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瑠璃の誘惑。メロンパンの誘惑。

本宮 秋

第2章 憂虞、高揚、危機 -3-

第3話

突然、背後の物音にびびってしまい振り返る事も出来ず、唯々ただただただ手に持っていたメロンパンを握り締めるだけだった。

ガサッという音がした後は、何もしない。ただ何と無く何かがいる様な気配は感じた。
それが小さな動物なのか、大きな動物なのかは分からなかった。
いつまでもこのままでは、しょうがない。思い切って振り返って見る…… と同時に、

カラン、コロン…… と小石が自分の座っている岩の上に転がってきた。
思わず、
「うわっ! 」
と、声を出して驚いた。

たかが小石が転がっただけだが、ずっと緊張感が続いていた為、声が出た。
後ろを見ても結局、何も居なかった。
小石が転がってきたということは…… ゆっくり岩の上の方を見る。
大きな岩の上には、森に続く土手があり草木が生い茂っている。その土手辺りから小石が転がってきたのだろうか。
草木を薙ぎ倒す音もしなかったので、大きな動物では無いと思いホッとした。

狐かな、狸かな。

そう思うと緊張感も無くなった。
人気の無い、自然そのままの川と森。
動物がいても当たり前の世界。

よくよく考えてみれば、普通の事なのに初めての下流で…… というよりかは自分が臆病なだけ。
こんな自分が、よく一人で山の中の川で石探しなどする気になったのか。
不思議ではあるが…… そうさせたのも『瑠璃』の魅力。

熊の話を聞いた後なので、余計な事を考え過ぎ過敏に反応してしまったが。
おかげで手に持っていたメロンパンが…… 潰れていた。
どれだけ手に力を入れていたのか。折角のメロンパンが……

やっとの思いで、この岩まで来てメロンパンで気分と疲れを癒そうとしたのに。
そう思うと疲れが出た。心も身体も。

トボトボと、来たルートを戻ることに。

「収穫があったのか無かったのか、分からなかった白い橋までの探索だったなぁ」
つい声に出し愚痴る。

いつもの様にナカさんの家に寄る。

初めての下流の探索と何かの動物らしきものにビビった話をした。

「ほぅ〜〜  熊かもな」

ナカさんがぼそり。

「またまた〜〜 そんな大きい動物じゃ無いと思いますよ」

「熊ってな、あまり音させないで歩くんだよ。笹が生い茂っている所でも、ほとんど音を立てないそうだ」

「いやいや〜〜  無いでしょ熊は。熊だったら襲われているでしょ、あの距離じゃ」

「熊はいるぞ普通に。ただ、ここらの熊は人の気配感じたら熊の方から逃げる。
よっぽどの事が無いと人は襲わない。山には食べる物あるからな、わざわざ人は襲わないぞ」

「え! 川とかにもいるんですか? ヤバイじゃないですか〜〜 」

「そりゃ水飲むし、魚取るし川にもいるだろ。何だ〜〜 そんな事も知らんで石探しやってたのか? 森の奥に行かなければ大丈夫だろ。タケ爺の孫の割には、情けないなぁ」

なんだか…… ナカさんに話をしなければよかったと思ってしまった。
余計な事を聞いてしまった様な。川に行く事が急に怖くなってきた。

そんな感じになって疲れもあったので、今日はナカさんの手伝いをせずに帰った。

「ありゃ今日は、はやいんだね〜〜 」

ヨシばあが言った。

「ヨシばあ、熊見た事ある? 」

「ん〜〜? な〜に熊でたんか? 」

「いや分からないけど、熊は普通にいるぞってナカさんが…… 」

「熊も狐も狸も鹿もいるわ。なんでもいるさ。でも悪さしないからね。今で言う共存って言うやつかい」

相変わらずヨシばあは、肝が座っているというか…… ん〜〜 あまりアドバイスにもなって無いような。
思わず考え込む自分。

するとヨシばあが、

「ほれ、熊が怖いならこれ付けてな! 熊避けの鈴。でも熊の寝ぐらには近寄っては駄目だよ。森の奥にはね」

「あ、ありがと」

やっぱり森の奥は、行かない方がいいのだなと思った。ナカさんもヨシばあも、そこは同じ事を言っていた。

ナカさんの言葉に急に怖くなった自分だが…… ふと今日見つけた黒曜石の事を思い出し、『瑠璃黒曜』と熊の怖さを天秤にかける自分が居た。

夕食時、ヨシばあに

「タケ爺は石探ししてた時、熊とか怖く無かったのかな? 」

「熊の事、考えるより石の事しか考えてなかっただろうさーー  アキラが小さい頃までは、石馬鹿って奴だよ、ホホホ」

「石馬鹿か〜〜 」

その後、布団に入り考えてみた。
『熊とか何とかにビビってる様じゃ、駄目って事だよな〜〜。そんな事を考えずに石の事だけ考える、石馬鹿にならんと『瑠璃黒曜』を見つけるのは無理なんだろうな』

改めてタケ爺の凄さを感じた。

「タケ爺が見つける事が出来たのに、孫の俺が見つけるどころか他の事にビビるなんて…… 今頃、タケ爺に笑われてるだろうな〜〜 」


次の日、ヨシばあの家にある仏壇に手を合わせ隣町に向かった。
隣町に来た理由。

ウェーダーを買いに。
これで川の中も平気で歩ける。
そして、集落に戻りあの古い神社へ。
長い石段を登り改めてお参り。

「確か、この社の中に変わったものが祀られているんだよな。見てみたいな」
覗いてみたが中にもガッチリとした扉が閉まっていた。

神社を降りた時、あまり疲れが無かった。初めて登った時は、ゼエゼエ言っていたのに。毎日の石探しと川歩きが足腰を強くしてくれたのかと。

「熊が怖くて『瑠璃』が見つけられるか〜〜 」

やっぱり『瑠璃』の誘惑は、簡単に断ち切れそうにない様だ。

「そういう事だよねタケ爺! 」

熊避けの鈴をしっかりと身に付け、落ちていた木の枝を片手に……
あの白い橋の近くの大きな岩へ……
いざリベンジ⁈


第3話    終

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