漂流先の魔法世界で生き残りサバイバル!

大吉祭り

戦いは暑きジャングルで!

 暑い、魔法とか関係なく負けそうだ。


 「大樹さん、リッシュさん、相手がどこにいるのかわかりませんから集中してください」


 フローラの言うことも一理あるが、こんな中で戦うなんて聞いてない。
 隣をチラッと見ると、同じ考えなのかリッシュと目が合う。


 「なぁ大樹、さっきまでのやる気はどっかいったぜ」

 「……そうだな、俺も辛い」


 まだ対戦すらしていないが負けを覚悟する俺たち。
 それを見かねたのか、それとも心配してくれているのか、フローラは優しい表情のまま。


 「わかりました。私たちは下手に動かず、ここでしばらく待機しましょう」


 そう言ってくれた。
 そもそもバトルフィールドの内容が直前までなかったのはどうだろうか。

 転送されたのは数分前、用意されていたのは学園長の魔法で作られたジャングルだった。
 見た目だけなら助かったが、ご丁寧に気温もかなり高めに設定されているよう。


 「そう言えば大樹さん、カウンターはきちんと動いていますか? リッシュさんも一度確認しておきましょう」

 「了解」


 カウンターとは、転送前に学園側から渡されたダメージカウンターという装置のこと。

 この装置が受けたダメージなどを計算し、メーターがゼロになったら退場になると言う、そういうもの。
 ゲームで言えばヒットポイントのようなものだろう。


 「フローラさん、俺のは問題ないみたい」


 そう話すリッシュの装置には、しっかりとゲージがマックスの状態で表示されている。
 暑さによるダメージなどは無いようで、安心やら残念やら。


 「大樹さんはどうですか?」

 「ちょっと待ってね……うん、問題ないみたい」


 フローラに言われポケットの中の装置に目をやると、リッシュのように満タンの状態が表示されていた。


 「私のも大丈夫でした。では、少し涼しそうな場所を目指しましょうか」


 よく見ると、フローラも汗をかいているのがわかる。
 よかった、俺たちだけじゃなかった。
 再びリッシュと目が合ったのは言うまでもない。




 「ここなら少しは涼しいですし、休憩しましょうか」

 「よっしゃ、休憩だー!」


 フローラの休憩宣言に、リッシュが大袈裟なリアクションを見せる。
 いや、大袈裟でもないか。


 「探し始めてから十分くらい、まさかこんなにかかるとは」

 「私も驚きました。まさかこんなに広いなんて、それに周りの景色も大きく違いがないので」


 そう、フローラの言う通り景色に変わりがあまりなく、実際はわからないが同じ場所を何度も通った可能性すらある。


 「まぁ、結果見つかったわけだし休もうよ。いつ相手が来るかわからないしね」

 「いつ狙われるかわからないなら、寝てる場合じゃないだろ。それに、時間も制限があるんだ」


 最後まで学園側でも話し合われたそうで、結局時間の制限が設定された。
 試合開始から二時間、そこで残ったメンバーやチームに関係なく終了される。

 とりあえず誰か残ることができれば、表彰はされるよう。
 優勝などについては、退場させた人数の合計が多いチーム、クラスになるらしい。


 「このルールの場合、ただ生き残るだけでは厳しいですね。先輩方は優勝狙って、私たちを探しているでしょうし、ずっとこの場所というわけにも」

 「フローラの言う通りだな。同じ場所にいると、囲まれる可能性が出てくる」


 リッシュは一瞬嫌そうな顔を見せるも、納得したように。


 「そうだな、目的の達成は少なくてもしないといけないし、まだやられるわけにはいかないな」

 「そうだな」


 リッシュと俺は参加した目的を確認し合い、もう一度気合を入れ直した。
 そう、クリム兄との対決のために。


 「お二人とも回復したようなので、移動しましょうか」


 フローラが話し終わった直後のこと。
 ドカンッ! と大きな音が近くで聞こえた。


 「い、今の音はなんだ!?」

 「静かに! 様子をみましょう」

 「……なんかフローラのキャラ変わってない?」


 焦るリッシュに、頼れるフローラ。
 そのフローラに驚く俺……ある意味良いチームなのか?

 っと、そんなこと考えてる時間はない。
 今の音はおそらく、戦闘が始まっている証拠。


 「リッシュさん、大樹さんも、今のはおそらく爆発系の魔法です。先生に聞いたのですが、上級魔法ということで先輩だと思います」


 フローラが小さな声で教えてくれる。


 「音が大きく聞こえたので、おそらく近くです。慎重に行動しましょう」

 「「わ、わかりました〜」」


 フローラと比べると、俺たち男組の情けなさたるや……。

 ガサガサッ!
 そんなことを考えていた俺の耳に、近くから音が聞こえる。


 「なぁフローラ……」


 慌ててフローラの方を向くと、静かにというジェスチャー。
 今日は一番たくましい。

 音はだんだんと大きくなって、近くに来ているのがわかる。
 そして……


 「あっ、見つけましたよー」

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