漂流先の魔法世界で生き残りサバイバル!

大吉祭り

長期休暇でどうですか!

 「長期休暇!? 夏休み的なことか」


 その日の授業が終わり、帰ろうとした俺にクリムが話しかけてきた。


 「その通りだ。長期と言っても、十日間だけだがな。学園外での学びも大切だと、学園長が設けたそうだ」


 クリムの話によると、今年から学園長の意向で十日間の休みが決定したそうだ。
 この学園、元々半日しか授業ないし学園外での時間長いよなぁ。


 「うむ、噂によると、生徒ではなく教師向けに決められたとも聞いた」

 「なるほどね。確かにこの学園の先生、俺たちが帰ってからも何かしらしてるもんな。年に数日くらい、ゆっくりしたいんだろ」

 「それもあるだろうが、一番は研究だろう。この学園の教師は、ほとんどが魔法の研究家でもあるのだ」


 学園に残っていたのはそれが理由か。
 日本の大学みたいな感じかな。


 「それじゃ、そんなに休まらないね」

 「そうだろうな。だが、好きなことはできるだろう」


 そう言うとクリムは、口元をニヤリとさせ俺を見ながら。


 「これで大樹との特訓が集中的にできるな!」


 あっ、死ぬかも……



 翌日、授業終わりに担任のフィア先生が連絡事項とし。


 「知ってる人もいるかと思いますが、今年は十日ほど休みになります。間違えて来ないように気をつけてください」


 それを聞いた生徒の一人が。


 「先生、それはいつからですか?」

 「えーと、五日後からですね」


 それを聞いて少しざわつく教室内。
 この学園、連絡遅すぎではないだろうか。
 それとも新たな試みで、先生たちも慌ててるのか。


 「それでは連絡終了です。気をつけて帰ってくださいね」


 さて、帰るか。
 フローラと帰ろうかと、声をかけようとした時、後ろから呼ぶ声が聞こえる。


 「なぁ大樹、俺からも緊急連絡だ。さっきの連休を活かして、サークルで何かやらないか。と言うかやるぞ」


 すでに決定事項じゃないか。


 「それで? どう言ったことがしたいんだ?」

 「俺としてはだな、数日だけ旅行にでも行こうかと思ってる。行き先とかは決めてないが」


 まぁ俺も時間はあるしな。
 金さえ足りれば行けるか。


 「と言うわけで、このあとサークルで会議な」



 俺とリッシュ、そしてフローラはサークルへと向かう。
 ちなみに、クリムは仕事があるそうだ。


 「そう言えば、フローラさんはサークル参加初めてだよね。ようこそ!」


 はりきりながら、リッシュは部屋のドアを開ける。


 「まだ他の方はいないんですね」


 フローラがそう呟くと。


 「何言ってるんですか、フローラさん。いるじゃないか」



 お決まりになりそうなパターンを終え、リファ先輩が姿をあらわす。
 それを見たフローラは、固まったまま動かない。


 「えっと、フローラ? 彼女は一つ上のリファ先輩だ。照れ屋なんだよ」


 俺の説明に、リファ先輩はコクコクと頷く。
 まだ話せないらしい。


 「そうだったんですね。私の名前はフローラと言います。こちらのサークルにお誘いを受け、本日初めて参加させていただきます」


 相変わらずの丁寧な紹介。
 先輩も話さなきゃいけないと思ったようで。


 「えっと、二年生のリファです。……人と話すのが苦手なだけで、決して嫌いというわけじゃないから」

 「そう聞いて安心しました。よろしくお願いします、先輩」


 笑顔で返すフローラに、先輩も安心したようだ。
 すると、それを見ていたリッシュが。


 「無事に挨拶が終わって安心したところで、今日の本題に移りましょう。みんな長期休暇の話は聞いたよね? せっかくだから、このメンバーで遠出でもしないか」

 「遠出って言っても、行くあてとかはないんだろ?」


 俺の質問に、リッシュは笑いながらチッチと指をふり。


 「実はあてもある。先輩の家族が所有する島を使ってみたい」

 「はっ!? リファ先輩の家族の島だって? もしかして、先輩の家ってお金持ち?」


 俺が言いながらゆっくりと顔を先輩へと向けると、困ったようにキョロキョロし。


 「あの、えっと、その、はいその通りです。父が魔道具の開発などを少し」

 「少しなんてもんじゃないよ。今や料理を作るためには必須と言われてる会社さ」

 「へー、先輩の家って、料理系の魔道具開発なのか」


 前に魔道具店で働いた際、この世界には様々な道具があることを知った。
 魔法の使えない人でも、生活を豊かに。
 そこがテーマになっているそうだ。

 その一つに、キッチングッズがある。
 肉を焼いたりするのも、魔道具があれば簡単にできるというわけだ。


 「今や大半の家には、先輩の家の道具があるっていうぞ」

 「しかしリッシュ、どうしてお前がそこまで詳しいんだ?」

 「ん? 前に先輩から直接聞いたんだよ」


 その時に島のことも知ったんだな。
 ただ、この企画は先輩の両親がオッケーしなきゃ無理だろ。


 「先輩はいいんですか? こいつがこんなこと急に言い出して」


 すると先輩は、ソワソワしながら。


 「私は別にいいんだけど、親がなんて言うか。あとで親に……」


 後半は聞き取れなかったが、どうやら両親に聞いてくれるらしい。
 先輩は賛成なんだ。


 「よし、明日またここに集合。先輩からの連絡を聞いてから考えるってことでいいね」

 「了解」

 「わかりました」


 こうして緊急会議が終了した。

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