漂流先の魔法世界で生き残りサバイバル!

大吉祭り

三人と一匹で!

 この魔法の学園は特殊だ。
 学業よりもクエストが優先され、事前に連絡をしておけば授業を休んでも問題ないらしい。


 「学ぶ事も大切、しかし実体験には敵わない。そういう方針みたいですね」


 床の上で、俺の向かいに座るフローラはそう話す。


 「なんと言うか、俺の部屋にフローラがいるのは慣れないな」


 そう、今いるのは自分の部屋。
 いつもならリラックスできる空間なんだが、落ち着かない。
 ただしそれは、フローラだけが理由ではなくて。


 「アー、アー」


 俺とフローラの間に座る、この小さな子、自分の部屋に三人いると言う状態だ。
 依頼主である母親からは、2歳だと聞かされている。


 「何か言いたそうなんですよね。お母さんがいれば分かるかもしれませんが」

 「もしかしたら、お母さんを探してるのかもね。依頼を受けてから3時間くらい経つし」


 母親からは、1日お願いすると言われた。
 昼頃に預かって約3時間、ここまでは順調なんだけど。


 「もうそんなに経ったんですね。大人しい子で良かったです」


 フローラがホッとしたように話す。


 「フローラも緊張してたのか? 俺も急だったから色々焦ってたかも」

 「緊張もそうですが……何かあったらいけませんからね! 大事な命ですから」

 「改めてそう言われると緊張が増すよ」

 「そうですね、ゴメンナサイ」


 慌てるフローラを見て、フッと笑ってしまう。
 それを見たフローラも軽く笑い、緊張は少しほぐれた。


 「なんか、こういう時間もいいよな。最近少し忙しかったし」

 「そうですね、大樹さんと子供と、のんびりするのも楽しいです」


 なんか夫婦みたいだな、そう思ったが言うのはやめておこう。
 だって、俺だけが意識してると思われるの恥ずかしいし……


 「マーマ、マーマ」


 俺たちが黙ると、今度は子供の方がキョロキョロと。


 「そういえば、この子名前なんて言ってたっけ」

 「えっと、ライ君でしたね。どうしたんでしょう」

 「まぁ探してるんだろうな、お母さんをさ。数時間も経てば、そりゃ当然だけど」


 とはいえ、どうする事もできないわけだけど。
 やれる事があるとすれば、気を逸らさせるしかないが。


 「ご飯は……まだですよね? 一応普段食べているものは預かってますが」

 「全部用意してもらってるのは助かるよな。ただ、お母さん本人を探されると厳しいけど」

 「何かできる事ないでしょうか」

 「そうだなぁ、出来ることは……」


 悩んでいる俺に、ふといい案が。


 「そう言えば、引き受ける時動物が好きって言ってたよね。犬とか猫とか、よく触りに行くとか」

 「たしかに私も聞きました。ですが動物なんて今急に用意できませんよ?」

 「いや、1つだけ手はあるよ!」


 そうフローラに伝え、俺はすぐに机から魔道具を取り出す。


 「連絡用の魔道具ですね。どこにお話を?」

 「すぐに分かるよ。ちょっと連絡してみるわ」



 約30分後、俺の部屋にまた1人お客が到着した。


 「話はもう聞いてるから、安心して任せちゃってね!」

 「来て早々元気だな。なんだかこうして話すのも久々な気がするよ」

 「大樹さん、もしかして」


 そう、これが今できる限界。


 「動物が好きって話だから頼むよ、ハク」

 「うん、任せなさい! 大樹には恩があるから頑張っちゃうよ」

 「まぁ恩と言われるほどのことはしてないけどね」


 こうして俺の部屋に今、3人と1匹が揃った。

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