漂流先の魔法世界で生き残りサバイバル!

大吉祭り

輝く頑張れ!

 俺とエリはその後、気絶した犯人のことを学園側へと報告。
 後のことは任せろといことで、無事に犯人は連行、エリの過去も一旦は決着がついたというわけだ。


 「ボケッとしてるけど大丈夫か? ……もしかして泣いてる?」


 ニヤニヤした顔を俺に見せ、茶化してくる女の子。


 「別に泣いてないよ。むしろ、エリの方が泣いてもいいんだぞ?」

 「泣くかい」


 俺の座る椅子、その空いている場所にエリは腰を下ろす。

 今日で中等部での生活も終わり、高等部へ戻ることになる。
 最後ということで、今さっき生徒たちへ挨拶を行なったばかり。

 でも、今回一番記憶に残っているのは。


 「なぁエリ、授業を受けるようになってどうだ?」

 「ずいぶん急だな〜。でも……楽しめてるかも。まだ少し魔法を使うのが怖いけど、久しぶりの私にみんなも優しくしてくれた。良かったよ」


 そう、今までこの場所、屋上が定位置だったエリが、教室へと行くようになった。
 初日こそみんな驚いてたけど、案外すぐになれるというもの。
 
 むしろ、最後まで驚いてたのは先生かもしれない。
 エリが来てくれることが本当に嬉しかったんだろう、ユラ先生は最後まで、俺に感謝を言っていた。


 「なぁエリ、あんまユラ先生を心配させるなよ? 優しい人なんだから」

 「大樹、今日は本当に話が急だな。ただまぁ、考えてることはわかるよ。勿論だ、今まで心配かけちゃったしね」

 「そっか、ならよかったよ」


 この世界の魔法使いには、いい人が本当に多いと思う。
 だけどその分、この間のような悪い奴が目立つ。
 そういう奴から人を守れるよう、少しでも魔法を使えるようにならないと!


 「まぁ頑張りなよ」

 「ん? もしかして声に出てたのか?」


 エリは黙って頷く。
 最近の俺は考えてることが口に出やすいな、注意しないと。


 「……それじゃあ、そろそろ帰ろうか。お互い明日が休みだからって、遅くまで外にいたらだめだろ」


 この屋上から見る夕焼けも、最後になるかもしれない。
 色々あったけど、良かったと素直に思える。


 「そうだな、こんな時間まで屋上にいたら怒られる。帰ろっか」


 エリはそう言って立ち上がると、俺の方へと元気に向きを変え。


 「私にとって、大樹は最高の先生だった! だから魔法が使えなくても頑張れ、私も頑張るから」


 それは出会ってから今日まで、俺に見せた表情の中で最も輝いていた。

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