!」
「で、こちらが杉本真樹くんです。」

「沢辺、舞華先輩。」と確かめるように私の名前を呼ぶ。

フルネームで呼ばなくても良くないでしょうか。
それになんか、圧がすごい。
身長が高いから?

「えっと、こんにちは。なんか用事があったんじゃないのかな?」

気まずくなり視線をそらす。
それでも、なぜか見られている気がして落ち着かない。

「あ!そうでした。コーチが来週の試合のことで話がしたいって呼んでました。」
「わかった。舞華ごめん!先帰ってて。」
「いいよ、待ってる。外も暗いし。それに私も美術室寄らないとだし。」

愛佳は嬉しそうに「うん!すぐ終わらせてくるね。」とダッシュで教室を出て行く。
いい人ぶってただ、一緒に帰りたいだけの自分の我儘なんだけど、あの笑顔を見られるなら私は何時間だって待つ。

「…舞華先輩。」

急に名前を呼ばれ、目を見開く。
愛佳しか見ていなかった舞華は真樹がまだ居ることに気づいていなかったのだ。

「な、なに?」
「美術部なんですか?」

あまりに突拍子も無い質問に面食らう。

「え、あ、うん。そうだけど、それがどうしたの?」
「…………。」

今度は無言?
なにこの子、全然つかめない。

「あの、杉本くん?」
「…行ってもいいですか?」
「えっと、ごめん。どこに?」
「美術室、舞華先輩の絵見てみたいです。」

え、嫌です。…とは言えないし。

「…ごめん。別に大した絵じゃないし。来られても困る。」
「……………。」

だいたい、愛佳の好きな人と一緒に入れるはずがない。
これだけ言えば、諦めてくれるだろう。

「…愛佳先輩は、美術室行ってるんですか?」
「え、あ、うん。」
「じゃぁ、部外者だからってわけじゃないんですよね?」
「そ、そうだけど。愛佳は親友だし。」

大切な人だから。

「じゃぁ、俺も友達になりたいです。」

なんなのこの子。
意味が全く分からない。

「え、無理です。」

「あ、そうですよね。なりたいじゃないですよね。俺と友達になってください!」と頭を下げられ手を差し出す。

いや、この子もしかして、馬鹿なの?
これだけ言われてなんで…あ。
そういう事。
私に近づけば愛佳に会えるものね。
だったら……。

「……わかった。だから頭上げてくれない?杉本君。」

嫌だと言ってしまえばよかった。
そうすれば、これ以上愛佳とこいつが会う回数が増えることはない。
だけど、チラついてしまったのだ。
愛佳の、笑顔が。

「…真樹です。みんなそう呼ぶので、舞華先輩も呼んでください。」

そんな子犬みたいな目で見られても。
正直もうすでにさっきの言葉を撤回したくなっている。

「…名前で呼ぶなら、友達にはならない。」

これ以上こいつの思い通りになってたまるか。

「…分かりました。」

まるで犬の耳が垂れたようにシュンとなっている。
まるで私がいじめたみたいじゃないか。

「今は我慢します。では、俺も行きますね。また、舞華先輩。」
「さようなら。」

永遠にね。という言葉は飲み込んだ。

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