漂流先の魔法世界で生き残りサバイバル!

大吉祭り

海で遊ぶと言うテンプレ!

 用意された部屋に荷物を置き、着替えて海へ。
 プライベートビーチではなくプライベートアイランドとでも言うのか。

 とにかく、こんな豪華なことは人生初。
 先輩には改めて、後でお礼を言わないとな。


 「よぉ大樹、準備早かったな。先輩の別荘からこの海まで近いし、綺麗な砂浜じゃないか。早くみんなと遊びたいな」

 「そうだな。……明日はキノコ狩りだが」


 海が楽しみだった一方、キノコ狩りに関しては不安が大きい。
 モンスターとの対決は避けられないと言うからだ。


 「心配するな大樹。それに関しても考えてある。それに、これだけのメンバーで戦えば、負けることはないさ」


 リッシュの言う通りかもしれない。
 クリムは今日で帰ってしまうが、魔法を使え始めたフローラ、一つ上のリファ先輩、未知数のリッシュ。

 これだけのメンバーで、負けるってこともないな。


 「たよりにしてるよ。それより、他のみんなはまだかな?」


 すると、別荘の方から数人の足音が。


 「男子は早いな。こちらは水着に苦戦した人もいてだな、少し遅れた」

 「すみません、水着の着方がわからなくて。私制服しかなかったので」


 フローラが申し訳なさそうに言う。


 「大丈夫さ。これから少しづつ覚えていけば」


 クリムの言葉で笑顔になるフローラ。
 俺からも少しフォローしておこうかな。


 「そうだぞ、フローラ。それに、水着姿めっちゃ似合うしな」

 「お、おい大樹。今それを言っては」


 俺の言葉に、なぜかクリムが反応する。
 フローラの方を見ると、顔を真っ赤にさせて、近くの木の後ろに隠れてしまった。


 「……もしかして、恥ずかしかったのか」

 「フローラは制服しかなかったから、余計にな」


 それからしばらく、フローラは姿を見せてくれなかった。



 フローラが水着に慣れた頃、俺はある事を思い出す。
 リファ先輩がいない。

 一度泳ぎを止めると、近くにいるクリムに聞いてみることにする。


 「なぁクリム。リファ先輩がいないんだけど、どこにいるんだ?」

 「先輩か? 別荘からここへ来た時には一緒にいたが……なるほど、確かに姿が見えないな」


 まさか溺れたとか!?
 そう思った瞬間、嫌な想像しか出来なくなる。

 辺りを集中して探すも、やはり姿は見えない。
 本当にヤバいかも、みんなに知らせるか。


 「おい、みん……」


 俺がみんなへ知らせようとしたその時、クリムが俺の肩を叩いて。


 「なぁ大樹。あれはもしかしたら、先輩ではないだろうか」


 そう言いながら、クリムが指を指す。
 その先を真剣に見ていくと、確かに薄っすらとした何かが見える。


 「あれは……先輩の魔法で透明になってるのか? でもなんで」

 「それは私にもわからん。直接本人から聞いてみようか」


 俺とクリムは二人で先輩の元へ移動する。
 見つかっては逃げられる可能性があるため、ゆっくりと。

 徐々に距離は近くなる。
 そして、ついに。


 「先輩、こんな所で何してるんですか?」


 俺は先輩の肩を軽く叩いて声をかける。
 驚いたのか、先輩は軽く暴れながら。


 「あれっ!? 魔法が、あれっ!?」

 「お、落ち着いてください、先輩。急で悪かったですから」


 少しづつ落ち着いていく先輩を見て、どうしてこんな所にと考えてみる。
 やはり水着が恥ずかしかったのか?
 それともほかに……


 「えっと、大樹くん? その、あの、水着が大好物って」


 ん!?
 今この先輩なんて言った?


 「えーと、先輩? 僕がいつそんな事を言いました?」

 「え? だって別荘でリッシュ君がそんなこと言ってたし、さっきもフローラさんの水着を見て喜んでたし」


 俺喜んでたかな?
 いやっ、そんなことよりも、この誤解を解かなくては!


 「先輩、違うんですよ? 別荘のはリッシュの冗談ですし、フローラに対しても褒めただけと言うか」


 俺の言い方に問題があるのか、いまいち信用していないような目で見られる。
 これはまずい。
 何とか誤魔化せないか。


 「そうだ先輩。俺は水着が大好物なんかじゃない! むしろ普段の格好とか、制服姿の方がいいっていうか……何言ってるんだ俺は!?」


 慌てすぎて、自分でも何を言っているのかわからなくなる。
 すると先輩は少しだけ、笑顔を見せて。


 「慌てすぎだよ、大樹君? 水着大好物の人じゃないってわかったから。落ち着いて、ね?」


 なんだろう。
 言葉は優しいのに、最初よりも俺をみる目が厳しいような気もする。

 そりゃそうか。
 冷静になってみれば、普段の方が好きとか、制服がいいとか。
 欲望人間と見られても不思議じゃない。


 「それじゃあ大樹君、みんなと遊びましょうか」


 でも先輩が楽しそうなのは、少しいいなって思える。
 来る前は馴染めるか不安だったけど、大丈夫そうだ。

 俺も先輩たちのところへ行こうとした時、一つ忘れていることに気がついた。


 「大樹は水着だけでなく、制服まで好みなのか、なるほど」


 一緒に来ていたクリムだ。


 「あ〜クリム? 今話してたことは、あくまでも先輩を元気にしようと……」

 「わかっているさ。それでは戻るとしよう。……制服好きの大樹君?」

 「誤解だ〜!」


 それからしばらくの間、俺は水着と制服が好きな男として、覚えられるのだった。

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