漂流先の魔法世界で生き残りサバイバル!

大吉祭り

リッシュのサークルと照れ屋さん!

 あの授業から数日が経ち、フローラはあっという間に基本の魔法を完成させた。

 一方の俺も、フローラには敵わないが先生の教えやクリムの特訓もあり、魔力を感じられるくらいにはなった。

 まぁ、ようやく基本の三魔法を練習できるようになったレベルだが。
 フローラには、結構差をつけられたなぁ。

 どこかで、フローラを俺と同じ立場だと考えていたのかもしれない。
 記憶を失っていても、この島の人間なんだろうから、当然魔力はあってもおかしくないはずなのに。


 「おい大樹、考え事か? 授業終わったぞ」


 考え事をしている俺に話しかけてきたのは、不思議好きなリッシュ。


 「悪い、考え事してた。授業も終わったし、途中まで一緒に帰るか?」

 「その事なんだけどさ、今日はサークルの活動があるんだよ。前に話したろ? まだ人数も少ないが、参加してみないか」


 リッシュのサークルと言えば、不思議を解明するっていうやつか。
 確かに気になってたんだよなぁ。

 この後帰っても予定ないし、まだクエストもできないし。
 だったら。


 「やることもないし、サークル見てみようかな。不思議話は俺もすきだから」

 「そうか、なら早速行こうぜ」


 嬉しそうに前を歩き出すリッシュについて行く。
 魔法の世界の不思議話、気になるなぁ。



 「さて大樹、ここがサークルの部屋だ。先に言っておくが、俺たちを入れて後一人しかメンバーはいない。今年作ったばかりだからな」


 俺が来るまでは二人だけかよ!
 よくそれで部屋まで確保出来たな。

 リッシュが部屋のドアを開け、中に入る。
 まぁ、狭くはないが広くもない、ちょうどいい広さの部屋だ。

 中央には大きめのテーブルがあり、イスも用意されている。
 どうやら、まだもう一人は来ていないみたいだな。


 「あれっ、もう来てたんですね。いつも早いんだから」


 いきなり誰もいない部屋に向かって、リッシュが話し始める。


 「おいリッシュ! 俺を驚かせようとしてるのか? 急に誰と話してるんだ」


 そう言うと、リッシュは真面目な顔で。


 「ん? ああ、最初のうちは気がつかないよな。もう、一人先に来てるんだぜ?」

 「いやいや」


 リッシュが嘘をついているようにも見えない。
 目を凝らしてみると、薄っすらと人のようなものが見え……


 「……あ、いた! 本当に一人先に来てたのか」

 「だろ? これは先輩が今研究している魔法で、姿を消せるんだよ。完全ではないから、集中すれば見えるんだけど」


 なんて心臓に悪い魔法だ。
 日本なら夏場に大活躍しそうだな。


 「ん? そう言えば先輩って言ったか? ならしっかり挨拶しないと」

 「その事なんだけどさ、先輩人と話すのが苦手で、特に初対面では」


 もしかしてこんな魔法を研究してるのは……


 「なぁ、リッシュ。先輩がこの魔法を使うのって」

 「まぁ、そう言う事だ」


 納得できた。



 サークルを開始して数分、ようやく先輩の魔法が切れた。
 リッシュと話していた俺は、先輩を初めてはっきりと確認し、挨拶をすることに。


 「えっと、急なことで申し訳ないんですが、このサークルに入った伊藤大樹と言います。一年です」


 すると、何かを決心したのか真剣な顔で、しかし注意しないと聞こえないような声で。


 「大樹くん、よろしくね。私はリファって言うの。二年です。あまり目立つのは好きじゃないから、こうして隠れちゃうけど、嫌なわけじゃないから……」


 徐々に小さくなる声に、何とか聞こえた部分で内容を推理する。
 本当に照れ屋なんだと。


 「俺とはある程度話せるようになったんだけど、初対面だから仕方ないな。……先輩、そんなに落ち込まないで」


 上手く話せなかったせいか、先輩がすこし落ちこみ、それをリッシュがフォローする。

 ここだけ見てると、リッシュの方が先輩にも見えるな。


 「大樹、リファ先輩は良い人だから心配するなよ? 慣れればわかるさ」


 リッシュのフォローに、リファ先輩が恥ずかしそうに俯いている。
 長い髪で顔は見えないが、相当赤くなっているんだろ。


 「そうだな。まぁ、そんな雰囲気は感じるよ」


 俺の一言で、リファ先輩の姿が消えるのだった。

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