漂流先の魔法世界で生き残りサバイバル!

大吉祭り

ボロ宿は男女二人で

 冒険者魂に火がついたのはいいが、それは早速消えようとしている。
 と言うのも、ガイドブックに従い宿の前に着くと、想像以上に小さく、竜巻でも起これば飛んでいくのかと思うほどボロい。


 「一応確かめるが、これが宿だよな?しかも島唯一の」

 「う〜ん、そうらしいね。でもほら、冒険っぽいでしょ?」


 俺が思うに、相川はそれさえ言えば大丈夫なのだと考えているんだろう。
 だがしかし、俺にも心というものがある。
 嫌なものは嫌なのだ!


 「ちょっとそこの人に聞いてくる!」


 そう言って、俺は近くを歩く人に泊まれる場所について尋ねた。



 
 ・・・結果は想像通りだった。
 3人ほどに聞いてみたが、皆答えは同じで一つだけだと言う。


 「ほらほら、早くしないと部屋もなくなっちゃうよ〜。外で寝るよりマシでしょ?」

 「それもそうだな、まぁ仕方ない。これも旅の醍醐味か」


 全て諦めた俺は、元気に歩く相川の少し後に続いて、宿の入口へ入っていった。



 
 どうしてこうなったのだろうか。
 部屋に用意されているベットに倒れながら、俺は今の自分が置かれている状況について考えている。

 耳をすますと、かすかにシャワーの音が聞こえてくるが、当然俺のではない。
 今は相川が使っている。

 何でも、この宿には予約というルールがないため、相川の父さんも用意できなかったと。
 そして、ボロ宿ということで部屋の数もそんなにないと。

 その結果、まさかの相部屋となった訳だ。
 変に意識はしていないはず・・・多分。
 ある程度行動を共にしているが、このような事態は実は初めて。

 さっさと寝てしまおう!
 そう俺が覚悟を決めると、浴室のドアがギギギと音を立てた。


 「あの、私終わったから次どうぞ。明日からが本番だし、早く寝ちゃおう」

 「わ、わかった!」


 相川の話し方がいつもと違う!
 あっちは俺以上に意識しまくってるぞ。


 「ねぇ、シャワー使わないの?ボケっとしてないで。・・・それとも何か考え事?」


 いつもと違う相川に驚いていたとは言えず、すまんとだけ言って浴室に向かう。
 これ以上は心臓が持たんぞ。

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