漂流先の魔法世界で生き残りサバイバル!

大吉祭り

あくまでも対決!

 「おい大樹、あれ見てくれよ……」


 隣にいるリッシュが、さっきまで赤髪の先輩が立っていたであろう場所を指差す。
 砂煙がうっすらとなくなっていく中、そこに立っていたのは。


 「どうして……」


 攻撃を受けたはずの赤髪の先輩が、一人立っている。


 「大樹、あれってもしかすると」


 再び指差す方へと目を向けると、少し離れた場所に二人倒れているのが確認できた。


 「なぁリッシュ、攻撃したのは先輩たち二人だよな? なのにどうして」

 「わからない。ただ、あれだけの音をさせたんだ、強烈な威力の魔法だったことは事実」


 ヒソヒソと話す俺たち。
 すると、ゆっくりと赤髪の先輩はこちらに顔を向ける。


 「大樹……そうかお前が」


 小さなはずなのに、はっきりと俺の耳に届いた声。
 正直今、かなり嫌な予感がしている。
 それはつまり。


 「大樹とやら、手紙の方は読んでくれただろ? 今から俺と戦え」


 やっぱりだ!
 どうして人間、こう言う嫌な予感だけは当たるのか。


 「つまり、あなたがクリムのお兄さんってこと」

 「そうなるな」


 いやいや、なんでこんな強い人と戦うの?
 ハッキリ言って、もう少し弱い人かなって思ってたわ、勝てる可能性ほぼないよ、これ。


 「おい大樹、あからさまに動揺……パニックになってるぞ」

 「いや、だってこんな……なんで少し笑ってる?」


 どうやらリッシュは自分に関係ないとわかって安心したよう。
 この島に来て初めて、イラッとした瞬間かもしれない。


 「いつまで待たせるんだ? はやく戦おうぜ」

 「その前に質問したいことが!」

 「なんだ、言ってみろ」

 「そもそも、どうして僕なんかと戦おうとしているのでしょうか? ハッキリ言って、力の差はかなりありますよ?」


 この言葉にクリムの兄、つまりエン先輩は口元をニヤリとさせ。


 「戦う理由か、今となってはそこまで関係ないが、まずは戦闘だ。理由は後からいくらでも話してやる」

 「いや、先輩にはあってもこちらに戦う理由がない以上、本気を出せません」


 あえて少し挑発してみたが、痛い目に合う未来しか見えない。


 「自信ありって訳か? まぁいい。ちょっと興味が湧いたんだ。妹が最近、お前の話を度々するんでね」


 あ、やっぱりクリムのせいか。
 薄々わかってたけど、これは面倒な感じだ。


 「さて、しっかり理由も話してやったし本番といこうか」

 「いやいや、確かに理由は聞きましたけど、それで僕が戦う理由にはならないと思いますけど」

 「はぁ〜、ああいえばこう言うって、こう言うことだよな。お前が戦う意思を示さなくても、俺は攻撃するぞ?」


 もうこれはあれだ、話し合いで終われる雰囲気じゃないな。
 俺は一度ゴクリと唾を飲み込み、覚悟を決めた。


 「大樹一人でかかってこい、周りの人たちは参加するなよ?」


 それを聞いたリッシュの顔はパァッと明るくなり、かなりの速度で離れた場所へと逃げていった。
 フローラは渋々と言う表情か、納得できていないよう。


 「さぁ、お前の力を見せてもらおうか」


 聞こえないはずの、ゴングの音が聞こえたような気がした。

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